Congratulations!! @
『おめでとうございます
お二人がちょうど10万組目のカップルです!!』
クラッカーが幾つも鳴り、吹き抜けの二階からは紙吹雪が舞い降り拍手も沸き上がる。
「・・・」
目眩を起こしかけた雨竜を慌てて一護が支えたのが開店直後、かれこれ二時間程前の事であった。
2人が訪れているのは、先日できたばかりの最新型複合施設。
テレビでも大々的に宣伝され、人気のそこは入場者数はとうに100万だか1000万だか越えていた筈。
だが、まさか『カップルで』とは。
…ってか、数えてたのかよっ。
さしもの一護も少しばかり頭痛を覚え、先程の様子を思い返す。
「ぼ、僕ら男ですからっっ!!」
雨竜が必死になるのとは逆に、一護は段々『良いじゃねえか』と思い始めていたり…。
祝いの言葉と共に館内の食事券が贈呈されると聞き、現金にも一瞬浮上した雨竜だったが…次に手渡された物を見て、文字通り固まってしまった。
それは…
『おめでとう
ベストカップル
お幸せに』と、大きく書かれた襷(タスキ)だった。
聞けば今までのカップルは皆、これを着けさせられたらしい。この襷が、色々ある有名店のランチと午後の喫茶代のパス代わりになるのだそうだ。
だが…
「これじゃ罰ゲームじゃないかっっ」
姫様はたいそうご立腹の様子。
確かに視線が少々、と言うかかなり厳しい。
恥ずかしい襷を掛けた二人を皆、微妙な笑みですれ違って行く。あからさまにクスクス笑う男女や、何が楽しいんだか着いてくるクソガキどもも。
まあ中には微笑ましく見てくれる人、蕩けそうな顔で眺めている掃除のオバチャンも居るには居たが。
…確かに晒し者な『罰ゲーム』かも。
だがこれで夕方のライトアップの時間まで過ごせば、帰りに商品券も貰えるのだ。
館内にあるヒマワリソーイングの支店(元々これを目当てに来た)でも使えるため、やもすれば逃げ出したくなるのを必死で抑え、雨竜は館内をずんずん突き進んだ。いっそ一護なぞ隣に居ないかのように。←ヒドイっ
その時一護はふとある゛噂″を思い出した、
が、内容が内容なだけに、振り払うように断ち切ると慌てて雨竜を追いかけた。