Es ist Showtime!(中編)



セレネside

「GO、ベヒモスッ!!」
「グルルルッ!!」
「うわぁあああんなんで僕に向かってくるのぉおお顔面舐め回さないでよぉおおおッ!!」
「そういえば、ベヒモスは昔からセレネが好きでしたね。ベヒモスソッチじゃありません、セレネから離れて下さい」
「グルルッ!!グルルルルァアアッ!!」
「うぇええええんもう嫌ぁああああッ!!」


第19噺 Es ist Showtime!(中編 )


アマイモンの指示に漸く従って、魔方陣の中へ入ろうとするベヒモスを見た瞬間、僕はそれを阻止する為に急いで魔方陣を発動させる。

「“大地に降り注ぐ白魔よ、その力解き放ち堅牢なる鎧となれ!ジャックフロスト!!”」

僕が叫んだ途端、魔方陣の中心からジャックフロストが現れ、「〈ヒーホー!〉」と返事をして地面の紋章を凍らせていく。
その瞬間、拠点を囲むように地面が眩しく輝き、アマイモンとベヒモスを森に弾き飛ばした。ジャックフロストの方を見ると目が合い、お互いにグッと親指を立てる。

「良かったーありがとうヒーホー君ッ!!」
〈こんなのお安い御用だホ〜♪〉
「なっ何この悪魔可愛……ッ!!//」
『………お前容赦ねぇな、今のであの糞小鬼に対する殺意が消えたわ』
「さっきの仕返し込みだよ!この魔方陣は描いた時に中にいた人は守られて、それ以外を一切弾く絶対牆壁だよ。まぁ暫くは安全だろうから皆安心して!」
「あ、あのーセレネちゃん、絶対牆壁ってほんまなん?もしこれも訓練なら、いくらなんでもハード過ぎじゃ…」
「そんな事よりさっきのは何なんですか!?」
「訓練は終了だ、今からアマイモンの襲撃に備えるぞ」

獅朗ちゃんは動揺する燐兄達に説明しながら、最近また吸い始めたらしい煙草に火をつける。

「……は?アマ……!?」
「CCC濃度の聖水で重防御するから、お前らコッチに集まれ」
「アマイモン……?アマイモンって、八候王の一人の……“地の王”ですか!?さっきのがッ!?」
「そうだ、祓魔師程度じゃ到底敵わない超大物だ
だから防御するんだよ。ほら並べ!」
「なんでそんな大物が…ッ!!」
「何かの冗談…で、すよね」

………なんか、ごめんね皆。
そうだよね、これが普通の反応だよね。僕はアマイモン来たらいつも平然と遊ぶけど。
いずにゃんに肯定しながらも、獅朗ちゃんは聖水が入ったタンクを皆に向けて次々と掛けていく。けど皆は未だに信じられないようで……ていうかお姉ちゃんが無言で獅朗ちゃん睨んでるのが怖いよッ!!獅朗ちゃん冷や汗かいてるよ、御愁傷様です。

「うおっ危ねぇッ!!お前にかけるとこだったわ、すまねぇな燐」
「おい勘弁しろよ親父…」
「しょうがねぇな……余った分はセレネにかけるか。おいセレネ、そこで寝そべったままじゃ汚れるぞ。早くコッチに来い」
「奥村には何もせえへんのですか?」
「あーその、コイツなんつーか……聖水アレルギーなんだよ。ほら、世の中色んなアレルギーあるだろ?コイツ修道院育ちだから、コイツに毎日聖水かけてばっかいたら逆にアレルギーになっちまってよぉ」
「聖水アレルギー!?そんなん聞いたことないわッ!!てか毎日ってかけすぎとちゃいますッ!?」

理由適当過ぎだよ獅朗ちゃん、てか毎日かけるってどうなの。流石に無理があるよ。他の皆も雪兄何処いったとか色んな疑問が渦巻いてるし……まぁ後からバラすんだから別に問題ないけどね。

「緊急連絡先にも先生方にも連絡つかないわ」
「あの……アマイモンは一体何が目的なんです?」
「えーっとそれは……」
「あー……多分さっき見た様に、奴はコイツを気に入ったからだ。セレネは悪魔に敵意持たねぇから、悪魔に好かれやすいんだよ(適当)」
「ちょッ!!獅朗ちゃん僕を理由にするのやめてッ!!」
「そう、全てはセレネが五歳の頃から始まった…」
「いや話盛らなくていいからッ!!」
「おい……さっきの奴理由は知らねぇけど、多分俺が目的なんだッ!!」

燐兄は獅朗ちゃんの袖を掴み、深刻な表情で僕らを見つめる。獅朗ちゃんは燐兄の不安を少しでも拭いとろうと、頭を優しく撫で笑顔を向ける。

「大丈夫だ、ちゃんと分かってるから安心しろ。
この牆壁はアマイモンだろうと並大抵では破れねぇよ、召喚士が作ったんだから。けど奴も今回は多少計画的みてぇだからなぁ……」

獅朗ちゃんの話を聞いている燐兄の袖をクイッと引っ張り、僕は獅朗ちゃんに続いて話し出す。

「次にアマイモンが仕掛けて来た時は、燐兄はすぐ降魔剣と一緒にここから離れて!」
「は?だって降魔剣はシュラが……」
「テッテケテッテッテッー!テッテッーッ!!こーうーまーけーんッ!!シュラ姉から預かってきたんだッ!!」

そう言って僕はランドセルからガサゴソと降魔剣を取り出す。「なんでランドセルに入ったんだよッ!!」と燐兄がツッコむけど、そこはソウルスルーして燐兄に渡す。

「お前らは……俺の炎を抑えたいんじゃないのか?“炎出すな”って忠告しただろッ!!」
「「『いやさっき炎出したじゃん』」」

僕ら三人にキッパリ言われた燐兄は、「うぐっ…」と言葉を詰まらせる。それを見て僕は笑うのをやめ、燐兄の目を真っ直ぐ見つめた。

「つまり……燐ちゃんみたいな人が、これから炎無しでどうやって戦うの?」

さっちゃんも何か言うつもりなのか、僕がそう言った後燐兄の前に立ってガシッと頭を鷲掴みする。

『アマイモンはそんじょそこらの雑魚とは違ェぞ。考えてみろよ、なァ?』


『頭使って考えろ』


さっちゃんは珍しく真剣な表情で燐兄にそう言った。普段傍観してるだけのさっちゃんが燐兄に助言している、めっ珍しい……明日は槍が降(ry
なんてことを考えていると、しーちゃんが突然隣にやって来て僕を抱き上げた。

「へ?しーちゃん……?」
「“オイデ”」
「あ、そうだったしーちゃん操られてるんだった!ねぇ獅朗ちゃん、しーちゃんが悪魔に操られてるッ!!多分虫豸だと思……」
「“オイデ オイデ”」
「は?おいなんで片手に持ちかえて……」ブンッ
「投げたぁああああッ!!ぎゃああああ怖いぃいいいい木にぶつかるぅうううううッ!!」

待ってよ、まさか僕を片手で投げるなんて思わなかったよッ!!ていうかこのままだと木にぶつか…………………あれ、痛くない?
僕が瞑っていた目をそろりと開けると、アマイモンが僕をキャッチしていた。

「さっきはよくもやってくれましたね」
「(アマイモン)だと思ったよッ!!キャッチしてくれるのさっちゃんだったら良かったのにッ!!」
「おいアマイモン、セレネは関係ねぇだろ!!此処に置いてけッ!!」
「嫌です、ではさようなら。びょーん」

そう言ってアマイモンは僕を肩に乗せ、木々へ飛び移り森の中へ走る。ていうか君達親子僕を肩に乗せるの好きだね、なんで?何処の人形師?

「あっ待てこのトンガ……ッ!?」

燐兄は僕らを追いかけようとするが、ベヒモスが立ちはだかり前へ進めない。それを見た獅朗ちゃんがベヒモスを自前のショットガンで撃ち、お姉ちゃんが長剣で斬りかかる。

「行け!!俺達も後を追うッ!!」
「く……ッ!!」
「おい奥村ッ!!」
「お前らは死んでもその牆壁から出るなッ!!」

アマイモンを追った燐兄の後を追おうとした竜君達だが、ベヒモスに応戦する獅朗ちゃんとお姉ちゃんに止められてしまう。

「そんな…」

何も出来ない自分と単独行動に走る燐兄に、竜君達は苦渋の表情を浮かべていた。


†††††††††††


「そういえばアマイモン、さっきからずっと気になってたんだけど、そのタンコブどうしたの?」
「さっきのことで兄上に怒られました」

…………今の気持ちを顔文字で表すと、
m9(^Д^)プギャー だね、ザマミロ!変なことしようとするから怒られるんだよ、ナイスメフィストッ!!

「待て!!テメェこの間といい何なんだ!!」

あ、燐兄追い付いてきた。やっぱ悪魔だから速いなぁ、君達のその速さ羨ましいよ。

「セレネをどうする気だッ!!」
「どうしましょう、うーん………」
「悩むことないでしょ、降ろしてくれたらそれで良i…「そうだ、ぷろぽーずとやらをしよう」いや人の話聞こうよッ!!」

燐兄と僕が驚いているのを無視して、アマイモンは僕に話しかける。

「セレネ、毎朝僕に味噌汁を作って下さい」
「んなベタな……ていうか何処で覚えたのそれ」
「兄上のマンガで読みました」
「いやそれ断られるだろ絶対」
「ていうかなんでそこまで結婚に拘るの?」
「セレネをお嫁さんにすれば、僕のものになるからでs「はい却下、やっぱりね。僕はそれだけの理由で結婚したくない!」……………煩いなぁ、泣き虫セレネのクセに。その唇噛み千切りますよ?」

苛つきながらそう言ったアマイモンは、僕の頭を荒々しく鷲掴みして引き寄せ、アーンと口を開ける。ヤバい怒らせちゃった、そういえばアマイモンは昔から僕に反抗されるのが嫌いだったなぁ。
まぁ他の人にもそうだけどね。ていうかどうしよう、このままだと顔がグロテスクなことになるよ。

「テメェふざけんなよッ!!俺の将来の義妹に何しやがるッ!!」
「ふざけんなは………コッチの台詞です」

降魔剣を鞘に納めたまま飛びかかる燐兄だが、アマイモンに簡単に弾かれ岩のある方へと吹っ飛ばされてしまう。

「剣は抜いて使うものです、何故抜かないのかな?勿体ぶらないで下さいよ」
「ちょ、アマイモンもう少し手加減を「セレネは黙ってて下さい」ええぇ…」

アマイモンは僕の言葉を遮って燐兄を踏みつけ、その勢いで燐兄は下へ落ち、岩が崩れる。

「変だな、セレネは君の大事な義妹じゃないんですか?」
「くたばれ……ッ!!」
「…………」

あ、ヤバいアマイモンがつまんなさそうな顔してる。こんな時アマイモンは何をするか分からないから厄介だ、飽きたら平気で壊したりポイって捨てたりするからなぁ…。

「なーんだ、じゃあ君に義妹は必要ありませんね。うーんどうしましょう、無理にお嫁さんにすると父上に怒られるし……そうだ、虚無界へ連れて行きましょう。僕の領土に住めば毎日会えますし、従兄弟にも紹介しないと」
「え、従兄弟いるの!?」
「それじゃあ行きましょうかセレネ」
「……ッ!!やっやめ………」

燐兄がアマイモンに静止の言葉をかけるが、先程落下した痛みで体が思うように動かないようだ。どうしようかと悩んでいると、ギブアップ用の花火が僕達の横を掠めて、目の前でパァンと上がった。
後ろを振り返ってみると……

「俺らは蚊帳の外かい、交ぜろや」

僕らの背後にいるのは、花火とマッチを構えた竜君達だった。アマイモンは僕を掴む力を強め、竜君達をジッ…と見つめる。

「よせ馬鹿ッ!!」
「奥村君!もし隙が出来たら逃げるんやッ!!」
「二人共、すぐ助けるからね!」
「俺はあくまでセレネちゃん救う為やからねッ!!」
「何をッ……いいから逃げろッ!!」

うーん、まさかの展開だなぁ……いや考えてなかったわけじゃないけどさ、最悪の展開になろうとしてるというか………皆には怪我してほしくなかったから魔方陣設置したのに、意味なかったかなぁ?
そう思っていると、猫丸君は手を滑らせてしまったらしく、花火が此方に飛んでくる。

「わあぁあしもた!手元が……ッ!!」
「子猫さん!セレネちゃんになんてことをッ!!」
「いや、僕は大丈夫だけど……アマイモンが…」

頭の天辺がブロッコリーになっちゃった。
いや、木にも見えるかな?

「このー木なんの木♪ア マ イ モ ン♪………って痛たたたッ!!ごめんってアマイモンほっぺつねらないでッ!!」
「ぶふ…ッ!!ブロッコリ……ッ!!」
「ちょ、志摩ちゃんは笑っちゃ駄目……ッ!!」

どうやら遅かったようだ。志摩ちゃんは怒ったアマイモンに蹴り飛ばされ、木に背中を強打する。

「志摩さんッ!!」
「ゲホッゴホ…ッ!!」
「ちょっと待ってアマイモn…」

僕が言いきる前にアマイモンは動き、竜君に距離を縮める。それを見た猫丸君は竜君の前に出て庇う。アマイモンは自分より身長が低い猫丸君を見下ろすと、猫丸君の左腕にほんの少し爪先で触れただけで骨を折ってしまう。
突然の鈍い痛みに「うわぁああッ!!」と悲鳴を上げる猫丸君を他所に、アマイモンは竜君の首を絞めた。

「僕を笑ったな……?」
「うぐっ……」
「アマイモンやめてッ!!皆は予想外のことが起きて思わず笑っちゃっただけで、アマイモンを馬鹿にしてるわけじゃ…「煩い、黙ってて下さいって言いましたよね?これ以上邪魔するなら、いくらセレネでも容赦しませんよ」ッ………」

駄目だ、完全にキレて箍が外れている。
こうなってしまっては、一筋縄ではいかない。なんとかしてアマイモンの気を逸らさないと……そう思っていると、竜君が喋りだした。

「ケッ、お前なんかに用ないわ。俺が腹立ててんのは……手前や奥村。手前勝手かと思えば人助けしたり、時に能力もないかと思えば好プレーしたり……謎だらけやッ!!何なんや手前はッ!?」
「お、俺は……」
「……何の話ですか?僕は無視されるのは嫌いだなぁ」
「グハ…ッ!!」

アマイモンは首を掴んでいる手に力を込め、竜君が吐血し出す。僕の静止の声も聞かない……正式な使い魔なら、命令すれば動きを封じることも出来るけど、生憎アマイモンは僕のトモダチだ。
この最悪な事態を見て燐兄は「やめろッ!!」とアマイモンに叫び、降魔剣に包まれていた赤い布を外してしまう。

「……遂に決心したんだね、燐ちゃん」
「皆を救えるなら……俺は、この力を隠すのをやめる」
「そっか、偉いね燐ちゃん…………覚悟は良い?
「あぁ!やってやるッ!!」

そう言って燐ちゃんは、遂に降魔剣の鞘を抜いた。けど燐ちゃん、これだけは覚えておいてほしいんだ。燐ちゃんの姿を見て皆が離れて行ったとしても………


「僕はいつでも君の味方だよ……燐お兄ちゃん」


To be continued…
*H27.4/10 執筆。



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