ラビの笑顔が大嫌いだった。その笑顔に励まされていた自分が大っ嫌いだった。ふざけないでよ。あんたが知ってたの、私は知ってるんだから。気にしてたでしょ。私が気にしてたの。別にね、結構どうでも良かったんだよ。何でそんな繊細なわけ。馬鹿だなあ。


「おはよう」

「…はよ。はやいな」

「遅かったらおそようって言ってる」

「じゃあ俺はそよって言わなきゃいけないんか?」

「何それー。変なの」

「お前もさ」

「…朝御飯は?」

「もう食べちった。カニクリームコロッケ!」

「朝から随分がっつり行ったね」

「ちかはまだなんか?」

「私も食べたよ。みっそラーメン」

「お前はこってりだな!」

「カニクリームコロッケには負けるけどね。どーせ7つくらい食べたんでしょ?」

「おっしーい!8つさ!」

「1個多いじゃん」

「育ち盛りだかんな」

「これ以上何処が育つのよ」

「お前は何個食ってもでかくなんねえなあ」

「……なーにーがあ?」

「さあなー」

「そ。でかい独り言だったこと」

「……………ちか」

「なに?」

「俺の事、好きか?」

いつも通り、へよんと立った君の赤毛が、へよんと揺れて、天井を見た。それ食堂でする話じゃないでしょ。神様を信じてるこの建物の、人の集まる食堂の天井にその緑色の目を向けた。私からは見えないけどきっとそうだ。私は垢抜けないアジア人だから目は真っ黒。ラビの目は、綺麗な緑だ。片方は解んないけどさ。赤毛で目が緑でバンダナして、誤魔化したいのかな。長身だから、私は座っててラビが立ってると随分遠くに見える。元々身長差があるんだけど。

「ラビ、寝癖」

「はっどこ!?」

「こっち来て」

服の裾を引く。普段着だ。いつものラフなやつ。今から出掛ける風だけど、買い物にでも行くのか。

「ん、」

こいつ何でも似合うんだよなあ。いつもラフだけど。

「ここ座って」

食堂の机と椅子って何でこんなに冷たくて固いんだろ。ふかふかにしてくれれば良いのにさ。

「なにさ、良いけど」

あ、ちょっと照れた。表情、豊かだよねこいつ。

「ラビ」

無駄に可愛い名前。

「何さ?」

無駄に良い声。

「好きだよ。大好きだよ」

皆、信じてるよ。
ラビの事信じてる。私も信じてる。ラビの笑顔、大好きだった。大好きだ。

君の笑顔は、嘘じゃなかった。


自己投影な君の笑顔


ふざけないでよもー。好き?って、そんな、好きに決まってるでしょ。わかってんでしょ。そんなに不安だったの?そんなに苦しかったの?自分が嘘ばかり吐いてるのは知ってたじゃない。それで苦しんでたの、それで傷付いてたの、知ってるんだから。それが怖かったのも、知ってるんだから。信じなかったから、信じられなくなったんでしょ。怖くなったんでしょ。

ばいばい、ラビ。またね。



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急にラビが愛しくなったからラビさん

20101009




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