LONG "To the freedom." | ナノ



19



「1つ聞いてもいいかしら?」

ルフィさんに殴られた頬をチョッパーさんに手当てしてもらっているご主人様に、ロビンさんが問いかけた。


「はい、なんでしょう...」
「あの事件で捕まった元屋敷の護衛の方達だけど、私の持っている資料によると"狩らなければならない"と言っていたそうだけど。」
「...魔女狩りです。ドクターガフは、あの事件の計画を"魔女狩り"と呼んでいたのです。」

そういう事か...馬鹿らしい、と思いながらもご主人様の言葉を聞き未だに自分に魔女の血が流れている事が実感出来ないでいた。
私1人をあの村から連れ出す為に村の人達は殺されてしまった、その事が悔しくてならなかった。ご主人様のことを簡単に許せる事では無い。
そして、両親の事も...


「名無し、謝って済むことではないと分かっている。本当に申し訳なかった...」
「...もう過ぎたことです。でも今はまだ、恐らく当分貴方のことを許せそうにありません。」

ご主人様の目を見れない。
大好きな人に裏切られるのは、こんなにも辛い事なのか。


「...あの、奥様やストンさんはこの事ご存知なのですか?」
「いや、2人共何も知らない…私が1人でした事だ。」

良かった、と思った反面この人は1人で屋敷を、家族を守ってきたと思うと憎くて仕方ないのにやるせなくなる。


「ご主人様、お坊ちゃま、屋敷へ戻りましょう。お2人共心配なさってます。私もご一緒致しますので。」
「しかし、お前は、」
「ルフィさん、皆さん、最後の最後までご迷惑お掛けしてしまって申し訳ありませんでした。私達は屋敷へ戻ります。」

これで何度目だろうか。こうして頭を下げるのは。顔を上げると同時にルフィさんが名無し、と私を呼んだ。


「俺達はずっと待ってるぞ。」

その真っ直ぐな目が、私を捉えて離さなかった。他のクルーの方達の目も私に真っ直ぐ向いていた。もう、仲間になる事は決定らしい。

その事がとても嬉しくて思わず笑みを零してしまう。

「...はい、かしこまりました。」






「ちょっといいかしら、マラクさん?さっき貴方の屋敷の護衛の方々にも言ったんだけど、貴方の息子さんと名無し、私達の人質にしたのよね...それで、身代金についてなんだけど。」
「お前まだそんな事言ってんのかーーー!!!??」

チョッパーさんが勢い良く突っ込むと、当たり前でしょ!?とナミさんが返す。

「名無しは私達の仲間になるから百歩譲って良いとして...息子さん1人分、払ってくださる?」
「容赦無えなお前...」

若干引き気味なゾロさんの言葉の後に、ご主人様は分かりました、とナミさんの要求を呑んだ。


「分かりました、多大なるご迷惑をお掛けした分も支払います。」
「え!?本当!!?じゃあ私も屋敷へ行ってもいい!?」
「はい、どうぞいらして下さい。」

ここで待ってるなんて出来ない!と言わんばかりにナミさんが私の肩を抱きながら屋敷に行くことの承諾を得た。


「おいナミ!ずるいぞお前だけ!」
「宜しければ皆さん来て頂いて構いません。」

ほんとかおっさん!とルフィさんが目を輝かせて言うと、チョッパーさんやロビンさん、フランキーさんとサンジさんまでもが行きたがった。

ゾロさんは興味が無いと、ウソップさんは何だか怖いからと、ブルックさんは街へ出てしまうと混乱すると言う理由で船番をして頂くことになった。




「じゃあ行ってくるーー!」

船に残る3人にルフィさんが大きな声で言うと、私達は屋敷を目指した。


「大丈夫か?名無しちゃん。」
「え、」
「まあ、仕方ねえがよ...」
「すみませんサンジさん、いつも心配してくださってありがとうございます。」

歩きながら私の顔を覗き込み気にかけてくれる彼に、胸が高鳴る。
あんな事があった直後なのに、言葉では言い表せない感情が私の中で渦巻いていた。

本当に謙虚だなぁ名無しちゃんは〜!とニヤけるサンジさんに、少し気分が明るくなれた。

「サンジさん。」
「ん?」
「先程はありがとうございました。なんだかとても、スカッとしました。」

私の言う先程の事とは、という表情のサンジさんは少し考えた後ドクターガフの事だと気づくと優しく笑った。


「そりゃ良かった。」




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