天邪鬼と願い事 A
商店街入って間もなく宝くじ売場があり気が付いた。確か、商店街くじ引きで貰った地方宝くじの当選発表が出ているはずだ。
案の定出ていたので発表の紙を頂く。学年1位の頭脳は10枚すべての番号を記憶していた。
「あれ?」
当選番号の内の1行で目が止まる。
こきゅ、と首を傾げ瞬きを数回。もう1度番号を確かめる。
スーパーの駐車場の隅に行くと財布から紙の束を取り出した。宝くじである。
その1枚と発表の紙を照らし合わし「ど、どうしよう……」
はわはわおろおろと珍しくパニックになりかけた時だ。
「どうしたよ、石田?」
「うわぁっ!!」
背後からの声に手にあった紙が滑り落ちる。
「黒崎……! いきなり話かけるな!」
恥ずかしいのか驚いたからか、はたまた違う理由があるのか頬を僅かに染めながら大声を出す雨竜に内心ため息を落としつつ、はらはらとアスファルトに落ちた2枚の紙に手を伸ばしながら「何か落ちたぜ? …別にたいした事じゃねぇだろうよ」
自分に気が付いていると思っていたのだけれど。どうやら、本当に気が付いていなかったらしい。珍しいものだ。
「…ああ、宝くじか。何? これに気を取られて俺に気が付かなかったのかよ」
どれ、と雨竜が何か言う前に目を走らせ……僅かに目が見開いた。
「おまっ、これっっ」
「何が言いたいのかわからないぞ、黒崎」
「何冷静になってんだよっ!10万だぞ、10万!!すげぇだろうよっ!」
「騒ぐな黒崎! いや、僕も取り乱す寸前だったけど、君のおかげでならずに済んで良かったよ」
どうやら落ち着きを取り戻したらしい。雨竜はずり落ちていない眼鏡を押し上げ「臨時収入も入ったし、来週にでもどこか食べに行こうか? まあ、ファミレスくらいだけど、僕が出すよ」
いきなり何を?しかも、なにゆえ来週?と首を傾げた一護だが、すぐにわかった。
「別に君の誕生日を祝いたいと言う訳じゃないんだ。祝って貰ったお礼がしたいだけなんだから勘違いはしないでくれ。正直、そんな所ではなく手作りしたいのだけど君も迷惑だろう?違うぞ、その方が安く出来るからだ、本当だよ、それだけだからな!」
一気に流れ出た台詞に一護はしばし呆然としながらも(こいつって、嘘つくの下手過ぎる…)
深くため息を落としたのだった。