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―――――・・・い!・・・おいっ!おーきーろーーーーーっ!!!」


「!!!!!」


突然の男の子の大声。
驚いた拍子に目を開くと至近距離でキラキラした鳶色の瞳とかち合う
・・・となぜか満面の笑みが帰ってきた。



「??!!」

なにこれ?わたし寝てたの?だれ?どこ??

「ロイド!朝から毎度そんな大声出しちゃあ治るもんも治らねぇだろうが!!」
「わりー親父!でもコイツやっと起きたぜ!」


下からも大声、
目の前でそれに応える赤い服の男の子は目の前から消えて階段を下りていった。




ただただ疑問よりも勢いに押されてしまう。
真っ白でふかふかしたベッドにログハウスのようなあたたかみのある室内、
どうやら自分は寝かされているらしい。


「・・・・・・?」



体を起こすと下からまた元気な話し声がする、
ちょっとしてから肌の焼けたひげのおじさんとさっきの青年が階段を上がってきた。
さっきの下の大声を出してたのは声はきっとこの人だ、
似てはないけれど雰囲気はちょっと似てる。




「・・・ったく、譲ちゃんすまねえなあ・・・こんな男くさくてよ」


「・・・?



 ・・・・・・・・・・・!!!」



応えようと口を開いたとき、異変に気付いた。


「あれ、おーい!どうしたんだ?」

ヒューヒュー、と喉から空気が出ていく音、



こえが、でない・・・・!?

出そうとしても最初から声が出なかったかのようにやっぱり喉からは空気しか出てこない。


知らない土地、知らない人に囲まれて・・・・っ




「・・・・・!!!」



危機感を感じて立ち上がろうとすると
上手く起き上がれずにバランスを崩してベッドから倒れこんだ。



「おい、無理して動くんじゃねえ!まだ傷が塞がってねえんだからよ!」
「(・・・・・・傷?)」

あわてた声がしておじさんが私の体を元の位置に返す。

傷なんてあったの?
そう思って体を見ると下腹部から傷や包帯がいくつか見えた。


「・・・・・!!」
「言葉はわかるか?」


おじさんにそう言われてわたしはやっと落ち着けたように思う。
首を縦に振ると二人は安心したように微笑んだ。



布団をめくると右足の膝から下にかけて包帯が巻かれていて、
ほかにも体の至る所にガーゼや絆創膏が見える。


「無理したらだめだからな!声が出ないとは思わなかったから・・びっくりさせてごめんな?」


さっきの青年が心配そうに私を見てる。
どうやら二人は介抱してくれていたらしい、


「(こちらこそごめんなさい)」
そう心で呟きながら彼らに頭を下げると、伝わったのかおじさんに気にするなと言われた。



「ここは山奥なもんでろくな治療ができないんだ。
 そんで下の村の先生に来てもらうから・・まあ待ってる間はロイドに話でも聞いといてくれ」
そう言うと仕事があるから悪いな、とおじさんは下の階に下りていった。


「んーなにからはなそっかな・・・あ、そうだ!俺はロイド・アーヴィングって言うんだ!あんたのなまえは?」
「・・・・・(えっと、こえ、だせない)」
(心の声)なんかで会話なんてできないからジェスチャーをすると、ああ!と彼はうなずいた。



「じゃあ、そうだなぁ・・・これに字、かけるか?」
「・・・・!」
ロイドが引き出しから出したのは紙とえんぴつ、かきやすいように木の板も渡してくれた。



「・・・・・(名前だけ覚えてる、ヘンなの)」
紙に簡単に名前を書いて渡すとロイドが横から覗いてきてこちらを見た。
少し近い・・・。

「へー!エルって言うのか!よろしくなっ」
「・・・っ!」
初めて意思の疎通ができたことがうれしくてちょっと大げさにうなずくと

ロイドはキョトンとしたあとにまた笑顔を向けてくれた。







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