梟に捕まる鮫
※セクピスパロ


3年になって初めての合宿。梟谷グループの合宿に呼ばれた音駒もいつも通り参加することに。ただ、私は去年の合宿を休んでいるので他校の1年生は勿論、2年生とも面識がない。更に今年は従弟の飛雄がいる烏野高校も参加するとの事で、一昨年よりも大人数での合宿に少しばかり緊張していた。

ところで、"斑類"という言葉を聞いた事が在るだろうか。

斑類とはヒトが猿から進化する過程の中で動物の遺伝子が部分的に覚醒したヒト科の生物で、斑類以外のヒト科、一般人は猿人という。

……だいぶ大雑把に説明すると、動物的特性を持ってるよー、希少だから繁殖力少ないよー、種族によって力の優劣があるよー、猿人には斑類かどうか判別できないよーということだ。

これからその斑類が珍しく揃っている場で数日間過ごすのだ。楽しみでもあり、不安でもある。

「ここでお婿さん候補見つかれば楽なんだけどなー」

渡り廊下でドリンクを作りながらため息を吐くと、隣の潔子ちゃんがクスリと笑う。

「水希ちゃんは重種なんだからモテそうだけど」

「いやー女で蛟って強そうとか言われて人気ないみたい」

あたしだけかもしれないけど、と言うと潔子ちゃんはそんな事ないでしょと言ってくれる。しかし哀しいかな、それが現実なのだ。


「あ、梟だ」

練習中、コートを覗くと一際目を引く人物がいた。初めて見る顔であるし、きっと後輩だろう。赤葦、と呼ばれたセッターの人の魂元はきっと梟だ。斑類の中でも特に希少な翼主(日本では天狗と呼ばれている)が見れるとは何と有難い事だろう。木兎くんの魂元も梟ではあるが、何だか赤葦くんのほうがキラキラして見えた。そういえば以前、黒尾から木兎くんが同族と会えて嬉しそうだったと聞いたことがある。きっと彼の事だろうと思いつつ、ジャグを洗うため一旦外へ。

「あっついなー……」

私のような蛟や蛇の目は体温調節が苦手である。気温が高ければ頻繁に熱中症になるし、低ければ低体温で最悪死ぬ事もある。学校生活の中で温度を調節するのは難しいので夏は冷えピタ、冬はカイロを常備しているのだが、今日はバタバタしていてそんな暇もなかった。

汗をかかなくなっている事に気付きながらも、ひとり黙々と沢山のジャグを洗っていると手元を影が覆った。

「これ使ってください」

赤葦くんだ。

「このタオルまだ使ってないんで」

あとこれも、と渡されたのは冷えピタ。何で、という顔をして固まっていると赤葦くんは私の頭にタオルをそっと被せた。

「蛟、ですよね?うちにも蛇の目がいるんでこういうの慣れてるんですよ」

ああ、なるほど。ありがたくタオルと冷えピタを受け取り改めて彼の顔を見ると、何と自分好みの顔であるか。

顔の熱がどんどん上がっていってさすがに赤葦くんもヤバいと思ったのか、自分の首にかけていたタオルで扇いでくれた。

「……後は俺がやりますから、先輩は休んでてください」

「……すみません」

火照る顔をタオルで抑え、私の代わりにジャグを洗っている赤葦くんをこっそり見る。

……やっぱり好みの顔だなぁ。木兎くんの面倒も見ているだとか、2年生なのに副主将を務めているだとか、それだけでしっかりしてるという印象だ。さらには私を気遣ってくれたし、手伝いまでやってくれている。

こういう人がモテるんだろうなぁ。

一通り洗い終えたのか、水気を切ったジャグを籠に入れていく。ありがとう、とお礼を言って籠を受け取ると、その手をがっと掴まれた。

「で、希少な天狗ですし損する事はないと思いますよ」

「は、え?」

「婿候補探しているんでしょう?」

何故それを...!?と固まっていると、烏野のマネージャーさんと話してるの聞きました、と。あの時か!

「婿には行けませんが、お嫁さんに来てくれると嬉しいんですけど」

どうですか?と彼が僅かに首を傾げる。体中の熱が上がっていき、目が回りそうだ。こんな状態を知りながら、そのような事を提案するなんて、狡い。

「よっ...よろしくお願いします!」

断れるわけがなかった。


試合中メモを取っている潔子ちゃんにお婿さん候補見つかったよ、と耳打ちすると、驚きながらも良かったね、と微笑んでくれたのだった。

「ところで誰がお婿さん候補なの?」

「あ、赤葦くん……」

「ああ、梟谷のセッターの子?随分と貴重種を選んだのね」

「は、ははは………」


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