踊るイノセント
初めて言われたのはいつだったかなぁ、最初は褒められたんだと思っていた。幼心にどこか純粋な羨望ではないとは薄々感づいていたけど。
「空介くんはいいね」
「松野はなんでも出来るもんな」
「マックスは頑張らなくてもいいけどさ」
「お前は俺達とレベル違うし」
言葉の裏に潜んでいた毒針みたいなものが、段々と歳を重ねると見えてきて。
特別に気にすることはなかったけどね。ただちょっと鬱陶しくは思っていた。僕は器用だし、それを自分で言っちゃうような性格だから人一倍疎まれていたのかもしれないけど、まぁ出来ちゃうんだから仕方ないじゃん。
けれど半田は違った。
「お前すげーな!」
「俺にも教えてくれよ」
「流石マックスだ!」
屈託のない笑顔とか無邪気な声とかが、いちいち擦れた心に染み込むみたいでたまらなく好きになってしまった。
ねぇ半田、だって部活に最初からいたのに途中からひょこっと入部したボクなんかにスタメン奪われて悔しくない訳ないでしょ?
なのに君は、君は「頑張って行ってこいよ」って背中を見送ってくれて押してくれて、ボクは、ボクは。
気にしていないつもりでいた。嫉みとか僻みとかどうでもいいって思ってたけど、意外とその壁は高かったのかもしれない。
でもだからこそ君の尊さに気が付けたのなら、それもありかななんて楽観的に考えちゃうボクを許して。
(松半) thx:喘息
20130211 (Mon)
▲ ▼