君がこの世を去ってから早いものでもう5年。
この5年間、君を忘れたことはなかった。
きっとこれからも僕は君を思い出しては悲嘆に暮れるだろう。
しかし、何故だろう。それでもいいと、思えてくるのは。
君は、覚えているだろうか。
5年前、死喰い人としての道を選んだ僕。
情けない涙を流す僕に君がこう言い放ったことを。
「何で泣いてるの」
「僕はこれからたくさんの命を奪うんだ」
「そうだね」
「君をいつかこの手で殺してしまう日が来るかもしれない」
「そうしたら、」
ザアァァッ───
風が墓地を吹き抜けていく。墓前に添えられた花々が僕の脇を風にのって流れていった。
そこで初めて、僕は自分が立っている墓の前に、何も添えられていないことに気がついた。
…寂しい奴だな。
僕はローブから取り出した杖を真っ白の墓に向けた。
「ねえ、セブルス。花言葉って知ってる?」
「……多少なら」
「私ね、好きな花があるの。花言葉は……」
「Orchideous───」
花よ。
好きな花は、リンドウ。
花言葉は、『悲しみにくれているあなたを愛する』
腕いっぱいのリンドウの花に、僕はそっと唇を触れた。
※ ※ ※
「そうしたら、」
「また泣いてるセブルスを、今度はそばで見守ってあげるよ」
君がそばにいてくれるなら、悲しみさえも僕は愛そう
120523