十万分の一の本音 @
何気ない時間でさえお前は密かに俺の事を考えてくれてて
それだけで浮かれちまう俺はきっと単純だ。
「ねぇ、黒崎」
冬にしては暖かな陽射しの昼時。
啓吾の他愛もない話を聞き流し、食後の満腹感もあってウトウトとしていると不意に目の前から声をかけられた。
でそうになった欠伸を噛み殺しながら顔をあげる。
そこには不思議そうな顔でこちらを見ている石田がいた。
「んぁ?何?石田」
「……」
視線を合わせれば石田は顎に手を当て少し考える素振りをしている。
訳がわからずとりあえず大きな欠伸を一つ。
それから少し背筋を伸ばせば少しだけ骨の鳴る音が聞こえた。
ガタ
「んお?どした?石田ぁ?便所?」
「……」
暫く一人で考え込んでたと思ったら徐に席を立ち教室をあとにしようとする。
それに話を続けていた啓吾が石田に声をかけるが気にせず歩いていく。
余計訳が分からず石田の背中を見つめてると入口で急に止まりクルリとこちらを見る。
そしてゆっくりとした動作で手招きをする。
……ついてこいってことか
その動作を確認して無言で席を立ち石田に並ぶ。
石田はそれを確認すると無言で歩き出す。
啓吾が何か言っていたが無視して石田についていく。
「なぁ、石田。どうしたんだ?」
「……」
「……」
無言かよ……
軽くため息を吐き仕方なく無言で石田についていく。
と、石田がいつもの手芸部の部室で止まり鍵を開ける。
……なんか忘れもんか?
何も言わずに入っていく石田に続いて俺も中へと入る。
「なぁ、石――」
「君はこっち」
「――!」
扉を閉め石田の方へと振り返ろうとするといきなり何かに引っ張られて床に転げる。
が、衝撃はなく不思議に思いながら天井を見つめるとそれを遮るように石田が顔を覗かせた。