スキだ、と自覚はした。けど結局なにもしてない。・・・だって何も出来ない・・・。陸は僕のこと、単に年下の友人、若しくは弟みたいな存在、という風にしか見てないだろう。そんな陸に愛をぶつけることなんてできない。・・・それ以前に同性、だし。

「稜、話したいことがあるの・・・」

自室のベッドでごろごろしてた僕に、扉の外から声がかかる。母さんだ、その声に頭を切り替えた。


「どうしたの?改まって」

リビングのソファに向かい合うように座って首を傾げる。どこか緊張した面持ちの母さんは、言いづらそうに口をひらいた。

「あの、あのね。・・・突然で驚くかもしれないけど、・・・母さん再婚しようと思って、」
「え・・・?」
「も、もし、もし稜がいやなら・・・」
「そんなことない!再婚?ほんとに?」

ずっと女手ひとつで僕を育ててくれた母さん。そんな母さんが掴もうとしている幸せ、邪魔なんてできないし、する理由もない。

「い、いいの?」
「もちろん!大歓迎、っていうかすごく嬉しいよ。相手はどんな人なの?名前は?」

にっこり笑いかえせば、母さんは幸せそうに微笑を浮かべた。でも、・・・でも。

「凄くいい人なの、きっと稜も気に入るわ。名前は、」

凍りつく。心配そうな顔を浮かべた母さんに、無理やり笑顔を浮かべた。



「そういえばなんで陸たち、こっちに帰ってきたの?」
「陸がこっちに用事があるんだと。俺はその付き添い」
「へえ?用事って?」
「・・・ないしょ、」
「え?」
「もうすこししたら、わかる」
「ええ、なに?気になる」
「我慢しろ稜。こいつオレにも教えねェんだから」



・・・―もうすこししたら、わかる・・・?


「桂木京夜さん、っていう人なの」

なにかが崩れる、音がした。


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2010/03/21/

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