Exist to want to touch 「作戦...?」 とりあえず立ち上がっているブルックを座るように促すと、詳しく聞くことにした。 「作戦って?」 「そうですねえ。例えば、お色気作戦とかどうですか?」 「お色気...」 お色気なんて、私はナミやロビンのようにスタイルが抜群に良いわけでも無いし。 どうやって色気を出すと言うのだ。 「無理...」 「珍しく弱気なのね。」 ブルックではない、声のする方を振り返ると私達の座っていた階段の上にロビンが立っていた。いつの間に...と驚く私とブルックを見下ろすロビンはふふふ、と微笑んでいた。 「ロビン、いつから...」 「心が汚れている、あたりかしら?お昼ご飯の時間よ。サンジが呼びかけても来ないから来てみたんだけど...何か話し込んでいたから。」 面白そうだから聞き耳立ててしまったの、と微笑むロビンを見上げ、冷や汗をかいているブルックと顔を見合わせると一緒に立ち上がり私達はダイニングへと向かった。 「おせーぞお前らー!」 「ごめんごめん。」 両手にナイフとフォークを握るルフィに怒られながらテーブルに座ると同時にいただきまーす!とクルー全員で手を合わせた。 黙々と食べるクルーを見るフリをしてサンジをチラ見すると、目が合ってしまった。ドキッとする私にサンジはニコ、と微笑んできた。それに応えようと私も少しだけ口角を上げ微笑み返すと視線をすぐに逸らした。 生き地獄だ。こんなに好きなのに、そして恋人同士なのに。触れさせて貰えないなんて... だが、まるで性欲が有り余った獣のような自分が恥ずかしいと感じてしまう。 「おいおいルフィ、頬張りすぎだろお前。」 「だって美味えんだもんよ、この肉!」 声のする方を見るとウソップが肉を口いっぱいに頬張るルフィに突っ込んでいた。 確かに口に入れすぎなルフィにもう一つ言葉が飛んできた。 「本当に意地汚ねえなお前は。まるで獣だな。」 その言葉を放ったのはゾロだった。 獣という言葉に反応した私はギクリ、として思わず声を上げてしまった。 「な、なんて事言うのゾロ!獣なんて、ルフィに失礼じゃん!」 「あ?なんだお前、そんなムキになって。」 私に集まる皆の視線にしまった、と思うと名無しちゃんは優しいな〜というサンジの言葉が胸にグサッと刺さる。 まるで自分が意地汚いと言われているようでルフィを擁護しただけなのに...と私は余計に胸が痛んだ。 「やっぱり良いよ...私は今のままで十分幸せだからさ。」 アクアリウムバーでブルックとロビンに言い放った。作戦とか、純粋に私と付き合ってくれているサンジに悪い気がしてならなかった。 「良いんですか?サンジさんとあんな事やこんな事出来なくても。」 「変な言い方しないでよ...」 あんな事やこんな事か...こうゆうのって普通男性側が考える事じゃないの?と益々自分が恥ずかしくなる。 「これじゃ本当に変態だ...私。」 「あら、人間は誰しも変態よ。」 「そういう事サラッと言うよね、ロビンて。」 いっそ私は変態なのでサンジに触れたいんです!なんて主張出来たら清々しいのに。 こんな事で悩むなんて思わなかった。 「名無しはサンジの事が本当に好きなのね。」 「な、なんで?どこら辺が?」 「サンジに嫌われたくないから、悩んでしまうんでしょう?」 サンジに嫌われたくないから、か。 それは合ってるかもしれない。 でも私の心の中はサンジがどう思ってるのか、よりも私が彼に触れたいという欲求の方が強い。 「嫌われたくない...でも、やっぱり触れたいよ。もしサンジが私の気持ちを知ったら、どう思うかな...」 いつからこんな臆病になってしまったのだろう。誰かに嫌われるのがこんなに怖いだなんて、以前の私が思ったことあっただろうか。 「名無し、今ダイニングには1人しか居ないわよ。」 「え、」 数秒目を閉じてからロビンは私にそう言った。きっとダイニングの様子を確認してくれたのだろう。 「名無しさん、好きな人に触れたくないと思う男性なんて私はやっぱり居ないと思います。」 「ブルック...」 「名無しさんらしくありませんよ。サンジさんはきっと、貴女の気持ちを受け入れてくれる筈です。だって、そんな名無しさんだからサンジさんは好きになったのではないでしょうか?」 この2人はやっぱり大人だ。私が欲しい言葉をこんなにもくれて、こんなにも背中を押してくれる。 「ありがとうブルック。ロビンも本当にありがとう。私、行ってくる。」 2人にお礼を言うと私は勢いよくアクアリウムバーを後にし、彼の元へと駆け抜けた。 前へ / 次へ [しおり/もどる] ×
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