オレがカルトでボクがフィンクス!?〜カルトとフィンクスが入れ替わっちゃう話〜

※カルト旅団入り→GIで除念師探ししてる頃の話
※フィンフェイ前提。えっちな展開有(の予定)

フィンクス=マグカブは呆然とした。
頭ひとつ以上視点が低い。額と頬が髪で覆われている。明らかに自らの毛髪とは違う。馬の毛のように太い、真っ直ぐに切り揃えたそれ……特に額から垂れ下がる髪がちらちらと視界に入って何とも不愉快だ。
やせっぽっちの体にはジャポンの民族服を身につけて、足にはこれまたジャポン風の履き物……そして。向かいにはきょとんとした己が佇んでいる。

カルト=ゾルディックは途方に暮れた。
やけに視点が高い。自分の体を見下ろすと大柄な成人男性の姿になっており、その身には見覚えのあるジャージを纏っている。
無意識のうちに頭を掻いて違和感を覚える。固い。おかっぱ頭である筈の髪がガチガチに固められて、なんとなく髪質も変わったような気がする。そして真正面には、ヤクザよろしく顔面を歪めた己の姿があるではないか。

己に降りかかった事態を理解できず、二人は暫し見つめあった。
目の前に自分の姿?なんで???
コルトピの能力で肉体を複製したわけでは……なさそうだ。目の前にある自分は呼吸をして、生体にあるべきオーラを纏い、頭を掻いたり変な顔をしたりしている。
コピーに命を吹き込むというのは、コルトピの能力では成し得ない。第一彼はアジトで留守番をしているの。ここにいる筈がない。
それに、自分の肉体に起こった異変の説明がつかない。
何故?なんで? 何がどうしてこうなった?

近くには湖がある。波紋一つない平らな水面がキラキラと日光を反射し、生い茂る木々と澄んだ青空を、まるで鏡のように映し出している。
先に思い至ったのはフィンクスだった。ある確信を覚えつつ、まさかと思いながら湖を覗き込む。見慣れた自分の姿はなかった。代わりに座敷童子のような子供の姿が水面に映っている。
「…………は?」
引きつった顔で隣に目をやると、もう一人の自分も水面を覗き込んで驚愕の表情を浮かべていた。

目の前には己の姿。
水面に映るは見知った姿。

「なんだこりゃ!?」
フィンクスは叫んだ。同時に更なる異変に気がついた。その口から漏れたのは、変声期前の子供の声だった。どう考えても自分の声ではない。けれど、確かに自らの喉から発せられている。
もう一人の自分が、こちらを凝視している。そしてフィンクスの声で、こう呟いた。
「……嘘でしょ」
嗚呼。そうだったらどんなにいいか。
ともあれ互いの姿と声から、二人は自然と互いの現状を理解した。

「オレがカルトで」
「ボクがフィンクス……!?」

そう。二人は肉体が入れ替わってしまったのである。

***

「――『入れ替えアゲハ』。こいつの仕業か」
カード化したモンスターの名称を読み上げるカルトの姿をしたフィンクス(以下フィンクス)。
体育座りで地べたに座り、無言のうちに「続きは?」と訴えるフィンクスの姿をしたカルト(以下カルト)。

「青き森に住まう幻のアゲハ蝶。冒険者の肉体と魂を入れ替える能力を持つ。効果は6時間」
「それだけ?」
「それだけ。どうやら効果が切れるのを待つしかねェみたいだぜ。『不純なる物の滅却』使ってみたけどダメだったし」
「そんな……」
「ま、しょうがねぇよな」
フィンクスは溜息をついて、カルトは絶句した。
たったの6時間待てばいいだけなのに、カルトの焦り方は尋常でなかった。まるでこの世の終わりを告げられたかのような顔をしている。

「そんなに落ち込まなくてもよくね?ちょっとの間我慢すりゃいいわけだし」
「ボク、これから仕事なんだけど」
仕事というのは、家業である暗殺のことだろう。
予想だにしない展開に一瞬固まりつつも、フィンクスはすぐに思い直して、こう提案した。

「そのカッコのまま行けば?どうせターゲット殺すだけだろ」
「そうしたいのは山々だけどね。今回は兄さんと一緒なの」
「事情説明すりゃいいじゃねェか。それか時間ずらしてもらうとかよ」
「それができたら苦労しないってば!」
カルトは声を張った。フィンクスの声で、だ。フィンクスの声帯を使って、フィンクスが発したことのない高い声で叫んだ。なお大声を出し慣れていないためか、その声はちょっと裏返っていた。
これが視覚にも聴覚にも気持ち悪く感じて、フィンクスは思わずビクッとして顔をしかめた。両目を左右非対称に細め、歌舞伎役者のごとくグッと口をへの字に曲げる。カルトらしからぬガラの悪いリアクションだが、当のカルトはそんなものを気にしている余裕はないらしい。

フィンクスはカルトを哀れに思った。
新入りが。十歳かそこらの子供が。よりによってフィンクスの顔で「どうしよう」と嘆いている。
何か自分にできることはないかと考えた。考えて考えて、思いついた。そしてこう提案した。

「なら、こうしようぜ。お前の代わりにオレが仕事に行く」
「は?」
カルトは目を大きく見開いた。ぎょろっとした四白眼が気持ち悪いなと思いつつ、フィンクスはこう続けた。
「向こう6時間、オレはお前になりきってやる。お前は余計なことを喋らず、オレになりすましてアジトで待ってろ」
「そんなの無茶だよ。もし兄さんにバレたら……」
「わかるわけねーって。体は正真正銘カルトなんだから、どうとでもごまかせるだろ」
自信満々に言い放つフィンクスに、カルトはこう反論した。
「仕草や話し方で分かるよ。念能力だって
「うるせーな安心しろよ。こう見えて昔は劇団目指してたから、演技は割と自身あんだわ」
「……フィンクスは兄さんを知らないからそんなこと言えるんだよ」
「あーウゼェなもう、じゃあ他にどんな方法があるってんだ?人の提案にグダグダ文句言うんだから、当然代案は用意してんだろうな。あぁ?」
「それは……」
カルトは言葉を詰まらせた。こうしている間にも刻々と時間は過ぎていく。今頃イルミはリンゴーン空港に到着して、待合せ場所に向かっていることだろう。
フィンクスに行かせるのは不安だ。けれど、家業をすっぽかすのは論外だ。
カルトは懊悩した。悩んで、悩んで、悩み抜いて、長い沈黙の後に、溜め息混じりに呟いた。

「……わかった。フィンクスに任せるよ」
「よし!決まりだな」
「ほんと、くれぐれもボロ出さないでよね」
「へいへい。ま、大船に乗った気でいろよ」
自信たっぷりに言い放つフィンクスは、両腕を組んでガキ大将じみた笑みを浮かべている。
それはどう見てもカルトがする顔ではない。キキョウが見たら「んまぁカルトちゃん、ダメよ!」だの何だのと金切り声を上げて怒り狂うことだろう。

(……こいつ、本当に大丈夫かな)
カルトは頭を抱えたいのを堪えながら、今回のターゲットやら兄との合流地点やらの情報をフィンクスに伝えねばと口を開いた。

[ 4/7 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -