口づけは甘く
4話
無意識とは言えまたそんな扇情的なコトを、と内心で焦っても、寝ぼけているだけの相手では文句も付けられない。


「あー…、ヤベェ……」


「う、ん……?」


つつつ…と殊更弱い腰の辺りを、掠めるように爪が撫でる。


朝という事もあって、余計に身体は敏感になっていると言うのに、雨竜は全くお構いなしだった。


もっとも、未だちゃんと覚醒していないのだから、当然といえば当然なのだが。


ぞくぞくと背筋を這い上がってくる、甘い感触。


こちらの気も知らないで、無防備な寝顔を晒している。


これで、その気がないだなんて……ある意味拷問と言ってもいいのではないだろうか。


一護は心底困惑した表情で、腕の中に大人しく収まっている恋人を見下ろした。


「あァー、もう、どうなっても知らねぇぞ!」


がしがしと頭を掻き毟って、それから一護は自棄のように一時中断していた口付けを再開した。


白い頬を両手で掬い、唇を重ねる。


先程と違うのは、それが挨拶という簡単な言葉では済まされないような、際どいものであった事だ。


大切な恋人にだけする、特別なもの。


少なくとも、起き抜けの寝ぼけた相手にするような類いのものではない事だけは、確かだ。


シャイでツンデレすぎる雨竜が気付いたら、激怒するかもしれない(笑)。

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