会い



耳を塞いでいた僕は、突然目の前に現れた陸を一瞬人間じゃないモノだと思った。其れほどまでに僕の前に無表情で立つ陸の顔は美しかった。
子供目にみても、陸はとても上等なお人形に見えたし、いつか絵本で見た架空の生物、それこそ妖精だとか、そんなものにも見えた。

なによりその青い瞳が、ビー玉みたいにキレイで。僕はホンキで陸のことを人間じゃないと信じ込んでいた。

「なに、してるの?」
「・・・え?」
「こんなところで、どうしたの?」

小首を傾げて問うてくる陸。失礼な話だけど、聞かれた内容なんて全く耳にはいってなかった。ただ、目の前の人形が喋ったことに驚いて、それがキレイな音だったってことだけを認識してた。

「陸ーっ? ボールあったかー?」

暫くの間見詰め合ってた僕らに、活発そうな男の子の声が割り込んできた。それに反応した目の前の少年は、あたりを見渡して直ぐそばに転がってたボールを拾いに行く。赤いボールを拾った彼は、首だけこちらに向けて首を傾げた。

「なまえ、」
「え?」
「陸。・・・きみは?」
「えっ、ぼ、ぼくのなまえ?」

こくりと小さく頷く。青い瞳がじっとこちらを見ていてなんだか気まずくなった。

「りょう、・・・稜、だよ」
「稜。・・・また、くる」
「えっ!?」

青い飴を僕に押し付けて、陸は草むらの向こうに消えていった。ポカンとして僕は、陸の消えていった草むらを呆然と眺めてた。
僕がまたここにいるとは限らないのに。

あとで聞いた話では、どうやら陸も僕のことを妖精かなんかだと勘違いしてて、ずっとここにいる生物だと思ったらしい。血は繋がってないけど、なんだか似たもの兄弟だよね、僕ら。



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2010/03/21/

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