7 「名無しちゃん、あの野郎に何されたんだ?」 「だから、何も...」 「じゃあ何で、」 泣いてるんだ、と言うサンジに何も言い返せなかった。 貴方が、私を忘れてしまったからだよ。 ゾロを目にしたサンジは怪訝な顔をして何も言わずにダイニングを後にする彼を見ていた。 その後目を赤くした私の顔を見てギョッとした表情へと変わり、私の元へ駆け寄ると大きな声を上げた。 「あの野郎、許さねえ...!」 私は今にもゾロを追いかけてしまいそうなサンジの袖を掴むと振り返った彼に息を呑むと問いかけた。 「あー...えっと、」 「...」 「私ね、」 貴方が好き、その一言が出てこない。 真面目な表情で見つめるサンジから視線を外し、俯く。 「...ゾロと喧嘩して欲しくないなあ。」 頑張って笑顔を作りもう一度サンジの顔を見上げると、サンジは視線を床に伏せた。 「名無しちゃん、」 「ごめんね。でもゾロは水飲みに来ただけだら、本当に。」 この張り詰めた空気が苦しくて、残りの雑炊とゼリーを少し急ぎ足で食べ始める。 美味しい、とサンジを見ると切ない顔をしていた。 そんな顔して欲しくない。 ただ、もう一度私の事を好きになって欲しいだけ。 静けさに包まれる中ご馳走さま、と言うと何も言わないでいたサンジが口を開いた。 「...そのままにしておいてくれ。俺が片付けるから。」 「あ...ありがとうね、サンジ...」 ダイニングを出ると、止まりかけていた涙がまた溢れ出す。 いつからこんな泣き虫になってしまったの。 サンジの事を想うだけで、やっぱり無限に泣ける気がする。 今日で2度目に見る自分の顔の酷さにびっくりする。 洗面所の鏡を見ながら泣きすぎ、と自分に言い聞かせるとなんて滑稽なんだろうと情けなくなる。 だがあの流れで好きなんて言わなくて良かった、と少しだけホッと胸を撫で下ろす。 それよりもゾロを巻き込んでしまった事と最後のサンジの態度が少し気になった。 もしかして、気分を害してしまうようなこと言ってしまっただろうか。 取り敢えず先程迷惑をかけてしまったゾロの元へ向かう事にした。 「ちょうど良かった!名無し、お前も入れ!」 「...嫌だよ。」 「良いじゃねえかよ!早く!俺達のチームな!というかお前目腫れてるぞ、どうした?」 おそらくゾロが居るであろう展望室に向かう途中、甲板で遊ぶ男共に捕まってしまった。ドッジボールをするのに人数が足りないからと強制的にルフィが声を掛けてきた。 目の事を指摘するルフィにうるさい、と返すとじゃあ始めるぞー!とルフィ、ブルック、私チームとウソップ、チョッパー、フランキーチームに別れてドッジボールが開始された。 何だかんだ気が紛れて良いかもしれない、と私は結構夢中になってしまって。 いつの間にか私は声を上げるほど笑っていた。 ルフィ達が誘ってくれなかったら、ずっと泣いていただろうな。 ( 沢山の涙は貴方を思うほど溢れ出す ) 前へ / 次へ [しおり/もどる] ×
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