事後の話(シャルフェイ)

小一時間前のセックスを思い出し、下半身がむずむずと疼き出す。
(ダメだ。我慢できねぇわ)
フェイタンは寝息を立てるシャルナークを一瞥し、股間に手を伸ばして自慰を始めた。
「ん……ふぅ……」
足りない。あれだけやってまだ満足できないなんて、自分は相当な好き者らしい。そう思いながらも、手が止まることはない。
「……、……ハァ……ぁ……」
指の動きが激しくなる。だがあと一歩、何かが決定的に欠けている。
「……シャル……」
無意識のうちに隣で眠る男の名を呼んでいた。
「呼んだ?フェイタン」
「……」
いきなり横から声をかけられ、時が止まる。眼球だけでそちらの方角を見やると、いつの間に目を覚ましたのかシャルナークがニコニコしながらこちらを眺めていた。
「……お前、起きてたか」
この笑顔は人を煽る時の表情だ。その胡散臭い笑みを向けられ、フェイタンの眉間に皺が寄る。
「そりゃあ愛する人が自分の名前を呼びながらオナニーしてたら起きるよ」
そしてこの神経を逆撫でするような物言い。うざい。うざすぎる。
「ねぇ、何考えてた?」
「別に何もないね」
「嘘ばっかり。俺の名前呼びながらあんな厭らしく腰振ってたくせにさ」
「チッ」
一見好青年に見えるこいつは、自分とベクトルの違うサディストだ。多少口と頭が回るのをいいことに人を理詰めで追い込んで、相手が困ったり怒ったりするさまを楽しむ、そんな嫌みったらしい変態なのだ。
「ハ。ワタシのこと軽蔑するか?」
「まさかぁ。むしろ嬉しいくらいだよ」
その答えを聞き、フェイタンの顔色が少し変わった。シャルナークはそれに気付くと、ニコッと笑ってみせる。
「もう一回する?」
「…………」
「まさかオナニーまでしておいて、いやだなんて言わないよね?」
「……」
「ほら、早くこっち来て」
シャルナークが起き上がり、ベッドの上で両手を広げて見せる。フェイタンは無言のまま彼の腕の中に収まりに行った。
「はい、よくできました」
子供を褒めるように頭を撫でられる。屈辱的ではあるが、不思議と悪い気分ではない。
そのまま唇を重ねて舌を入れ合う。
唾液を交換しあい、互いの吐息を感じあう。
ああ、やはり気持ち良い。フェイタンは再び快楽の海に沈んでいった。

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