10 「くそー!何で当たらねえんだ!」 「ルフィ、お前ドッジボール向いてねえよ。」 朝食を終えた私達は昨日に引き続きドッジボールを再開した。 あまり上手とは言えないルフィの投球にウソップが思っている事を口に出した。 その言葉に昨日の宣言通り観戦しているロビンがふふ、と笑う。 ゾロは補欠要員で強制的に引っ張り出されたが、不寝番だった為かロビンの横で爆睡している。 「なんだと!そんな訳ねえだろ!」 そう言いながらルフィが投げたボールをフランキーがキャッチする。 「スーーパーーーキャーーッチ!」 「いいぞフランキー!」 どこがスーパーなのか...と考えているとブルックが名無しさん!と私の名前を叫んだ。 「え、?ッッブフ!!!」 フランキーの投げたボールが見事に私の顔面に直撃した。 「うお!!悪い!!!」 「っ...大丈夫、大したことないから...」 「でも名無し、鼻血出てるぞー!!!」 謝るフランキーに返事するとチョッパーが顔を青くして医者ー!!!と叫んだ。 「医者はお前だ!」 「は!そうか!名無し!医務室行こう!」 「本当大丈夫だから続けて!ほら、ゾロ起きて!!ちょっと抜ける!」 せっかくの楽しい時間を中断させたくなくて、鼻を抑えつつ寝ているゾロの頭をペシペシと叩いて起こすとその場から離れた。 思わず飛び込んだダイニングにしまった、と思うと同時にいい匂いが漂う部屋を見渡すとナミがテーブルに座っておりサンジが居ないことに気づき安心する。 「あんたどうしたの、それ。」 「ちょっとボールに当たって...」 ティッシュを数枚手に取り鼻を抑えると、すでに止まりかけている鼻血にやっぱり中断させなくて良かった、と改めて思った。 いつも居るはずのここの主は食料庫かトイレか、いずれにせよすぐに戻ってきてしまうかも。 この匂いはきっとお昼ご飯の匂いだ。 「サンジは...?」 「さあ、そういえばどこ行ったのかしら。」 「そっか、じゃあねナミ。」 もう大丈夫なの?と言うナミに大丈夫!と返し、そそくさと立ち上がり扉へ向かうとドアノブに手をかけそれを開くと今はあまり会いたくない人物が立っていた。 「あ...サンジ...」 「名無しちゃん...?それ...」 私の鼻に当てられたティッシュとそれに少し染みた血を目にしたサンジは眉間に皺を寄せ、私から踵を返すと甲板へ向かった。 嫌な予感がして私はその後を追った。 「おいお前ら!!何で名無しちゃんが血流してんだ!!」 「ちょっ、サンジ、少し鼻血が出ただけだから...」 「名無しちゃん、だからこいつらに無理に付き合うなって言ったんだ!」 甲板へ出て案の定ドッジボールをしているクルーに向かって怒鳴るサンジの後ろから声を掛けると、勢い良く振り返った彼の顔はあまり見たことが無いほど怒りに満ちていた。 「...なんでそんなに怒るの...?」 「怪我して欲しくないからに決まってるだろうが!俺は名無しちゃんに一滴でも血なんか流して欲しくねえんだよ!」 これがサンジの彼女の立場だったらとても嬉しい言葉だった。だが、これは世界中の女性に対する思いなのだろう。 その事に悲しみと少しの苛立ちが私の中に芽生える。 「...別にサンジにそんな心配して貰う筋合い無いよ。」 ぶっきらぼうに告げるとサンジの横を通り過ぎ、ルフィ達の元へと向かった。 ( 同じ気持ちじゃ、無いくせに ) 前へ / 次へ [しおり/もどる] ×
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