事後の話(フィンフェイ)

「何だオメー。暑さでアタマ沸いたか?」
劣情の炎が冷めきった気だるげな態度を以てして。寝床に置いた煙草を手さぐりで探しながら、金髪の大男は今し方快楽を分け合った相手に訊き返した。
「ワタシ至て真面目よ。ちゃんと答えるね」
黒髪の小男は、金髪に負けず劣らず冷めた顔で答えをせがむ。その涼しげな眼差しは金髪を見ているようで見ていない。
「別にいらねーな。俺には団長とお前らがいりゃいいしよ」
「要る要らないの話違うよ」
「その言葉そっくりそのままお返しするぜ。要る要らない以前にお前、男じゃねーか」
からかうように言って、手にした煙草を咥え火をつける。黒髪も欲しがったので箱を傾けて一本取らせ、先端を重ねて火種を移してやった。
「もう一度訊くよ。ワタシに子供できたらどうするね」
肺いっぱいに煙を吸って。
暫し呼吸を止めた後、吐き出して。
暫しの沈黙の後で金髪は言った。
「そりゃ堕ろすしかねーだろ」
そしてこう続けた。
「俺ら親なんてガラじゃねぇしよ。大体、こんな腐った世界になんざ生まれて来ねぇ方が幸せってもんだろ」
「……ふぅん。そうか」
予想外の答えだったのか。
それとも想定内の返答だったのか。
曖昧な相槌を打ちつつ、黒髪はフィルターに口をつけた。
「あんだよフェイ。まさかとは思うがお前、マジでガキ産みたいとか抜かすんじゃねーだろうな」
「ハハハ、洒落にならないね」
乾いた笑いとともに冗談めかして軽口を叩く。
「ケッ。じゃ訊くなっつーの」
金髪が煙草を吸い込む度、紫煙が立ち昇る。黒髪は表情のない笑顔で只管それを眺めていた。

[ 7/33 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -