PAST CLAP | ナノ



9th





冬島が近くなってサニー号にも
雪が降り注ぎ始めた。

不寝番の私は展望室から
夜空を見上げていたのだが
白いそれを目にした私は
居てもたってもいられなくなり
コートを羽織り甲板へと飛び出した。

芝生甲板から改めて夜空を見上げると
顔に冷たい粒が落ちてくる
感触を感じながら瞼を閉じた。
そしてそのまま大きく口を開けた。

どのくらいこうしているだろうか。
さすがにもう寒さに耐えられない。


「何してるのかなお嬢さん?」
「…雪を食べたくて。」
「そうゆう所も可愛いけどよ。
風邪ひかれちまうと困るな。」

革靴の足音の後に聞こえてきた
恐らく私の隣に立って
このアホ面を見下ろしているのであろう
我らのコックにして私の恋人である
サンジの声に暖かさを感じる。
そしてそれが私が彼にどれだけ
惹かれているのかを
自分で再確認させられる。


「風邪引いたら看病してくれるんでしょ?」
「あー…まあそりゃ勿論するけどよ。」
「じゃあ大丈夫。」

サンジに看病してもらえるなんて
もういっそ本当に風邪をひいても良いな、
と思った矢先だった。

口を大きく開ける顎が疲れてきて
徐々に閉じていく唇に
柔らかい感触を感じ、
それがサンジの唇だと気づく。


「ちょっ、不意打ち…」
「そんな無防備な顔されちまったらな〜。」

悪戯な顔で言いながら吐かれる
煙草の煙なのか
寒さからの白さなのか分からない
そんな貴方の吐息にさえ
目を惹かれる。

そんな私の視線に気づくと
サンジは冷たくなった私の頬を
暖かくて大きな手で包んで
そのままもう一度キスをくれた。


そんな私達の姿が
降り注ぐ雪を見に
部屋から出て来ていた
他のクルーに見られているのに気づき、
その上からかわれる事になるのは
もう少し後のお話。






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