憎いばかりの晴天。空を睨みつけて広い屋敷の廊下を歩く。目の前の忍が足音なく歩くのが不気味だ。

「お館様、連れてきました」

「入れ」

障子が開けられ中に入ると、奥に赤い大きな男性、下手に幸村が座っていた。

猿飛佐助に促されて中央に座ると、目の前の、恐らく武田信玄が私をじっと見つめる。圧迫面接みたいだなと、心の中で笑った。

「お主が奈月か」

「はい。雨宮奈月と申します」

「うむ。わしは武田信玄。奈月、幸村と佐助から話は聞いておる。未来から来たと言うのは真か」

「私は今か約400年後から飛ばされてきました。電車っていう絡繰りの乗り物があるんですが、こちらに来る前その乗り物に轢かれる直前に意識を失って、気づいたら山にいて......そして真田様に出会いました」

轢かれると言った瞬間に幸村が声をあげそうになっていたが、武田信玄に制された。

(そう言えば、どうやってこっちに来たかは言ってなかったな...)

「そうか......では、お主はこの先何が起きるのか知っておるのか」

きた。

「知っていると言えば知っているし、知らないと言えば知りません」

スッと首元に刃物が当てられる。多分あの忍だろう。

「佐助」

「何をしておるのだ!」

「......次ふざけたこと言ったら殺すから」

そう呟いて首元の刃物が離れた。何だかこいつの殺気にも慣れてきたなと頭の隅で考える。随分とこちらにも適応してきたものだ。

「どういうことじゃ」

「私の世界でも武田様や真田様の名前や風林火山も有名です。しかし、お二人の姿は私が知ってるものと違います。髷を結わいておられませんし、そのような武装をしておられませんでした」

武田信玄が眉を顰める。

「何より、猿飛佐助という人物は存在しません」

「なっ......」

声を上げたのは幸村の方だった。

「真田十勇士は伝記のものだと思っていましたが......まさか、本当に存在するとは思いませんでした」

これは後ろにいる忍への細やかな仕返し。彼はどんな思いで聞いてるのか。

(ざまあみろ)

私には関係ないけど。


武田信玄にはどうにか私の言う事に納得してもらえたようだ。

『お主はわしの遠縁の娘として武田に招こう』

そして私の面倒はあの忍に一任された。これはまあ、以前と変わらない。そして時々、躑躅ヶ崎館にも遊びに来るよう言われた。後で幸村に聞いた話だが、孫ができたようで嬉しかったそうだ。

何はともあれお館様にも認めてもらえたようだし、数日はこちらに留まるように言われた。これで一件落着。

......と、言いたいところだが。

以前より、忍の私に対する扱いが厳しくなったように思える。

「夕餉はお館様が一緒にとるようにだってさ」

ここまでは普通。

「あんたの好きな人参たくさん入れといたから、残さず食べなよ」

(何故私が人参嫌いなのを知ってるんだ)

こういう嫌味が増えてきたように思う。でもお館様は優しいし、幸村は気にかけてくれる、また上田城に戻れば慶次さんも遊びに来てくれるそうだ。

「だから、別に気にしない」

「何か言った?」

「いいえ何も」


***
ウィキ先生情報乱用しました。間違ってたらすみません。


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