あなたのことを愛しています。
この身が朽ちるまであなたを愛することを誓います。
その愛はあなたに対する忠実さで表しましょう。
愛し、全てを捧げます。
「なまえ」
「なあに、リドル」
「その名で呼ぶのはやめてくれないか」
ボージンアンドバークスのエプロンを着たリドルがやってきた。
彼の顔からは不機嫌さがにじみ出ているのがよくわかる。
私と彼の関係は傍からみたら「カップル」そのもの。まあ一応交際はしているから多分その呼び方であっているんだと思う。
でも少なくとも私はそうは思っていない。
たしかにリドルのことを私は愛している。この世で、一番。
親友のエミリーや両親より、ずっとずっと大切な人だ。
リドルのためなら全てを捧げる覚悟だってある。
でも、違うのだ。
私とリドルは、世間のカップルが甘いクリスマスを過ごしていても、誕生日に最高の思い出をつくっていても、私達にはきっとそれができない。
今まで彼と過ごしてきたクリスマスも誕生日もなんて散々だったのがその証拠だ。ひどいなんてもんじゃない。
例えばあなた、彼が誕生日に血まみれで帰ってきたらなんて言う?
私なら「おかえりなさい」って言えるけど、あなたなら言葉に詰まるでしょう?
ちなみにその日、リドルは私の贈ったプレゼントを開きもしなかったわ。
でも、私は彼のことを愛している。
自分でもおかしいってわかるんだけど、でも、どうしようもないくらい愛している。
そんな愛も彼の前ではなんの役にも立たないことを、私は知っている。
「で、何の用?リドル」
「昔から、ヴォルデモートと呼べと言っているだろう?」
「ええ。でも嫌よ。リドルはリドルだもの」
「……君にちょっと使いを頼みたいんだ」
「それは、お店のこと?それとも個人的なこと?」
淡々と質問する私にリドルは少し間をおいて答えた。
「個人的に。君にしかできないことだ」
「仰せの通りに。我が君」
甘い声で囁かれるけどそれは私にとっての彼の魅力ではない。
彼の魅力とは、この上なく残酷で、卑劣で、醜くそして美しいものにある。それは飴玉のようにきらきらとしていて、泡のように儚くて、氷のように冷たくて鋭い痛みに刺されるのだ。
「ありがとう。君にはいつも感謝している」
「リドルからのありがとうはこれで5回目ね」
「いちいち数えていたのかい?」
「当たり前じゃない。ひとつひとつ、私の中の引き出しに入れておいてるのよ」
そう言って眉を下げて笑って見せると、彼は満足そうに口角を上げた。
好きよ、リドル。大好きよ、愛してるわ。
私の身体はもうすぐあなたの瞳のように冷たくなってしまうだろうけど、私が天に召されるその最後の一瞬まで、私はあなたを愛している。
神様のもとへ行っても愛し続けるなんて言わないわ。そこまであなたを束縛する権利なんて無いもの。私は私が生きているときだけでも愛せたら、それでいいの。
ね、リドル?
世界一薄幸な束縛