天邪鬼と願い事 B

「あ、そうだ。なあ石田、ケーキ作れるか?

「は? まあ、ケーキなら」

「フライパンじゃやっぱ作れねぇんかな?」

「フライパンにもよるけど作れる。それがどうかしたのか?」

いや、実はよ、と頭をガシガシかきながら一護が続ける。

「俺んちのレンジ壊れちまってよ。遊子…妹がせっかくだからフライパンでケーキ作りたいってな」

で、今日はフライパンでケーキが作れるなら、と本を探しに来たらしい。

キラン、と雨竜の眼鏡が光ったのを一護は見逃さなかった。

「黒崎の家のフライパンは何を使っている?」

「は?へ?何って普通の丸いやつだぜ?底の平らなやつ」

「そうじゃない、マーブルかテフロンか、それとも鉄かと聞いているんだ」

「なんだそれ」

「………………」

嫌なため息をつかれた。

「……黒崎、君の家に行こう」

一護が何か言う前に雨竜は歩き出していた。彼の家は病院なのだ、場所は知っている。

「なあ、1つ、頼みがあんだけど」

家に向かう途中一護が口を開いた。

「なんだい?」

「ファミレスはいいからよ、ハンバーグ、作ってくれね?」

「は?! な、な、何を言っているんだ、君は」

横を歩いていた雨竜が歩を止め、顔を朱くして声を荒げる。

「俺、1度でいいから石田の作るもん、食べてみたかったんだ」

「べ、別にたいした事はないよ。普通だからね」

「それでいいんだ、惚れた人の手料理、食ってみたいんだよ」

動き出した足が止まる。だが、顔はこちらを向かない…(やっぱ、気持ちわりぃよな)。

それでも、伝えたかったのだ。

「俺、石田に、惚れて、る。好きだ」

言った。言ってしまった……が、反応がない。

「おーい、石田……え……」

余りの無反応に覗きこんでみれば、顔を真っ赤にした雨竜がいて。

「い、石田?」

「違うぞ、これは夕陽のせいだ」

向けられた背中に、今は昼前です、と言う突っ込みはやめた。

「ぼ、僕は君が嫌いだ。でも、いいだろう、特別だぞ。だけど、僕は君の為に料理を作りたい訳じゃないからな」

顔は真っ赤で、手にしていたバックを両手で抱きながらの言葉がこれである。

「わかったわかった、俺達は両想いだったんだな」

「バ、バカか君は! 誰がそんな事を言った?!」

あーはいはい、と流す。

「僕は死神は嫌いだからな」

死神代行はいいらしい。

「俺は石田が好きだぜ?」

「僕は黒崎が…………嫌い、ではない」

「今はそれでいい」

いつかは本音を聞かせてくれよ、と言えば「嫌だ」

返って来たのは天邪鬼な返事だった。その顔はどことなく穏やかだ。

「願いが叶いそうだぜ、二つも。一つは石田の手料理食べてみたい、もう一つは付き合いたい」

「僕は付き合うなんて言ってない!」

足を早めた背中を慌てて追う。

お前だって、願いが叶うんだろ。俺に食べて欲しいって願いが。

口には出さず、先を行く天邪鬼の背中に微笑んだのだった。



さて、余談だが、家に着いたあと何があったのか。

クラスメートは双子と意気投合し、長男の誕生会が決まった。

「改めて告白するから、返事、考えておいてくれ」

「断るに決まっているだろう」

帰る雨竜を玄関で見送る時の会話はこれだったが、誕生日当日が一護にとって最高の一日となった事だけは記しておこう。



終わり。



まずは、10万Hitおめでとうございます。
凄い事ですっ! これからも素敵イチウリ楽しみにしています。次は20万Hitですね
お祝いなのに、このような物で良かったのでしょうか……?
一応一護→←雨竜を書いてみました。伝わっているかしらあまりにもうちの雨竜が天邪鬼すぎていて、なんか申し訳ないです。
ですが、少しでも小説が気にいっていただけると幸いです。
最後になりましたが、素敵な企画に参加させていただきありがとうございました。

鷹薙 澪

2011.02.14



波多野恵子です☆
鷹薙様、ありがとうございました
雨竜たん、どんだけ天の邪鬼だよッとツッコまずにはいられない面白さでした(≧∇≦)ノ
夕陽のせいにまでしといて手料理作るツンデレさにキュンキュンしました


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