天邪鬼と願い事 @

ささいな、本当に自分でも笑ってしまいたくなるような願い事があって。

叶うなら、と思うけど、相手が相手で。

いや、それを言うなら自分も自分だし。

「だいたい、誕生日なんか祝ってくれなくて良かったんだ」

昨年。部活が終わって、買い物をして帰ればアパートの前に見慣れた3人が居て。

何用か問えば「うんっ、今から石田君の誕生日パーティー」

語尾にハートマークが着いているであろう口調で即答されて気が付いた。その日が自分の誕生日だったのを。

正直、苦手だしキライだ。何がって、誕生日を祝ってもらうのが。ただ、年齢が増えるだけじゃないか。

そう言えば良かったのかもしれないが、結局祝ってもらった。

プレゼントも貰った。

井上 織姫からは(可愛いような不気味なような)手作りのぬいぐるみ、茶渡 泰虎と黒崎 一護からは針や糸、優しい色合の布を貰い。

ケーキとお菓子、ジュースまで用意してくれていて、その日は雨竜の作った夕食を食べて夜を過ごしたのだ。

何度も言うが、誕生日はキライだ。

だが、祝って貰ってお礼をしないのはもっとキライだから、まず、茶渡には誕生日のプレゼントに服をあげた。

自分に出来るのはこれしか思いつかなかったからだ。ちゃんと、服の好みを聞いてプレゼントさせて貰った。

織姫へのプレゼントも服だ。もうデザインも決まっている。

で、来週誕生日を迎える一護だが。

プレゼントは……食べ物がいいと思っている。ただ、問題があるのだ。

本音を言えば、自分で作ったものがいい。簡単な理由だ、その方が安いし味も好みに出来る。それだけだ、本当に。それ以外はない。

が、しかし。

「僕の作った物を食べてくれ」なんて言えるか。しかも、それが誕生日のプレゼント? 冗談じゃない。

ぶつぶつ口の中で呟きながら、彼、石田 雨竜は商店街へと向かっていた。

せっかくの日曜日なのに、終わらせたい縫い物もあるのに。なのに、悩みが邪魔をして手につかない。だから気分転換に買い物に来たのだ。

もっとも、転換になっているかは不明だが。


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