拾肆「俺がしたかったのはこんな事じゃなかった...」そう言った彼に皆が黙る。 「なら何がしたかったんだてめぇは」 「俺は、」 「ずっと閉じ込めて、俺の誘いに乗るくらいまで追い詰めて、てめぇは何を得たかったんだ」 「俺はっ、ただこの子をっ、奈月を護りたかっただけだ!!!」 思わず声が漏れそうになった口を抑えた。 (今、何て......) 「最初は殺そうと思ったよ、怪しいし...でも荷物の中身は見たこともないし、俺がいない世界とか聞かされて訳分かんなくなった...風来坊には余計な事言われたし...モヤモヤして、八つ当たりした」 「前田の風来坊か...ま、そういうのはあいつの専門だしな」 政宗さんが鼻で笑う。慶次さんの専門ってなんだろうか。 「...旦那や大将や風来坊と俺に対する態度が違うし、俺とは目も合わせない。俺が一番傍にいたのに、一番遠くて、忍だからって割り切ろうとしたけど、無理だった」 「佐助...」 「アンタのせいだよ竜の旦那。アンタがこの子を連れてくっていうなら、俺はどんな手を使っても止める。それでこの子が泣くことになったとしてもだ」 忍は血を垂らしながらゆっくりと立ち上がった。そして政宗さんに大きな手裏剣を向ける。その目は先ほどの泣きそうな目ではなく、射殺すほどの鋭いものだった。 「失いたくないんだ、この子を。今度はちゃんと、大事にしてあげたい」 「...だそうだ、奈月」 お前はどうしたい、と政宗さんが私を一瞥する。私を殺そうとしてたこの人が、私を大事にしたいと言っている。八つ当たりされて、あんな酷い事言われ続けて、それでも私は毎日我慢していたのに! 「...今更、何言ってるんですか」 「......」 「許せるわけないでしょう!?閉じ込められて監視されて嫌味言われて、それは守りたかったから、必要な事だったから許せって!?そんな簡単に受け入れられるわけない!」 苦しい、胸が苦しい。 「奈月殿...?」 ひゅーひゅーと喉が鳴る。息が、できない。 そこで私の視界が暗転した。最後に見えた驚く忍の顔を最後に。 |