就活中に戦国へ飛ばされ、そこで元就様と出会って拾われて、武器を貰って全国を旅した。列伝が完成して正式に毛利軍に入って度々戦にも参加した。元就様が出陣する回数は年々減っていき、目まぐるしく変化していく情勢の中、とうとう彼は床に伏した。
「大殿、お茶をお持ちしました」
夜、元就様の部屋へ行くと彼はぼーっと天井を眺めていた。
「忍でもいるんですか?」
「いや...私ももうすぐ逝くのだろうなと思って、さ」
元就様が力なく笑った。皺が増え、髪が抜け落ちて、立つこともままならなくなり、彼は私を手放そうとした。しかし私は側室として最後まであなたの傍にいたいと言ったところ、彼は申し訳なさそうに、けれどもどこか嬉しそうにありがとうと笑った。
「お茶、飲みますか?」
「いや、いいよ。今日はこのまま寝るとしようかな」
桐子、と元就様が手招きする。枕元に近寄ると手を伸ばされた。その皺くちゃな手を両手で握ると、彼は安心したように目を細めた。
「桐子は、私が死んだらどうなるんだろうね...」
「どうでしょう。案外元の世界に戻ったりしますかね?」
「そう、だといいな...君を此処に残して置きたくないから...」
「そうですね。大殿がいなくなったら、私が此処にいる意味はないですし」
荷物をまとめてさっさと帰ります、と冗談混じりに言うと彼はふふ、と笑みを溢した。
「桐子、さよならだ」
彼がそっと目を閉じたのを見て、私もそれに倣う。手を離さないように力を込めた。
「さよならじゃないですよ。また会いましょう、元就様」
ふわっと浮遊感がして風を感じる。そして彼の手の暖かみが消えていく。次に目を開けた時、きっと彼のいない世界に帰っているだろう。それでも私は寂しくない。私は彼に再び会えることをずっと願っている。
「来世で会えたら素敵でしょう?」