10万回の“I love you” A

兎にも角にも、そんな遣り取りがすっかりとクラスどころか全生徒の認識の元、校内に於ける「平穏な日常」とやらの一部と化して久しい。


そんなこんなで2学期も期末試験を終える運びとなりまして…。


「なぁ石田、クリスマスと年末年始の予定って空いてるか?」

試験最終日、HRを終えて速攻雨竜の元へと駆け寄る一護。

その姿は健気を通り越し、いっそ忠犬のそれである。

「予定…空いてると云えば、空いてるけど…」

「じゃあ、一緒に過ごそ!?クリスマスと年末年始っ!!」

「まぁ…別にイイよ。どうせ暇だし」

「Σマジでか!?〜〜〜っしゃぁぁぁぁあ!!」


 あぁ…黒崎のケツに
 在るはずの無い尻尾が見える…ι


クラス内ではすっかりと、雨竜の忠犬扱いされている一護で在った。

「黒崎五月蝿い

「ぐはっ!―――――す…すんませんっ、した…ι」

余りの嬉しさにデカい声でガッツポーズをキメた一護が横っ腹に蹴りを入れられているのすら、このクラスではお約束である。

浮かれ気分で迎えた終業式の放課後。

一護が向かうは当然の如く雨竜の元で。

「石田〜っ今日は絶対ウチ来てくれよ?」

「解ってるって…しつこいよ、君」

既に黒崎家へと向かう前から後悔に襲われる雨竜で在った。



「「「「いらっしゃい石田(君)っ!!ようこそ黒崎家へ♪」」」」

「お邪魔、します…」

一家総出でハイテンションに出迎えられて、雨竜は軽く頬が引き吊るのを自覚した。

取り敢えずと案内された一護の私室。

ベッドの上を占領し、グラビア雑誌に夢中なオレンジ色したぬいぐるみが目に入る。

「お。久し振りだな石田」

「やぁコン君。お邪魔するよ」

その穏やかな遣り取りに一護が軽くイラッと来る中、当の一人と一体の会話は続く。

「しっかし…何を無防備にヒョイヒョイ一護の所に来るかねぇ…って、どうせ一護がしつこく押し切ったんだろ?」

「流石だね。その通りだよ」

「やっぱりな…コイツの頭ん中の9割はお前の事だからよ」

「へぇ…そうなのか?」

「あぁ、四六時中『石田、石田』って煩ぇのなんの…。つぅ訳で!そんな奴と二人きりなんてアブねぇ事態は見逃せねぇかんな。この部屋居る時はずっと傍に付いててやらぁ!感謝しろよ?」

「―――コン君…っ!」

「Σな!?コン!!テメェ何を…」

ぬいぐるみのクセにやたらと男気溢れる発言をかましたコンに軽く感激する雨竜と怒り心頭な一護。

「どうしよう…今の、コン君が凄く格好良く見えた」

「Σなんですと!?」

「ふっ…俺様の好みは特盛り美女だからな。惚れるなよ石田」

こうして、意外な伏兵の出現に一護の『クリスマスムードに便乗して石田を墜とそう作戦』は失敗に終わった。


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