フィンフェイがしてるだけの話

「おいこら。こりゃあ一体どういうこった」
フィンクスは怒り半分呆れ半分の面持ちで、しかし努めて冷静に問いかけた。
「見て分からないか。お前縛られてる」
「ンなもん知ってんだよ。なんでこんなことしたのかって訊いてんだ俺は」
切れ長の目を細めて答えるフェイタン。それを受けたフィンクスのこめかみにくっきりと青筋が浮かぶ。

いまフィンクスはシーツの上で仰向けになり、素っ裸で後ろ手に縛られている。理由はよく分からない。目が覚めたらこうなっていたのである。
腕に絡む縄を引きちぎるのは造作もないことだが、その気になれない理由がひとつあった。
フェイタンが乗っかっているのだ。彼もまた全裸で。フィンクスの臍を跨ぎ尻の下敷きにする格好で。

「説明しろよ」
「深い意味ないね。ただの気分」
「……」
長く深い付き合いではあるが、未だにこいつの考えることはよく分からん。そう思った瞬間、ふっと顔に影がかかった。フェイタンの顔が近い。
一瞬キスされるかと思ったが違った。フィンクスの首元へ顔を近づけたかと思うと、舌を出して首筋を舐め上げた。
ぞわぞわとした感覚に肌が粟立つ。
喉仏。鎖骨。胸板。キスを落としながら徐々に降りて、やがて乳首まで到達する。唇が触れるか触れないかの距離まで近づき、すんすんと匂いを嗅ぐような仕草を見せた後、ぱくりと口の中に収めてしまった。
舌先で転がされ、吸われ、軽く歯を立てられる。同時に反対側の手でもう一方の胸も弄られ、だんだんとおかしな気分になってくる。

「固くなてる」
「うるせーよバカ」
「次、どうしてほしい?言(ゆ)てみる」
言わなくても分かるだろ。と言おうとしたが、その前に言葉は遮られた。
「言(ゆ)えるものならね」
口の中に押し込まれた指先によって。
その人差し指と中指でフィンクスの舌を挟み、指の腹で擦ったり爪を立てたり、時々パラタイン喉腺を刺激したりと好き勝手に弄ぶ。
口を閉じようにも力が入らない。唾液が溢れて口角から零れる。
フェイタンはそれに構わず、空いた方の手をそっと下半身の方へ伸ばす。そして既に勃ち上がったそれを手のひら全体で包み込むようにして掴み、上下に扱き始めた。
なんと器用な奴だ。というか、やばい。出そう。身構えたところでパッと手が離された。そうかと思えばいきなり尿道口に親指を圧し当てられる。敏感な箇所をぐりぐりと捏ね回されて腰が跳ね上がる。

「変態。こんな状態で感じるなんてお前どMね」
フィンクスの口腔から指を抜き、呆れと嘲笑を大いに含んだ面持ちで見下ろしてくるフェイタン。
屈辱を感じるとともに身体の奥底から熱くなるような興奮を覚えるフィンクス。
もっと強く触ってほしい。でもそれは言えない。何故?恥ずかしいから。しかしそんなフィンクスの心を見抜いているかのように、フェイタンの手の動きは徐々に激しさを増していく。

「フェイ、テメェ……いい加減にしろよ」
「何が?」
ざけんな、ぶっ殺すぞこの野郎。
普段のフィンクスならばそう吐き捨てるところだが、今はそんな余裕もない。早くフェイタンの尻に挿入して思い切り腰を振りたい衝動の方が強かった。
股間のものをギンギンにおっ立てるフィンクスを薄笑いを浮かべて見下ろすフェイタン。まだまだ苛め足りないといった面構えだ。
「挿れたいか」
無言で頷く。
「ならワタシのここ慣らす。手使えないから口でするしかないね」
そう言って身を反転させてフィンクスの顔面に跨がるフェイタン。尻穴を舐めろというわけだ。まぁ、それも悪くない。
さっきまでの仕返しも兼ねて焦らしまくってやるぜ。フィンクスは心の中でほくそ笑んだ。
「……ん、」
穴の縁をなぞるように舌を這わせ、皺を伸ばすようにして少しずつ中へと進めていく。舌先がつぷりと潜り込んだ時、フェイタンの切なげな喘ぎが聞こえた。舌を抜き差ししたり、中に入れたまま左右に動かしたりと様々なやり方で責めていると、細く締まった腰をくねらせ身を捩り始める。
初めこそ声を押し殺していたフェイタンだが、その呼吸は次第に荒くなり、やがては堪えきれず喘ぎが漏れ出すようになった。
フィンクスはその喘ぎに混じって聞こえる、水音と自分の鼻息を少しだけ恥ずかしく思った。
そろそろ頃合いかと舌を引き抜くと、その穴が物欲しげにひくついているのがよく見えた。
ああ、早く挿れてやりてぇな。と思ったが腕を縛られているため自由が利かない(まぁ縄を引きちぎるのは簡単なのだが)。

「フェイ、お前こそ欲しくなってきたんじゃねぇのか?」
煽るように問う。フェイタンは答えない。
代わりに背面騎乗位の格好でフィンクスのモノを跨ぐと、ゆっくりと腰を下ろしていった。そのままずぶずぶと、鈴口を、亀頭を、根元を飲み込んでいく。
先程とは比べものにならない快感に二人は同時に短い悲鳴を上げた。

フェイタンは少し上半身を前に倒している。この体制だとフィンクスからは結合部が丸見えだ。薄く伸びた肛門が男根を食いちぎらんばかりに締め付けている様がはっきりと見える。
しばらく馴染ませるようにじっとしていたフェイタンだったが、やがて腰を上下に揺すり始めた。最初はゆっくりだったそれは徐々に速くなっていく。
(ヤベェな、エロい)
フィンクスの目には自分の肉棒が出入りし、そのたびに絡みつく媚肉が鮮明に映っている。その淫靡な光景に目眩すら覚える。
前々から思っていることだが、こいつは妙に男慣れしている。一体どこで覚えてきやがった?そんな疑問が一瞬浮かんだが、すぐにどうでも良くなった。気持ちいい。もうそれだけしか考えられない。
フィンクスはフェイタンの動きに合わせて自分も腰を突き上げた。途端にフェイタンの身体が大きく跳ね上がる。
そして動きを止めてしまった。どうやら達してしまったらしい。
しかしフィンクスはまだ満足していない。射精には至らず中途半端に高められた性感が行き場を失って暴れ回っている。
今度は自分から動けということか。フィンクスは下腹部に力を入れて腰を持ち上げると、勢いよく突き刺した。そしてまた持ち上げて落とす。
ピストン運動を続けていると、不意にフェイタンが動いた。
彼の手が自身の股間へと伸びる。そのままいきり立った自身を握り込むようにして上下に扱き始めたのだ。
フェイタンの口から切なげな吐息が漏れる。それに合わせるように後ろの穴もきゅっと締まる。
フェイタンが自分で自分を慰めている姿を目の当たりにし、フィンクスの興奮はさらに増した。
俺のをケツ穴に突っ込まれながらオナニーしてるとか、そっちこそ変態じゃねぇか。もっと乱れさせてやりたい。
両手に込めたオーラを一気に解き放つ。彼を縛っていた縄が一瞬にして細切れの繊維に姿を変える。

「ヒィ!?」
いきなり後ろから抱き上げられて、短く高い悲鳴を上げるフェイタン。繋がったまま身体を180°回転させ仰向けに寝かせる。括約筋を捻られて目を見開く様を見下ろしながら、正常位でズコズコと攻め立て、好きな角度を何度も執拗に突いてやる。声を抑えようと小さな唇を噛むのが見えた。
「さんざんナメたマネしやがってよ。何とか言ってみろよコラ」
フィンクスは自分がされたのと同じようにフェイタンの口に指を差し込み、無理やり開かせた。そうして舌をつまんで弄び、なおかつ下半身は休まずに動かし続ける。
「言えるもんならな」
窒息したフェイタンの喉の奥から絞り出すような掠れた喘ぎが上がり、同時に中がうねってフィンクスのものを強く締め付けた。それが引き金となり、熱い奔流を叩きつけるようにして放つ。
その感覚に感じ入ったのか、フェイタンは背を反らし全身を痙攣させた。暫し硬直した。脱力した。
精魂尽き果た二人は、無言で荒い息をついた。先に回復したフィンクスがゆっくりと己を引き抜くと、フェイタンは小さく声を漏らす。
ぽっかり開いたそこから、飲み込みきれずに溢れ出た白濁液がとろりと流れ落ちる。
その様を眺めていたフィンクスは、我知らずごくりと生唾を飲み込んだ。

「……なぁ。もう一回いけるか?」

フェイタンは少しの間呆けたように宙を見ていた。それから、ニヤリと笑って言った。

「それワタシの台詞よ。お前、まだいけるか」
「は、なめんじゃねーよ」
「性欲オバケ」
「お前がな」

――二人は再び、互いの肉体を貪り合った。



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