I'm jealous of my love with you 知ってた、あの人にとって特別な女性なんて居ないってこと。 知ってた、あの人を好きになるって事は大変だってこと。 「んナミすわあ〜〜〜ん!デザートお持ちしました〜!!」 「ありがとう、サンジくん。」 どういたしまして〜!と目をハートにするサンジを目にしながらもう何度目か分からない溜め息を漏らした。それに笑うロビンにはっ、として口元を抑えると笑わないでよ、と言うと笑みを浮かべたままごめんなさい、と返される。 「大変な恋愛をしてますって感じね。」 「その通りですよ〜。」 「お名前はサンジの"ああいう"所を好きになったんじゃないの?」 「そうだけど、」 そう、私はサンジの"ああいう"所も含めてあの人を好きになったのだ。女性皆に優しくて、紳士で、王子様みたいな所。 でもそれが私だけに対してだけだったら、なんて叶わない願い。 「告白してみたら?」 「いや良いの。私は今のままで。皆に優しいサンジが好きなのだから…」 「そう。」 この人絶対面倒臭いと思ってるな、と少し素っ気ないロビンに寂しくなったが私自身もこんな自分が面倒臭いと思ってる。 女である以上勿論私にも彼はとても優しいのだが。百歩譲ってあの人の恋人になれたとしたら、他の女にそんな優しくしないでよ!ぐらい言えるのに。ロビンの言うように告白してみよう、という勇気も無い。なんて面倒臭い女だ。 「んロビンちゅわあ〜〜〜ん!!んお名前ちゅわあ〜〜〜ん!!デザートお持ちしました〜!!」 「ありがとう、サンジ。」 「ありがとう…サンジ。」 「どういたしまして〜!!ってあれ?お名前ちゃん何かあったか?」 「えっ!!??」 目がハートだった筈のサンジの顔が急に真面目な顔になり、それが私に向けられた事に驚き心の中を悟られたのか?と心臓が口から出てきてしまいそうなになった。 「い、いや何も?」 「元気無さそうだったからよ。」 「大丈夫大丈夫!元気だよ!」 「そうか、それなら良かった。」 俺特製のチーズケーキ食ったらもっと元気になるから〜!と言い残して去っていく背中を見送り隣のロビンに視線を送るとその瞳は憐れみに満ちていた。 「やられた…」 「やられたわね。」 「クソー…」 可哀想に、と言いながらチーズケーキをモグモグ食べるロビンの感情がいよいよ良く分からなくなってきた。 その優しさは本当に残酷だよ、サンジ。 明日は大きな街がある島に着くという話をしながら女部屋でダラダラする私とは違いナミは洋服の整理をし、ロビンは読書をしていた。 「2人は明日どうする?私はショッピングするけど。」 「私は本屋さんに行く予定。」 「ロビンもいつも通りね。お名前は?」 「ん〜、どうしようかなあ。特に欲しいもの無いしなあ。」 「へー珍しい。」 「船番でもしてようかな。停泊するの明日だけじゃないでしょ?」 1週間は居ると思うけど、と言うナミにじゃあやっぱり船番してる、と返すと夕飯だぞー!という意中の彼の声が聞こえてきた。 それを耳にしただけで結構セクシーな声してるんだよな、とこんなに彼の事を思う私は重症だと自改めて覚する。 「じゃあ船番はゾロとお名前ね。よろしく。」 「ああ。」 「はーい。」 夕飯時、明日島に着いたら何処に行こうかと賑やかなクルー達の声をバックにナミに船の安全を託された私はいつもの如く美味しい彼の料理を頬張りながらゾロと仲良く返事した。 どうせ2人で船番といってもゾロは寝てるか筋トレするかの2択だろうし何しようかな、と考えているとキッチンから声がした。 「え!?ナミさん今何て!?」 「え、何が?」 「船番…マリモ野郎とお名前ちゃんって言ったか?」 「言ったけど?」 いきなりのサンジの登場に飲んでいた水を吹き出しそうになりながら彼が何故そんな事を確かめに来たのか分からずドキドキしながら口元を抑えた。 「どうしてだ?お名前ちゃん、島に出ねえのか?」 「え?あー、いや、欲しいものとか無いし…たまにはと思って。」 「そう、なのか。」 何故そんなに問うてくるのか、もしかして買い物に誘ってくれたりする?という淡い期待をバッサリ切り裂くようにサンジはそのままキッチンへと戻っていった。 ちくしょう、何なんだ。期待させやがって。 サンジは少しも悪くないのに私は勝手に拗ねながらパンを口いっぱいに頬張った。 「ナミさん、ロビンちゃん、やっぱり買い物ご一緒しようか?君達だけで歩くのは心配だ…!」 「大丈夫よ、ありがとうサンジ。」 「私も大丈夫よー、荷物持ちでルフィ連れてくから。」 「おいナミ!俺はな今日な、」 「アンタこの前私の海図汚したの忘れたの…?」 「……」 次の日の朝から私の機嫌は最悪だった。 サンジはこうしていつも心配だと言って女性クルーについて行こうかと提案する。そりゃ前に私も言われた事あるけど、大量の食材の買い物をしなくてはならない彼に着いてきて、と言えた試しは無い。 でも今回船番の私は対象外な訳で。また勝手にその会話を聞いてはイラついてしまう。 自分で船番するって言っておいて本当に面倒臭いな。だんだん自分が嫌になる。 今日は何も考えずにゾロみたいに日向ぼっこしながら寝てようかな。 「行ってらっしゃーい。」 街へと向かう一行を船の上から見送ると既に寝ているゾロを一瞥した後芝生甲板に寝っ転がってみた。空をこんなゆっくり眺めた事があっただろうか。 浮かぶ雲がまるでサンジの煙草の煙みたいだな、とかあの雲の形サンジの眉毛みたいだな、とか… 「あーもう!」 今日は何も考えない日にするつもりだったのに。何故こんなにあの人の事を考えてしまうのか、そんなの分かってる。好きだからだ。 この想いを伝えられたら楽になるのだろうか。 そんな事を考えてぼーっとしていると突然聞こえてきた足音に、私は飛び跳ねるようにして起き上がり身構えた。 「誰!?」 「あ、」 「え、サンジ…」 これは幻?夢の中?私の目の前に立っているのは確かに今さっき考えていた人物で。 当の本人はあー、と後頭部に手をやりながら何か言いたげな様子。 「どうしたのサンジ…忘れ物?」 「えっ!あーいや、その、やっぱり心配になっちまって。」 「…何が?」 「お名前ちゃんが。」 私が?どうして?ゾロも居るのに。 というか荷物持ちで連れて行ったウソップとブルックはどうしたの?と聞きたいことは沢山あるけれど私の事を心配してくれているというサンジの言葉に胸が高鳴ってしまう。 「そんな…大丈夫だよ。ゾロも居るし。」 「あー、まあそうなんだけどよ。」 「サンジ?」 「お名前ちゃんが嫌じゃなければなんだが…街行かねえか?」 「え、」 もしかして、これってデート? いやいや早まるな私。ただの食材の買い物の荷物持ちかもしれない。ウソップとブルックだけじゃやっぱり持ちきれないぐらい食材が必要とかそういう理由があるに決まってる。 それくらいの心構えで居ないと、と自分に言い聞かせてもサンジの隣をこうして歩くのは初めての事で心臓が煩くて仕方ない。 歩く度にサンジの煙草の匂いが鼻を掠めてその度に心臓が爆発しそうになる。 「ねえ、」 「あのよ、」 こんな時だからこそ何か話さなきゃ、と発した声はサンジのものと重なってお互いに固まってしまい、謝るとお互いに続きを促す。いやいや本当大した内容じゃないから、と私がなかなか折れない所為でサンジから続きの言葉を連ねた。 「やっぱり何かあったろ、お名前ちゃん?」 「え、何のことか、分からない。」 「お名前ちゃん、そういつまでも誤魔化せるモンじゃ…」 「あのー、すみません。」 道端で立ち止まってお互いに向かい合う私達の間に入るように可愛らしい声が耳に入る。声の主の方を見てみると容姿も可愛らしい私と同い年位であろう女の子が立っていた。 「ここら辺に本屋さんってありますか?」 私よりも背が低いその女の子は上目遣いで私達を見上げており、嫌な予感がすると同時に向かいに立つサンジの顔をチラりと見てみると見事に目がハートになっていた。 予感的中と言わんばかりに私に向けていたサンジの体は女の子に向けられていた。 「こ、これは!お困りですか可愛いお嬢さん〜!俺で宜しければご一緒に…あっ!お名前ちゃん!?」 もう、諦めよう。あの人はああいう人なんだから。もうそんなの何度も目の当たりにしてきたじゃない。それなのに何を期待して来たの私は。断って船に居れば良かった。 「お名前ちゃん!!」 少し歩いた所で私の名前を呼ぶ声が聞こえた途端に掴まれる腕に、振り返るもんかと振りほどこうとしたがそれはこの人には通用しなかった。 「…放して。」 「お名前ちゃん、」 「放してよ、船に戻る。」 「悪い、本当に俺は、」 「サンジの良い所だと思うよ。あの女の子助けてあげなよ。」 「こっち向いてくれ。」 「嫌。」 別に私は恋人でも無い。怒る筋合いなんて無いんだから、私なんて放っておいて。そしたら諦めるから。 「俺の方向いてくれるまで離さねえ。」 「っ、勝手なこと言わないでよ…何がしたいの、」 「本当に、俺の思い上がりだったら悪い。もしかしてよ…お名前ちゃん、嫉妬してくれてたり、」 「なっ!」 先程までの意思は何処へやら、サンジの言葉に思わず振り返ってしまった私は今日まともに見た彼の顔から目が離せなかった。その目が私の予想に反して至って真剣だったから、心臓が跳ねた。 その視線に居た堪れなくなり、口から出たのは絶対に言葉にするもんかと決めていた事で。 「そう、だよ…だって、好きなんだもん、サンジが。優しいサンジは大好きだけど、私以外の女の子に優しくするサンジを見ると、」 「もう、いい。」 掴まれていた腕を引かれるとそのままサンジ胸の中へと誘われる。咄嗟に掴んだジャケットからは煙草の匂いがして、頭がくらくらする。そして自分がとんでもないことを口走ってしまった事に後悔する暇も無く頭の上から降ってくる言葉は私の心臓を鷲掴みにした。 「俺も、好きだ。そんな君が、どうしようもねえくらい。」 「…うそ。」 「嘘じゃねえよ。」 「女の子皆に言ってるくせに。」 天邪鬼な私が顔を出す。ずるい、私ばかりがサンジに翻弄されて、こうして抱き締められている今も身体を引き離そうとしてもこの人は私が本気で離れようとしてると思って無いんだ。 「お名前ちゃん、もう一度言う。いや君が望むなら何度でも言ってやる。俺はお名前ちゃんが好きだ。…こんな事、他の子に言ったこと無えよ?」 「…ずるい。」 これからも私の心はこの人の他の女性に対する態度に狂うくらい嫉妬しては、そんなの忘れてしまうくらい彼の優しさと愛しさで支配されてしまうんだろう。 「私も…好き。」 「はー、やっとくっついた。でも私とロビンが通りかからなかったらサンジくんあの女の子の事どうしてたのかしら。」 「さあ、運も実力の内ね。」 「サンジくんに1つ貸しね。」 「あらそれは大変。」 ─── なゆた様へ この度はリクエスト誠にありがとうございます!! リクエスト内容、ナミさんや街の女性たちに優しくするサンジくんにヤキモチを妬く女の子で切なさも織り込んでという事でしたが少し(いやかなり)微妙になっしまい申し訳ありません…! サンジくんに恋するのに嫉妬は付き物ですね!!笑 満足頂ける物になっているかは分かりませんが、このお話をなゆた様に捧げます! 改めましてこの度はリクエストありがとうございました!! 前へ / 次へ [しおり/もどる] ×
|