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「ロイド、先生が来てくださったぞ!早く降りて来い!」
しばらくロイドの話を聞いていると下から彼の育ての父ダイクさんの声がした。
「ん、わかった!・・・エル、ちょっと待っててくれなー」
ロイドはわたしの頭を撫でて下の階に行ってしまった。
どうやら彼の話のリフィル先生という人が来たみたいだ。
「・・・・・・・・・」
さっきまでロイドの話ばかり聞いていたけれどわたしは今まで何をしていたんだろう、なぜかダイクやロイドに会うまでの事を思い出せなかった。
それに思い出そうとするとなんだか怖くなる。
・・・よくわからないや。
そうこうしているとロイドがプラチナブロンドの女性と、同じ髪色の男の子を連れてきた。
顔も似てる・・姉弟かなぁ
「おまたせ!さっき話した先生と俺の親友のジーニアスだ!」
「貴方がエルね、私はリフィル・セイジ。この子は弟のジーニアスよ」
「よろしくっ!」
リフィルさんは私が話せない事を知っているらしく、やさしく握手をしてくれた。
ロイドの隣に立つジーニアスは人懐こい笑みを浮かべるので、わたしも声が出せない代わりに笑顔で応えた。
「さて、とりあえず先に傷の具合を見るから・・・貴方達は外に出ていなさい」
「え?先生なんで・・・「ロイドっ、エルは女の子でしょ!」あっ!わりぃ!」
・・男の子達には気を使わせてしまったみたい。
ロイド達は頬を赤く染めて階段を降りて行った。
「まったくあの子達は・・・包帯を取ってもよろしくて?」
「・・・・!」
わたしがうなずくとリフィルさんは手馴れた手付きで包帯を外した。
「・・・・これは、酷いわね。痛かったでしょう・・・・・」
「・・・(いたそう・・)」
包帯に巻かれていた両足の膝から下は自分の想像よりも痛々しかった。
火傷のような箇所や膿んで変色までしている部分まで様々だった。
・・傷が酷いのか感覚がないらしい。痛みを感じないのが有り難い。
「・・・・・ファーストエイド」
「!」
しばらく傷の状態を見ていたリフィルさんが手を翳してそう唱えると、光に包まれた足の傷がどんどん治っていく。
ものの一分足らずで傷はすべてなくなったように見える・・
信じられず傷のあった場所を眺めているとリフィルさんは控えめに笑った。
「治癒術は初めてだったみたいね、内部がちゃんと元に戻るまでは歩けないけど随分マシになった筈よ。・・・ふふっ、口が開いていてよ」
「・・・っ」
ちょっと恥ずかしい。
それから少し打ち解けてきたリフィルさんとわたしはロイドのくれた紙で筆談をした。
「・・・そう、思い出せないのね。これだけ怪我をしてきたなら精神的なものが大きいでしょうね・・・しばらくは治らないと思った方がいいわ」
リフィルさんに声と記憶の事を話すとそういわれた。
「・・・、(そっか)」
記憶はどうであれ歩けないのと声が出せないのは凄く不便だ。いつまでもこの家にお世話になるわけにもいかないし・・・。
うつむいたら金色の髪が視界に入った、・・・邪魔だから耳にかけとこ。
「私がもう少し魔術の経験があればすぐに治せたかもしれないけど・・・あら」
「・・・・?」
「マナを見てもしかしてと思っていたけれど・・あなた、エルフなのね」
「???」
えるふ、初めて聞く単語。
首を傾けるとリフィルさんはエルフについて教えてくれた。
とりあえず・・・魔法使いって感じかな?
「(それじゃあリフィルさんもエルフ?)・・・、」
「え、えぇ。私もエルフよ」
リフィルさんに文字を書いて渡すと戸惑ったように彼女は応えた。
「・・・・・?」
「せんせー!まだかかるのかー?」
下から元気なロイドの声がしてくるといつの間にかリフィルさんもいつもの調子に戻っていた。
「ちょっと呼んでくるわね」
「・・・・・、」
ちょっと待ってて、とリフィルさんもわたしの頭を撫でた、ダイクさんと話があるそうだ。
しかし下の階の声は意外とよく聞こえていて、ダイクさんとリフィルさんの会話は耳に入ってしまったが。
「(拷問を受けた形跡があります)」
そんな事今の私には気にしたってどうしようもないのだから、
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