10万hit記念フリーリクエスト企画 | ナノ



The proof of love is a misunderstanding



このお話はSHORTにございます、勘違いされちゃう女の子のその後のお話です。





あの日から私とサンジの関係は"ただの"仲間から"恋人同士の"仲間へと変わり、そのきっかけをくれたゾロとチョッパーに密かに感謝している。

始まりは勘違いからだったが、あれから私達の関係は順調に確実に愛を育んでいるカップルの筈だったのに私は懲りずにまたもやらかしてしまうとは思っても居なかった。



「痒い…」

ある朝目覚めると首筋に感じた痒みから無意識にその部位を掻きむしってしまう。恐らく蚊の部類だろう、ぷくりと膨らんだそこを暫く摩って洗面所へ向かった。

結構赤くなっちゃったな、と鏡で確認すると見事に紅に染まった首筋。それでも髪を下ろせば隠れる為少し放っておけば炎症も鎮まるだろうと朝飯だぞー!という愛しの彼の声を耳にしながら、あまり気に留めなかった。




ダイニングへ向かい、いつもの様にクルー全員で朝食を食べ他愛の無い話で盛り上が1日が始まる。前と違うのは私の視線がキッチンの方へ向く回数が増えたこと。

あの一件から私とサンジの関係がクルーに知れ渡りルフィとチョッパー以外は私達が交際している事を承知済みな為、堂々と彼に視線を送ることが出来る。それでも目が合いそうになれば目を逸らしてその度にナミやウソップに見すぎ見すぎ、と突っ込まれてしまう。
そんな日々が幸せ過ぎて本当に夢のように感じる。私はあの人の彼女なんだ、と胸が未だにときめく。


恋愛にうつつを抜かすのも良いがやはり海賊をやっている手前、一応私も戦闘要員の1人であって以前同様トレーニングを怠らないようにしている。

しかし展望室兼ジムにある鉄棒を見る度にあの日の事を思い出しては此処でサンジに想いを伝えた時の事が頭の中でリピートされ、鼓動が速くなる。集中しなきゃ、と自分に喝を入れて下ろしていた髪を高く結びスッキリした所でトレーニングを再開した。




「サンジー、お水ちょうだい。」

思ったよりトレーニングに没頭してしまい気づいた時に感じた喉の乾きに彼に会いに行ける口実が出来たな、とそんなの堂々と会いに行けば良いものを、とクルーに言われそだが私に会いたいから会いにきちゃった、なんて言える度胸などまだ持ち合わせて居ない。

水分補給をするべくキッチンへ向かいダイニングに入ると彼の名を呼ぶ。料理の最中だった彼は振り返り優しい笑顔で私の名前を呼んでくれ、それだけで幸せすぎてニヤけそうになる口を噛み締める。


「随分頑張ったみてえだな。しかし…汗が滴る君もそそるなあ。」
「もー、何言ってんの。」

ちょっと待っててな、とグラスに水を注ぐ彼をカウンター越しに見つめる。
前までは触れたくて触れたくて、でもそんなの叶わないと思っていた綺麗なのに男らしい手。長く細いのに筋肉や血管が浮き出る腕。
今ではいつでもソレに触れることが出来るのは紛れもない恋人としての特権。
そんな事を考えてまた鼓動が速くなり顔に熱が集まる。


「(変態すぎじゃん、私…)」

首に掛けていたタオルで頬を抑える私にどうした?とグラスを差し出すサンジにえ!?と裏返った声を出してしまい直ぐに何でもないよ、と誤魔化しグラスを受け取る。


「もうすぐ昼飯だからな。」
「うん、分かった。」
「お名前ちゃん。」
「ん?」

名前を呼ばれ何か用かと水を飲みながら彼の方へ視線をやると両手を広げたサンジ。
それが何を意味しているかは直ぐに分かった。持っていたグラスをカウンターの上に置くとゆっくりキッチンの方へ回り込んでそんな彼の前まで辿り着く。


「い、今汗…かいてるから、」
「構わねえよ。むしろ大歓迎だ。」

そんな事でサンジが拒否するなんてこれっぽっちも思ってないのに保険をかけてしまうのはもう癖になっている。その保険に対して欲しい言葉をくれる彼に堪らずその広い胸の中へ飛び込む。
今度は私の番だ、と胸板に押し当てていた顔を上げサンジを見上げると他のクルーの前では見せない優しさと色気が同時に滲み出る表情で私を見下ろす王子様。


「サンジ、」
「あー、ちゃんと言ってくれねえと分からねえよ?」
「意地悪…」
「仕方ねえな〜」

そう言って一瞬表情が緩むも、私の顎を持ち上げて色っぽい表情に戻り顔を傾けるサンジに少しずつ瞼を閉じると唇に感じる柔らかい彼の唇の感触。以前はゾロに見つかり未遂に終わってしまったのに今ではこんなに自然にする事が出来る。
私の鼓動の速さがバレていませんようにと願いながらサンジのエプロンを握りしめた。





昼飯の合図に一斉にダイニングに集まるクルーを見ながらつい先程まで此処でサンジとキスしていた事を思い出すとまた熱を持ち始める顔。日を重ねる毎に寿命縮んでるのでは無いかと思うくらいだ。


「おいお名前、お前顏赤けえぞ?大丈夫か?」
「え!?だ、大丈夫だよ!?」
「おいルフィ、あまり触れてやるな。お前には分からねえだろうがよ。嬢ちゃんの首に跡があるって事は…」

ルフィの質問に心臓が飛び出るかと思ったが、そのルフィを諭すフランキーの言葉に心臓が止まってしまうかと思った。
跡…?跡って何だろう、とフランキーを見るとその隣のウソップとブルック3人でニヤニヤしながら此方を見てくる。


「とぼけんなって〜。おいサンジぃ、お前せめて見えない場所にしとけよっ!」
「いやー!お熱いですねー!!私までドキドキしてしまいます!あ、私ドキドキする心臓無いんですけどー!!」

ウソップとブルックの言葉に私は理解が出来ず取り敢えず首元を抑える事しか出来ずに居ると黙って聞いていたゾロが言葉を発した。


「おい辞めろ、お前ら。」

そうよ辞めなさい、とゾロに続いてナミも3人を制止してくれ取り敢えず先程使っていたタオルを巻いておこうと手に掛けた瞬間思い出した今朝の事。
跡って虫刺されの跡の事?もしかして、もしかしなくてもこの人達何か勘違いしてないか…!?と誤解を解こうとしたと同時に早く飯食おうぜー!?と騒ぎ出したルフィに他のクルーも続いていただきまーす、と手を合わせて食事を始めてしまう光景にただただ固まるしか無かった。




食事を終えるとクルー達が食器を片付けそさくさと逃げるようにダイニングを後にしていることに気がつく。
ルフィはじっと出来ない性分なので食後直ぐに甲板へ出るのはいつもの事だが他の皆は暫くダイニングでゆっくりするクルーも居るのだけれど、その理由はこのピリピリとした空間にあるのだろう。
最後にダイニングの扉を手にしたロビンは私の視線に気付いていたのか意味深にニッコリ笑ってから出ていった。

私とサンジ2人きりになったダイニングは静まり返っていて私も食器を片付けなきゃ、と立ち上がってキッチンへ運ぶと何故か此方を一切見てくれないサンジ。
唯ならぬ空気に耐えきれずサンジ、と名前を呼ぶとフーと煙を吐き、少し間を置いてから何だ?と聞き返される。
此方を見もしない彼の、その声に冷たさを感じ胸が締め付けられる。


「…何でもない、ご馳走さま。」






皆に勘違いされた時、サンジに食器を渡す時、本当の訳を話す機会なんて幾らでもあったのに。冷たい態度のサンジに私は逃げるように展望室へ戻ってきてしまった。

前にゾロと勘違いされたあの時みたいだ。
違うのは私の感情。あの時はサンジは私の事なんて何とも思ってないだろうな、という諦め。今はサンジに嫌われてしまったのだろうか、という絶望感。

どうしよう、あんなサンジ見た事ない。
鼻の奥がつん、と痛くなり視界がぼやける。
首元に巻いたタオルを取り目に溜まった涙を拭う。



「お名前ちゃん。」

私を呼ぶ声に振り返ると此方を見るサンジがデジャヴのように感じ更に涙が溢れてくる。

「サンジ、」

私が泣いている事に気が付いた様子のサンジは罰が悪そうに唇を噛み締めたあとゆっくり近づいてくる。そんな彼に何と声を掛けたら良いか分からず、視線を床へ落とす。
それでもサンジの気を悪くした事に謝らなきゃ、と口を開いた。


「…ごめんなさい。」
「…そりゃ、どういう意味だ?」
「その、サンジの気を、悪くしたから、」

その言葉にはあ、と溜息混じりの息を吐きながら歩いてきたサンジは目の前まで来るとポケットに入れていた手を私の頬へ添え、そのまま顔を上げさせた。そして顔を近づけてくるサンジに思わず瞼をぎゅっと閉じる。

しかし何のアクションも起こしてこない彼にゆっくり目を開けると私の首元を覗き込んでいる様子のサンジ。


「な、に?」
「これ、どうしたんだ?」
「え?」

つん、と指で触れられた部分はまさに今朝掻きむしっていた場所で、恐らく皆はこれをサンジからされたキスマークだと勘違いしたのたろう。


「あ…これは、その、蚊に刺されたみたいで…朝掻きむしっちゃったの。だから、」
「………はーーー。」

事実を話せた安堵を感じながら、空気が抜けていくように息を吐き出しながら蹲るサンジに驚き、だ、大丈夫…?としゃがんで顔を覗き込むが両手で顔を覆ってしまって表情が見えない。
目が顕になっている側を覆う手を退けるようにその手を掴むと切なそうな瞳が顔を出す。それと同時に長い腕が伸びてきて私は床に組み敷かれた。


「さ、サンジ、?」

私の両手を抑えながら見下ろしてくるサンジの顔はやっぱり色っぽくて、こんなシチュエーションになった今あの時のサンジの言葉を思い出す。


"悪いが今度は俺がお名前ちゃんの事襲っちまいそうだ"


サンジに襲われるなら本望だ。彼になら何をされても構わない。こんな事思う私は完全に彼に溺れてしまっているんだと改めて思う。

そしてだんだん近づいてくる顔に再び瞼を閉じると彼の存在を感じたのは唇では無く首筋だった。その行為に驚いて目を見開くと頬に感じるサンジのサラサラした髪の毛と首元に吸い付く唇。


「…サン、ジ、…っ、ん、」

吸い付く唇の感触の後に襲ってきたのは首筋を舐め上げる舌の感触。擽っいのに少し官能的な行為に戸惑ってしまう。


「…っ、サン、いや…っ、」
「嫌なのか?」

そう問いかけるサンジの声に背筋がゾク、とする。嫌な訳が無い、サンジだって本当に私が嫌がってるなんて思ってない。本当に私が嫌がっていたら彼は直ぐにこの行為を止める筈。
問いかけに答えない私の首筋に再び唇を寄せたサンジは、今度は吸血鬼のように少し歯を立てて甘噛みしてきた。突然の事に、わっ…と色気の無い声を出すとゆっくり私から離れるサンジの表情は何処か満足気で。


「な…に、してんの、」
「…まずいな。」
「えっ!?…不味いの…、?」
「ああ。」

首筋に不味いも美味いもあるのか、とショックを受け動けなくなった私の上半身を起き上がらせるとサンジは耳元で呟いた。


「これ以上続けると止められなくなっちまう。そりゃ、流石にまずいだろ?」
「っ、…」
「にしても、君は何度俺にこんなヤキモチ妬かせりゃあ気が済むのかな?」
「だって、あれはフランキー達が勝手に…!」
「…まあそうだな。だが、これでもうアイツらの勘違いじゃ無くなったな。」
「え、…まさか、」
「ああ、くっきり付いた。」

にっ、と笑顔で言うサンジに何してんのよー!!と怒る私に尚も笑顔で悪い悪い、と頭を撫でる彼にキュン、としてしまう私はやっぱりこの人には敵わないんだと思い知る。

そして見せつけてあげよう、これが貴方に愛されている印というならば。





「いや、ちょっと待てよ…?」
「え、何?どうしたの、」
「お名前ちゃんの血を吸った蚊を許す訳にはいかねえ!!!」
「(何言ってんのこの人…)」



────
さくら様へ
大変お待たせ致しました…!!
今回のリクエスト内容、勘違いされちゃう女の子の続きということで書かせて頂きました!今回も勘違いハプニング発生させるか迷った末ただただサンジがヤキモチ妬く感じになってしまいました、すみません…!
満足頂ける物になっているかは分かりませんが、このお話をさくら様に捧げます!
改めましてこの度はリクエストありがとうございました!!


前へ / 次へ

[しおり/もどる]



×