部屋に戻って袋の中のものを取り出す。
黒いふさふさの耳がついたカチューシャに黒くて肉球がついたでかくてもふもふの手袋。
これだけしか入ってなかった。
「……狼男?」
尻尾は入ってねぇけどそうだよな?
この際何で狼男なのかとかは気にしない。
問題は服装だよな。
よく人間から変身して毛むくじゃらになって服が破けて狼に…ってのはあるけどあんな感じか?
それならジーンズ穿いて服は…どうすれば良いんだよ。
まだ着れる服を破くのは嫌だ。
どうせなら服着てねぇ方がそれっぽいよな。
って事で着ていた服を脱いでジーンズ穿いて耳と手袋つけたけど…
「何つーか…」
狼男にしては貧相な気がする。
狼男ってムキムキでごつい奴がやった方が似合うもんだよな。
俺も一応腹割れてるけどムキムキじゃねぇしごつくもない。
……まぁいいか。
着替えた事だし部屋から出るとソファーに座る雅兎の後頭部が見えた。
「着替えたぞ」
「遅ぇ。何でそんなに時間が…」
雅兎に近付いて思わず息を飲んだ。
いつも括ってる髪を解いて軽く後ろに流してる。
白いシャツに黒いズボン、そして内側が真っ赤な黒いマント。
ドラキュラ伯爵か!
すげぇ似合ってる。やっぱ格好良いよなぁ。
心無しかいつもより男前度が増してる気がする。
「何で半裸なんだよテメェはよぉっ!それ羽織っとけ!」
「ぶっ!」
雅兎に見とれていたら急に視界が真っ赤になって顔に衝撃が。
悩んだ末の半裸を否定されるとは…やっぱ服を破くぐらいしとけば良かった。
「………小さい」
受け取ったマントを言われた通り羽織ろうとしたら肩幅が足りてねぇ。
思わず呟いた言葉にハッとして恐る恐る雅兎に視線を向けた。
すんげぇ綺麗に笑ってる顔が怖ぇよ!
これはマズイ。
不機嫌になる前に何とかしねぇと!
「ほ、ほらっ、あの、そうだ!恋人達のベストな身長差は15センチらしいぞっ。俺達ピッタリだなっ」
「だぁーっ、もう黙れ!」
「うぉっ!?」
何とかフォローしたけど失敗したみたいで地を這うような声と共に体がソファーに倒れた。
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