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宿についてすぐ夕食の前に話し合いが始まった。

内容はあまり明るい話じゃなかったけれど、夕食が終わる頃には打ち解けて心なしか皆から笑顔が増えた気がする。


今日の宿は二人一部屋、私はコレットと同じ部屋だ。


「おやすみ、エル・・」

「(うん、おやすみ)」


コレットの言葉に返事をしたのは良いけれど、相変わらず眠れない夜は長い。


野宿はある意味良かった、眠れなくても星空が眺めれて飽きなかった。



「・・・・(退屈だなぁ)」


見えるのは月明かりに照らされた天井。

とうとう我慢出来なくなった私はダイクさんから戴いた拳銃をホルスターに仕舞ってこっそり部屋から抜け出した。





フロントには誰も居ない、ジーニアスとリフィルさんの部屋からはジーニアス(と思われる)大きなイビキが聞こえてきて少し笑ってしまった。

1階ではロイド達の泊まる部屋がある、そういえば寝る前にロイドが皆の部屋を訪ね回っていたっけ・・・まるでおとまり会みたい。


そうだ、ノイシュは起きてるかな。

ロイドの家に居る時も眠れない時はノイシュと一緒に居た事があった。

夜中だけど…宿から近いし構わないよね?



「(ノイシュ〜)」

声は出ないままだけどこっそり呼びかける振りをしてノイシュに近付く。

「ワフッ」


すると皆が寝ているのをわかってか小さな声で返事が返ってきた。
・・良かった起きてた。


寄って来てくれたノイシュの頭を撫でる。

今回は馬を止める小屋に泊めてもらっているらしいので体までは手が届かない。




――――ガチャ



「!!」

静かな砂漠の町で自分以外の物音がして思ったより肩が跳ねた。



「・・・眠れないのか」

「(…クラトスさん)」

起こしてしまったかもしれない、少し申し訳ない気持ちになった。


「夜の砂漠は冷える、何か上に羽織ってから外に出なさい」

「!」

そう言って彼は私にケープを被せてくれた。

クラトスさんが使っていたもののようで私には少し大きい。


寒さや暖かさは感じないけれど心は温かくなっていくのを感じているとクラトスさんはじっと私のことを見た。


「・・・」

流石にこんなに深夜に出歩いているのを許してはくれないだろう。


「・・・お前は」

「・・・っ」

怒られる前に謝ってしまえ!と私は最敬礼の姿勢をきめた。


「・・・・」

「・・・・・・?」

返事がこない、見上げると真面目なクラトスさんの顔があった。


「顔をあげなさい、怒っている訳ではない」

「?」

すると彼の手が私の頬に触れる。


「・・・顔が冷えている。少しはマシだろう」

「・・(は、はいっ)」

なんで顔?と思うけどとりあえず彼を見て頷いた。
きっと寒かったから気を遣ってくれたんだ。


なんだかんだで優しい・・・「いや、私の手は冷たい筈だ。」

ロイドは冷たすぎて起きてきたからな。と付け足した彼は相変わらずポーカフェイスを崩さない。


「(・・・え)」

「食事も残していたな。」


「・・・・」


「なぜ言わなかった」

悲しんでくれているんだろうか、少しだけ眉間に皺が寄った彼を見る。



「・・感覚が無いのか」


随分前から言いそびれて言えなかった事、

リフィル先生は怪我の後遺症かもしれないと言っていたけどそうじゃない事は自分でも気が付いていた。


「・・・」

小さく頷くとクラトスさんは予想してたみたいでそうか、とだけ言った。


「(クラトスさん)」

「・・なんだ」


彼の服の裾を引くと書きやすいように手のひらを此方に差し出してくれる。

「(皆には言わないで)」

「・・わかった」


私、どこかでこんなやり取りをした事あるような・・・。




「感覚は無くとも体に響くかもしれん、今日は本を貸すからそれを読め」

「・・・」

「・・聞いているのか」

「(あっ、はい!)」



・・気のせい?





  
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