MEDIUM | ナノ



I was always by my side




「あの、これ...サンジ君に渡して貰ってもいいですか...?」

次の日の朝、下駄箱で同学年の女の子に話しかけられた。この光景には慣れているが、いつも自分で渡した方が伝わるのでは?と疑問に思う。そして私とサンジの関係性はどこまで広まっているのだろうか、と少し怖くなる。

「あの、下駄箱に入れてみたらどうですかね...?」
「サンジ君の下駄箱分からなくて...知ってますか?」

私もサンジの下駄箱の場所までは知らなかった。それではしょうがない、と受け取り郵便配達員の様にサンジに渡さなければいけないという使命が与えられた。

「こういう時に限って居ないんだよな...」

サンジのクラスの教室へ行き、見回してもその姿は無かった。
まだ登校してないのか?と思い昼休みに渡す事に決め、自分のクラスへと足を向かわせた。




「名無し!!おはよ!」
「おはよう...テンション高いね。」
「先輩からメール来たの!?」
「うん来たけど、アドレス教えたお礼のメールだけだよ。」

教室に入った途端、かなり興奮しているお友達が私を目で捉えると駆け寄ってきた。
そこからのラリーは!?と尚も迫るお友達に私が返して終わりだよ、と言うとつまらん...と明らかにテンションを下げてきた。

「まあ部活忙しそうだしね。疲れてメール所じゃないのかな。」
「そうだよ。私なんかに...」

お友達の言葉を聞きながら携帯を見ると、メールが来ていた事に気づいた。

「やば...」
「どうした?名無し。」
「来てた...」

"いきなりで申し訳ないんだが、明日の放課後って空いてるか?少し話したいことがあって。"

差出人は、エース先輩。日付を見ると昨日の夜に来たメール。
ということは、明日の放課後とは今日の放課後であって...

「どんだけ携帯見ないの!?」
「だって昨日は本読んでたから...」
「どうするどうする名無し〜!告白じゃない?そういえば、やっぱりエース先輩かなりモテるらしいよ。あんな人の彼女になったら注目の的だよね〜!」

そんな本当にいきなりだな、と思いつつ何と返事をしたら良いのか、と頭が混乱する。
目をキラキラ輝かせているお友達を他所に、取り敢えず返事が遅くなった事を謝らなければ、と焦りながら考えた。

「どうしよう、断ろうかな。」
「え、本気?」
「だって昨日初対面だったのに...」
「もう!あんたは一人の男を想い続けた末路よ!次の一歩を踏み出しなさい!」

別に想い続けてないし、それはもう諦めた事だし、と思いつつも私の頭にはいつでもアイツの顔がチラつく訳で。

「分かった!」
「よし!いいぞ名無し!」

"返事遅くなってしまって本当にすみません。今日の放課後、大丈夫です。"

気持ちを押し殺して心の奥底に沈めても、浮いてくるこの気持ちをこのまま放置していても仕方ない。
そんなの、分かり切っていたのに。

"いや大丈夫だ!ありがとう。裏庭のベンチで待ち合わせで良いか?"

了承の返事を済ませると、朝礼のベルが鳴った。




昼休み、ご飯を食べ終えた私はサンジを探すため再び彼のクラスへと足を運ぶと、ちょうど教室の廊下にサンジと同じクラスであり、中学からの友達のウソップの姿が見えた。

「ウソップ!」
「おー名無しじゃねえか。何か用か?」
「サンジいる?」
「今日休みだぜ、アイツ。熱出したってよ。お前知らなかったのか?」

休み...なんという事だ。
この手紙をいち早く渡したいというのに。

「分かった、ありがとう。」

今までだったらサンジがどこに居てどうしてるかなんて、したくなくても把握してた。
傍に居れたから。

こんなにもサンジとの距離が離れてしまったんだな、と改めて実感した。
いや、私から離れていったんだ。





放課後、報告を忘れないでよ!とお友達に釘を刺され、私は緊張しながら裏庭へ向かった。

裏庭のベンチは昼休みに使う生徒が多いが、放課後は結構閑散としていた。
いくつかある中から適当なベンチに座り先輩が来るのを待った。

待ちながら私はサンジに大丈夫?とメールしようか悩んだ。というかサンジが体調崩すなんて今まであっただろうか。
そしてこのラブレターはいつ渡せば良いだろうか。

"熱出したって聞いたけど大丈夫?あと渡したい物があるんだけど、体調良くなってからの方がいいよね?"

メールを送るだけ送っておこう。
返って来なかったら仕方ない、今度学校に来た時でも良いだろう。

前だったら同じマンションに住んでる訳で、お構い無しに家に訪ねてたな。
サンジの両親は共働きで、だから、

ということはサンジは今一人...?



「名無しちゃん!」

呼ぶ声に顔を上げるとエース先輩の姿があった。走ってきたようで少し息を切らしていた。

「先輩...」
「悪いなっ...待たせて。」
「いえ全然待ってないですよ。あの...」
「これから部活だから手短に話すな。これだけは直接言いてえと思って。」

先輩は私の隣に座ると真剣な顔になり口を開いた。
あ、やばい。胸が苦しい。

「名無しちゃんの事をもっと知りたいんだ。付き合ってほしい。」





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