0.01▼
*
暗転する世界の中で引っ張っていた手の持ち主は彼女を守るように包み込んでいた。
「(・・・・・だれなんだろう)」
――――――・・ごめ・・な・・・・・こうする・・った・・・
途切れながらも聞こえてくる悲しそうな声、
相変わらずエルの視界は真っ暗だが泣いているように感じた。
他人よりも、
家族でもなく、
もっとどこか近いような存在。
特に言葉を交わしたわけではないのに不思議とわかってくる感情。
もしかしたらこの声の主の心の中なのかもしれないと錯覚するほどだった。
「なにか、してほしいことがあるんだね」
見えない世界に向かってそう呟くと彼女を包み込んでいた手が離れていった。
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