PAST CLAP | ナノ



6th





私はいつも眠い。今も眠い。
朝ご飯を食べ終えた私は
いつもこうしてダイニングの
テーブルに突っ伏して寝てしまう。
それはお決まりの光景になっていて。

食器を洗い終えたサンジがこちらに
歩いてくる足音が聞こえる。

「ベッドで寝たらどうだい?」
「うん...」
「体痛くなっちまうだろ?」
「んー...」

これも私とサンジのお決まりの会話。
いつも声を掛けてくれるのを
密かに楽しみにしている自分が居る。
少しずつ迫ってくる睡魔と戦いながら
優しい彼の声に耳を傾ける。

「そこの方が寝心地良いのか?」
「うん...」

寝心地というか、
此処はあなたとの距離が近いから。
目を覚ましたらすぐ、
あなたの姿を瞳に映すことが出来るから。

そうか...と小さく漏らすサンジに
呆れられたかな、と少し焦る。

テーブルを挟んだ向かいに
立っているであろうサンジの足音が
再び聞こえてくる。
その足音はテーブルをぐるりと回って
私の傍で止まった。

どうしたんだろう、と
尚もテーブルに突っ伏す私に
サンジはまた声を掛けてきた。

「此処で寝る理由でもあったりするのか?」
「んー...?」
「例えば、そうだな...
俺の近くに居れるとかか?」

その言葉にバッ!と顔を上げると
煙草を指に挟みながら
此方を見下ろすサンジが目に入る。

「当たりか?」
「...あたり、です。」
「じゃあこれからも
此処以外で寝るの禁止だな。」

にっ、と微笑みながら言うサンジに
眠気は見事に吹っ飛んだ。






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