PAST CLAP | ナノ



10th





「好き、嫌い、あむ、好き、」
「……あんた何してんの?」

問いかけられた言葉に
動かしていた手を止め顔をあげると
明らかに呆れた眼差しを私に向けるナミ。

「何って、ナミがくれた蜜柑食べてるよ。」
「そんな事分かってるっての!
食べながら何モゴモゴ言ってんのかって
聞いてんのよっ!」

私とナミのやり取りに微笑みながら
蜜柑の皮を綺麗な手で綺麗に剥くロビン。
怒り口調で私に声を上げながら
蜜柑を口に運ぶナミ。

連日の降雪により雪まみれになった
甲板の雪かきを男性クルーに任せ
蜜柑食べない?というナミからの
お誘いにより女性クルーだけで
ダイニングでテーブルを囲んで
その美味しいナミの蜜柑を
食べていた時だった。
私はふと思いついた事をしてみようと
始めてみたは良いが無我夢中になってしまい
心の中で唱えていたソレはいつの間にか
口に出てしまっていたらしい。

「あ、えっと、花占いならぬ蜜柑占い!」
「まったく…本当にアンタのする事は
理解出来ないわ。」
「えー、なんでよー。」
「なんでも。
というか蜜柑で遊ぶのやめなさい。」
「ちゃんと味わってるよ!すごいおいしい!」
「当たり前でしょー?」

少し嬉しそうなナミに私も嬉しくなり
ニコ、と笑みが零れる。
そんな私に次は静かに蜜柑を食べていた
ロビンが問いかける。

「それで?占いの結果は?」
「結果?…あー!ナミが話しかけるから
分かんなくなっちゃったじゃん!」
「私のせいにしないで。」
「好き、で止まってたわよ?」
「本当!?じゃあ次はきら…い。」

ロビンが教えてくれた通りに
そう口にしながら私は手元にある
蜜柑を手に取ろうとしたのだが。

皮の中を覗くと残された
蜜柑の欠片は残り1つ。
という事は、占いの結果は…

「嫌い…」
「あーらら。」
「そんな…」
「あら、占っていた相手が来たんじゃない?」

占いと言えどその結果に涙目になる
私にナミは何処か悪戯な表情、
そしてロビンの言う通り
私が今まさに占いながら想っていた
彼の革靴の足音が扉の向こうから
聞こえてきた。

「レディのみなさーん!!
暖かいコーヒーでも
お淹れ致しましょうかーーー!!??」

扉が開かれると同時に入ってきた
サンジは寒さからか顔が少し
霜焼けて赤くなっていた。

ばっ、と3人同時に彼に振り返り
じーっと見つめていると
え?と何処か嬉しそうに戸惑うサンジ。
私は耐えきれず勢い良く立ち上がると
彼の前まで歩き、その顔を見上げた。

「サンジ!」
「な、何かなっ?」
「私はサンジの事嫌いじゃないからね!
それにっ、たかが占いだし!!」
「……へ?うら、ない?」

大きな声を出す私にかなり驚いた様子の
サンジに今の私には精一杯の言葉を投げ捨て
目が点になった彼の横をすり抜けて
ダイニングを飛び出した。

占いに頼って強がる事しか出来ない
私が本当に伝えたい気持ちは
あなたの事が嫌いじゃない、
じゃなくて、むしろ


大好きなんです。


「え?ど、どういう意味なんだ…?」
「さあ?自分で本人に確かめてみたら?」
「ふふ、追いかけるしかなさそうね。」






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