愛溢れる物語

「ねぇ、もう一回だけ言って」
「好きだよ」
控えめに頬を染める君が愛しくて、何度だって言うのにと思いながらほほえんだ僕。恋が叶った瞬間はもったいないくらいの幸せに包まれていて、君の願いなら何でも叶えたいと思ったし、そのためなら何だって出来る気がした。

「一緒に行こ」
「うん、もちろん」
「ここ教えて」
「これはね」
「フタ開かない」
「貸してみて」
「あれ食べたい」
「ちょっと待ってて」
「手繋ご」
「熱いね、手」
「キスして」
「目、閉じて」
「ずっと側にいて」
「当たり前だよ」
何度も何回も名前を呼び合っていつだって側にいた。それなのに、

僕の眸に立ち向かうみたいに突きつけられた鈍い銀色は、誰もいない官能的な教室で大げさな音を立てた。
じゃこん。
ひらひらと重力と共に床に散らばった前髪を見る余裕もなく、君の潤んだ目に釘付けで、
「何かいうことあるでしょ」
僕の大好きな声が谺して。
「好きだよ」
そう応えた僕の声はまっすぐ君に届いたはずなのに。

君からの愛は広い海で溺れたみたいに爪先から頭のてっぺんまで僕を包むくらい溢れているのに
僕の愛は君の淵を流れてすべてこぼれていたみたいだ。


(org)


20131120 (Wed)





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