LONG "To the freedom." | ナノ



24



サニー号のキッチンはサンジさん、ウソップさんの工場はウソップさん、フランキーさんの兵器開発室や武器格納庫はフランキーさんが管理している為それらを除いた場所は一通り掃除し終わった私1つの部屋の前で考え込んでいた。


「誰に許可を取るべきなんだろう...」

やはりこの船の船長であるルフィさんだろうか?うーん、と考えるていると声を掛けられた。


「おい。」

声の主の方へ振り返ると、そこにはゾロさんが立っていた。

「すみません...!お邪魔してしまって。」
「お前、ここで何してんだ。」
「ゾロさん、男性の方々のお部屋って入らない方がよろしいですか?」
「...どういう意味だ?」

眉間にシワを寄せるゾロさんに少し怯んでしまいながら、言葉を続けた。


「あの、掃除がまだ済んでないのがこちらの部屋だけでして。でもやはりプライバシーとか、その、あるかと思いまして...」
「......」

尚も怪訝な顔で、いや最早睨んでいるかのような表情のゾロさんの言葉を待つ。
やっぱり辞めた方が良さそうだな...と床に置いたバケツを持ち上げた。


「もし、どこかお部屋の中で掃除する場所があったらお申し付けください。」

頭を下げながらゾロさんの横を通り過ぎようとした瞬間、待て、と言う声に振り返る。


「お前1人で部屋に入るってんなら問題かもしれねえが、俺が一緒ならアイツらも文句言わねえだろ。」
「え、よろしいんですか...?」
「お前はもうこの船の一員だろ。いつまでそんな自信無さげで居るつもりだ?」

船の一員、その言葉が嬉しかった。
ゾロさんに向き直りありがとうございます、と深く頭を下げるとため息をつきながら部屋の扉を開けてくれた。



部屋の中は思ったより汚れていなく、ソファに放り出された洋服がちらほら見えるだけ。


「皆さんお綺麗にされてるんですね。」
「ああ、特にコックがな。男の癖して綺麗好きだからよ。」
「サンジさんが...」

確かにサンジさんはいつも身だしなみも綺麗で、煙草の匂いの中にも石鹸の匂いが微かにする。
そんな事を考えながら洗濯物を集めると一角にまとめられたワイシャツの存在に気が付く。それが誰のものかは一目瞭然だった。

ワイシャツはシワにならないよう、持ち主であるサンジさん独自の洗い方があるのだろうか...と考え込みとりあえず他の方々の洗濯物をカゴに一纏めにして箒を手に取った。

床に一目見ただけでは分からないようなゴミが箒に纏わりついて来て、今以上に綺麗になっていくのが分かる。一通り掃き掃除を終えるとバケツに入っている雑巾を手に取り余計な水を絞る。


「...どうしたってそんな掃除したがる?」
「え、」
「お前はここのメイドじゃねえだろ。今まで嫌ってほどやってきたそんな面倒な事、どうしてそんなしたがるんだ?」

こちらに背を向けてソファに座るゾロさんの言葉を聞きながらそういえば先日ナミさんにもそんな事言われたなあ、と思った。


「私が生きていく為にあの屋敷で身に付けた術はメイドとしての仕事なんです。実は魔女でした、とは言っても今は何もその力を発揮出来ません。皆さんのように強くないですし、海の上で役立つ知識も何も持ち合わせていません。だからせめてこうして自分に出来る事を少しでもしていないと、私自身が不安になってしまうんです。」
「.........」
「すみません、私って自己中心的ですよね。」

ゾロさんは私の言葉を聞いて、どう思っただろうか。自分勝手な女だと思われただろうか。
何も言わないゾロさんの表情が気になり、ソファを回り込んで顔を覗き込んだ。


「ぐーーーーー。」
「寝てる...」

私の話を聞いていたのかは分からないが、私と2人きりというこの状況でも寝ているということは気を許してくれている証拠だろうか。ゾロさんを起こさないように私は掃除を再開した。





「......寝ちまったか。」
「おはようございます。」

いつの間にか寝てしまった事に言葉を漏らすと返ってくる女の声に視線をやると布巾を持ちながらテーブルを拭く名無しの姿。
そして自分に掛けられたブランケットに気づいた。


「...?」
「すみません、風邪を引いてしまわれると思ったので。掃除、終わりましたので失礼致します。ありがとうございました。」

そう言って立ち上がる名無しを一瞥し、部屋を見回すと本当に魔法でも使ったのかと思うくらい綺麗にされていた。


「お前、その態度どうにかならねえのか?」
「以前にナミさんにも言われました。性分と言いますか、染み付いてしまったものなのでしばらくは無理かと...」

笑って言う彼女は言葉遣いは変わらないものの、初めて会った時とは明らかに違った。


「それでは、これで。後で洗濯物取りにきますね。」
「ああ、礼を言う。」
「とんでもありません。」

両手が箒とバケツを持ち扉に向かう彼女の後を追うように扉を開けてやる。
名無しは少し驚いた表情をした後すぐにありがとうございます、と言いながら部屋から足を踏み出すと何かを目にしたのか動きを止めた。
なんだ?と思いながら部屋の中からその視線の方へ目をやると金髪のグルグル眉毛が目に入った。





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