PAST CLAP | ナノ



12th





デザートに出したプリンアラモードを
食べ終えた彼女は
テーブルに肘を付きながら
さくらんぼのヘタを眺めている。
そんな様子を食器を拭きながら
横目で見やると突然彼女の口が開いた。

「ねえサンジ。」
「どうした?」
「さくらんぼのヘタを口の中で結べる人は
キスが上手いんだって。」
「えっ!?」

彼女の口から発せられた言葉に
思わず皿を落としそうになった。
そんな俺を他所に手にしていたヘタを
口に入れると唇を結び
モゴモゴとヘタと格闘する彼女を
凝視してしまう。

口の動きを止めた彼女はニヤリと
口角を上げると舌を出すと
その上には見事に結ばれた
さくらんぼのヘタが乗っていた。

「私、キス上手いみたい。」
「あ、ああ、そう…みてえだ、な。」
「…試してみる?」
「へ!!!??」

今日2度目の驚きの声を上げる俺に
悪戯に笑う彼女は
なーんてね、と言って立ち上がると
空になった器を俺の元へ持ってきて
ご馳走様でした、とダイニングを後にした。

彼女に翻弄された事と
鳴り止まない心臓に
俺はただただ頭を抱えるしか無かった。


「クソ…敵わねえなあ。」

俺はこれからも
そんな君に堕ちていくんだろう。






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