PAST CLAP | ナノ



7th





「食べ終わるまで見てるからな。」
「......」
「食べ物を粗末にするのは
例えレディであっても俺は見過ごせねえ。」

カウンター越しで食器を洗う
サンジの口から言い放たれる。

「...誰にでも好き嫌いはあるでしょ。」
「俺の料理した物でも食べれねえのか?」
「だって、明らかにこれピーマンじゃん。」

はあ、とため息をつくサンジに
私の口は更に固く閉じられる。

「1回だけ食ってみてくれねえか?
それでも食えなさそうなら
他の方法で調理してみる。」
「...」
「ダメか?」
「......食べれたら何かご褒美くれる?」

ご褒美?と目を丸くするサンジの目を
じっ、と見つめ返す。

「プリンセスは何がお望みで?」
「...サンジ、」
「ん?」
「サンジから愛のハグ。」

私のその言葉を聞いたサンジは
更に目を丸くし、
次第に顔を真っ赤にさせながら
手にしていたお皿を
落としそうになっていた。

「そ、それ、俺へのご褒美じゃねえか?」
「私へのご褒美です。」
「お、俺の事、好きなの?」
「気づくの遅い。」

口を開けて動きが止まってしまった
サンジを他所に
私はお皿の上の緑のソレを
バババっ、と口に含んだ。

「あれ!?美味しい...サンジ、食べれた!」
「え!?」
「ハグください。」
「あ、あ、あ、あの...」
「やっぱりもういいや。」

じゃ、と椅子から立ち上がると
私はそさくさと出口に向かった。

後ろでサンジが私の名前を呼ぶ声を背に、
私は足を止めようとはしなかった。

きっとあなた以上に今の私の顔は赤いから。






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