ボクの夏休み(後編)



セレネside

「何気に奥村君て、体力宇宙ですよね」
「何かピクニックみてぇだよなー!」

皆が息を荒くしながら登る中、燐兄だけがはしゃぎながら先頭を走っていき、お姉ちゃんと雪兄に捕まり引き摺られ皆と同列に並ばせ歩かされる。
………遠足で騒ぐ男子にいたよねこういう子。


※↓暫く山中の会話をお楽しみ下さい。

「うぅー……疲れたぁああさっちゃんおんぶー」
『嫌に決まってんだろ面倒くせェ肩から降りたくねェ』
「………まぁ確かに小中学生にこれは少しキツいかもしれまへんね、セレネちゃん他の中学生より小さいですし。」
「お姉ちゃん……」
「グッ………」
「お、耐えるか?妹のおねだりに」
「…………………………………我慢しなさい」
「おお耐えた!「藤本さん黙って下さい」 ドスッ 痛てッ!!」
「よーしセレネ、久し振りに肩車してやるよッ!!」
「わーい燐お兄ちゃん大好きッ!!お姉ちゃんと雪兄が結婚したら本当のお兄ちゃんになるねッ!!」
「ゲッホゴッホッ!!セレネちゃん急に何言ってゲホッ!!」
「うわぁああ先生大丈夫ですかッ!?」
「じゃあその時は俺のことお義父さんって呼んで良いぜセレネ」ニヤニヤ
「いい加減にして下さい藤本さ………皆さん着きましたよ」

燐兄に肩車してもらって二人で両手広げて「「ぶぅううーん♪」」と言って遊んでいると、目的地に到着した。←だぁれが言ったんけぇ「「知らねぇ!」」(トトロネタ)


「さて、お前ら此処でテント張るぞー。この森は日中は穏やかだが、日が落ちると下級悪魔の巣窟と化すからな、日暮れまでに拠点を築く。」
「男性陣は僕と藤本先生でテントの設営と炭熾し、女性陣はセレネちゃんと時渉先生の指示に従って、テント周囲に魔法円の作画と夕餉の支度をお願いします。じゃあ始めましょうか!」

あ、雪兄コート脱いだ。
そりゃそうだよね暑いもんね、超人なのかと思ったよ。獅朗ちゃんなんて既に半袖Tシャツだよ、神父がそれでいいのか。
………まぁ僕やお姉ちゃんもコート(というよりブレザーとジャケット)脱いでるけどさ、暑いし。因みにコートは四次元ランドセルの中だよ!

「じゃあしーちゃんいずにゃん、この紙に描いてある通りに魔法円を描いてね!大きいから大変かもしれないけど頑張って!分からないことがあれば聞いてね、僕お姉ちゃんと夕餉の支度してるから!」
「え、何この魔法円デカッ!!」
「こ、……これをたった二人で描くの?」
「うーん……仕方ないなぁ、じゃあ特別に管狐君達にも手伝ってもらおうか!“おいでフォック君達ッ!!”
〈チィー!〉
〈チチィ?〉
「わぁああ可愛いッ!!」
「って管狐!?あんたうちの神社の子達も混ざってるじゃないッ!!」
「まぁまぁ細かいことは気にせずに!じゃあ宜しくねーフォック君達!」
〈〈チィーッ!!〉〉

そう言って僕はお姉ちゃんの元へ向かい、野菜を切った後のまな板と包丁を洗い始めた。

「スゲェなぁ、ますますピクニックっぽくなってきたな!」
「それを言うならキャンプやろ。つかそないにポンポン叩いたらあか…」ベシャッ
「あぁあああやっちまったッ!!」
「だぁから言うたやろッ!!」「奥村君ッ!!」
「う゛……二人同時に責めるなよ……」
「燐、お前もう向こう手伝って来い……得意分野の方が良いだろ?レイ達二人だけじゃこの大人数の飯作るのキツいだろうし。」
「お、おう……そうするわ」

あ、燐兄コッチに来た。なんか向こうでテント張るのに失敗したみたい。
やっぱり燐兄とお姉ちゃんは手慣れてるね、二人の作業が流れる様に息ピッタリで、見てて惚れぼれするよ!レストランのシェフの調理場みたいな雰囲気!

「セレネ、描き終わったけど料理の方は……………あたし達は必要なさそうね」
「うん、今はお姉ちゃん達の調理場に行かない方が良いと思うよ。思ったより早く終わったね!」
「それにしてもセレネちゃん、林間合宿なのにあんなに大きい魔法円使うの?本番じゃなくて訓練なのに……」
「さっき獅朗ちゃんが言った通り、夜は此処下級悪魔が沢山出るんだよ。虫の悪魔とかならまだいいけど、万が一に備えて安全な場所があった方が良いでしょ?」

そうだよねぇ、やっぱりちょっと疑問に思っちゃうよねぇ。だって今回アマイモンと戦うんだから、安全地帯は絶対に確保しとかないと。皆が怪我したら大変だし。
しーちゃん達は納得してくれたけど………皆に何も起きなければ良いなぁ。出来ればこの魔法円から出ていってほしくないんだけどねぇ、燐兄がアマイモンの所に向かったら皆付いていくだろうしなぁ……特に竜君辺り。

「セレネ、運ぶの手伝って」

そうこう悩んでいる内にカレーが出来上がったようだ、お姉ちゃんが配膳を催促している。

「はーい、今行くーッ!!」

僕は綺麗に盛りつけられたカレーを配り始めた。


†††††††††††††


「「「いただきまーす!」」」
「え゙え゙〜!?旨ぇ!!マジかッ!!」
「これは…正に何処へ嫁がせても恥ずかしくない味や!若先生良かったですやん、時渉先生良いお嫁さんになれますよ!」
「ゴホッ!!もうそのネタはやめて下さ……ゲホッ!!」
「奥村君と時渉先生お料理上手やったんやねぇ」

うん、お姉ちゃん達のご飯はいつも美味しい!
しかも僕辛口食べれないから甘口と中辛混ぜてある、細かいなぁ。

「ま、まぁな!得意だからなッ!!俺とレイにかかればちょちょいのちょいだぜッ!!」
「あー久々に燐の飯食ったわ、やっぱ旨ぇな!お前の唯一の生産的な特技だからな!」
「うっ煩ぇ黙れクソ親父ッ!!」
『おかわり』
「ちょっ早ッ!!量に限りがあるんだから、もうちょっと味わおうよさっちゃんッ!!」

僕達がワイワイ楽しんでいる隣で、しーちゃんがお姉ちゃんに話しかける。

「燐楽しそうだね!」
「そうですね……」
「最近ね、燐の様子が違って見えたから少し心配してたの。でも今日は楽しそうでホッとした!」
「……しえみは、燐のことをよく見てるね」
「え……?あ、名前……」
「友達なら下の名前で良いでしょう?それと………燐のこと、これからも宜しくね」
「ッ……!!うん、分かったよレイッ!!」

……………今、しーちゃんのコミュニティが4に上がったのが見えた気がする。そして然り気無く娘の結婚を認めたお母さんみたいなこと言ってるよお姉ちゃん。

「おーいセレネ!飲み物何にするー?」
「あっ僕オレンジ100%が良いッ!!」
『俺コーラな』

お姉ちゃん達の話も気になったけど、僕らは燐兄の元へ行きジュースを取りに行った。ていうかこの登山に炭酸持ってくるって……大丈夫かな?

『うおっ開けた瞬間に溢れてきたッ!!なんだよコレ誰だよ振った奴ッ!!』
「あ、そういえば飲み物とか重い荷物は燐兄が持ってたよね」
『燐テメェ思いっきり走ってたじゃねェかァああああッ!!』
「ギャァアア殴ってくんなぁぁあああッ!!」


†††††††††††


「よーし、飯も食ったところで!今から始める訓練内容を説明するぞー!」

ご飯を食べて一段落した後、獅朗ちゃんが皆に説明をし始める。

「これからお前らには、この拠点から四方散り散りに出発し、この森の何処かにある提灯に火を点けて戻ってきてもらう。三日間の合宿期間内に提灯を点けて無事、戻ってきた奴全員に実戦任務の参加資格を与える!」
「な、なんだ…結構簡単そうじゃねぇか」
「甘くみてはいけませんよ奥村君、提灯は三つしかありませんから。置かれている場所は、拠点の中心から半径500mの先の何処かとだけ教えておきます」
「……つまり、実戦任務の資格は“3枠”しかないという事になります」
「「「3枠ッ!?」」」

あーあ、皆雪兄の言った3枠という言葉に騙されちゃってるよ。三人とは言ってないのになぁ……ちょっとさっちゃん隣で皆の反応見てニヤニヤするのやめてよ。

「続いて、先程配ったショルダーバッグの中身を説明します。三日間分の水と食糧、寝袋・タオル、ティッシュペーパー等、生活用品とコンパス、夜間移動用のハンドライト・魔除けの花火・マッチが其々一つずつ入っている筈です」
「昼間にも言ったが、この森は夜間下級悪魔の巣になっている。今のお前らの実力だと、ギリギリ切り抜けられるかどうかといったところだろう。危ないと思ったらすぐに魔除けの花火を使ってくれ、二分以内には俺かコイツらが回収に行く。
因みにマッチは一本だけだからな、つまり花火に使えば提灯に火を点けられねぇ。使う時はよく考えて使えよー」
「更に提灯は特殊に出来ていて、火を点ければ拠点からすぐ判るようになっています。拠点近くまで来てから点けた場合失格、途中で消えてしまった場合も失格、花火を使ったギブアップも勿論失格です」
「皆が自分の能力を最大限に使うことを考えるのが、クリアへの一番の近道だよ!それじゃあ皆準備してねー!」

皆が其々準備を始める中、燐兄は「なんだ結局簡単じゃねぇか」と言う。分かってないなぁ燐兄、自分にとっては一番危ない試験なのに。僕は燐兄の腕の裾を引いてしゃがむように催促し、こしょこしょ話をする。

「ちょっと燐兄、ちゃんと判ってるの?」
「は?何がだよ」
「今回はこないだの試験のようにはいかないんだよ?こんな暗い森の中で前回の様に炎出したら、一発でバレるよ」
「うぐっ……確かにそうだな」
「でも燐兄、炎無しでどうやって戦うの?がむしゃらに木刀振り回しても、悪魔には勝てないよ。」
「……………それは、」
『要は“使う時はよく考えて使え”ってことだ』
「さっちゃんッ!?いつから聞いてたの!?」
『最初から聞いてたっつーの。おい燐、今回の試験について一つだけヒントをやるよ』
「ヒント?」
『一つの言葉に惑わされるな、以上!ほら行くぞ』
「ちょっとさっちゃん引っ張らないで痛い痛いッ!!」

そう言ってさっちゃんは僕を燐兄から遠ざけ、獅朗ちゃん達の元まで引っ張られる。あんなヒントで燐兄が分かるわけないじゃん、ていうか然り気無くヒントあげるってさっちゃん………なんだかんだで息子には甘いんだね。言ったら噛まれそうだから言わないけど。

『お前あんまりアイツに炎について言うなよ』
「え、なんで?忠告しといた方が良いでしょ?」
『今聖騎士(藤本のこと)と何分後に炎出すか賭けてんだよ』
「ちょっと二人共何楽しんでんのッ!?しかも開始から数分後に出すって決め付けてるしッ!!」
「いやぁだって待ってる間暇だろ?あ、五分後に炎出したらお前イチオシのエロ本な」
『じゃあ八分後に炎出したらお前の枕裏にある巨乳ナースのエロ本な』
「お前なんで知ってんだよ、つかソレ俺のオキニッ!!」
「藤本さん、近々部屋の掃除に向かいますからね」
「お前は俺の母ちゃんかッ!!エロ本捨てようとすんなッ!!」
「ていうか僕の部屋に勝手にエロ本置かないでよッ!!一体何処に仕舞ってるのッ!?」
『お前の漫画棚と壁の隙間』
「そんな狭いスペースにッ!?「位置について、よーい」 パァアアアンッ!! あ、始まった!」

僕らが話している間に始まってしまった。
雪兄獅朗ちゃん見て「父さん……」って呆れてるよ、缶ビール飲んでる場合じゃないよ!ていうかビール持ってきてたのッ!?さっちゃんも一緒になって飲んでるしッ!!

「勤務中にお酒はやめて下さい藤本さん、いつの間に荷物に入れてたんですか」
「まぁそうキリキリすんなって、シュラみてぇに泥酔したりしねぇからよ」
『お前も飲むか?ビール』
「ちょ、やめてさっちゃん近づけないで!僕ビールの泡舐めた時から一生飲まないって決めたんだからッ!!」
「そういや7歳の頃だっけか?シュラがお前にビール飲ませたの。あっ炎出した、よっしゃ俺の勝ち」
『チッ、仕方ねェな』

燐兄炎出すの早すぎだよ……大丈夫かなぁ、折角忠告したのに。夜は未々長くなりそうだ。






「セレネと久し振りに遊びたいなぁ、どうやったら来てくれるかなぁ……」
「こらアマイモン、今回は末弟に集中しろ」
「……………」
「……チッ、聞いてないなコイツ」


To be continued…
*H27.3/30 執筆。



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