身重の石ネタ3

その赤ん坊は誰に似たのか、やたらと目付きが悪い。
泣きたいときに泣き、眠りたいときに寝て、母親のおっぱいを好き放題にしゃぶり、腹を満たしておむつを濡らす。文字通りクソったれのろくでもない野郎だ。

「触んじゃねェって!やっと寝たのによ、起きたらどうしてくれんだお前ぶっ殺すぞコラ」
ろくでもない野郎――もとい我が子のほっぺをぷにぷにと突っつくボクを見咎め、母親である彼は荒い語気で捲し立てた。

本年夏、某日。この赤ん坊は流星街で産声を上げた。
フィンクスは母親に、ボクは父親に、それぞれなったわけだ。
臨月の身で流星街に戻ったフィンクスは蟻退治から程なくして出産を済ませ、暫し体調を整えたあと、約束通り赤ん坊を抱いて家に戻ってきた。
赤ん坊は男児だった。ボクの子だと一目で判別できる程度には父親似なのだが、目付きだけは呆れ返るほどフィンクスに似ている。
ふてぶてしく感じるのはそのせいばかりではない。生後1か月とは思えないそのワガママボディときたら。
なんでも出生時四千グラム超の巨大児だったらしい。その貫禄溢れる我が子の佇まいを目の当たりにしたボクは感動や愛しさを覚えるよりも(何これどうしよう)という思いが先に立った。

「『殺す』って……ひどくねェ〜ッ?さてはお前ガルガル期ってやつだな」
「うっせカス。キモいウザい臭い。こっち来んなハゲ」
「臭くなけりゃハゲてもねェし」
「邪魔だっつってんだよボケが、失せろ」
ボクを鬱陶しがり邪険にあしらうフィンクスだが、本気で遠ざける様子はない。赤ん坊をベビーベッドに寝かせると、ラグの上に転がって大きく伸びをして、これまた大きな欠伸をかます。
ボクも隣に座り込んで、フィンクスの脇腹をくすぐる。その手を「やめろ」と叩かれたので大人しく引き下がり、彼の隣で寝そべって頬を撫で回した。

「お疲れさん」
「……」
フィンクスは答えない。返事の代わりにボクの髪をわしわしと撫で、鷲掴みにすると、今度はぐいぐい引っ張り回した。こういう照れ隠しじみた仕種も彼なりの愛情表現なのだ。痛いし本当にハゲたら困るのでやめてほしいけど。
「あのさ、いい加減名前決めた?」
「や。考えてねぇわ」
「じゃボクが付けようか?ていうか付けたいんだけど」
「好きにしろよ」
まるで興味なさそうに、ごろんと寝返りを打って背中を向けるフィンクス。
赤ちゃんの命名なんて一大イベントなのに!……と言いたいのをぐっと堪えて、彼のジャージ生地に包まれた腰や太股を撫でるボク。
彼と共に生きていくにあたって。必要がない限り、価値観の押し付けはするまいと決めている。特に家族の在り方については。
流星街では家族という概念がないらしい。捨て子でも地元で産まれた子でも。どんなクソガキでもおませでも、全ての子供は平等に大切に育てられる。
彼はそうやって幸せな幼少期を過ごしたのだ。ボクはフィンクスを尊重したい。彼を育んでくれた流星街を否定するような真似もしたくないのだ。

「ねーフィンクス」
「あ?」
「ありがとね。ボクの子産んでくれて」
「なんでてめーに礼言われんだよ。オレが好きでやったことだろ」
「いやまぁ、それは確かにそうなんですけども」
十月十日重い思いして、痛みを背負ってまでボクの子を産みたいと思ってくれた事実がこの上なく嬉しい。ボクは寝そべったまま彼の体に密着し、後ろから強く抱きしめる。
「ねーフィンクスぅ」
「しつけーなもう。何だよ」
「エッチしよ」
「死ね」
そして彼の豊満なお尻に、熱を帯び始めた股間をぐりぐりと押し付ける。フィンクスは面倒臭そうに舌打ちしながらも、満更でもなさそうに身を捩った。
「勝手にマスかいたらいいだろ。オレ疲れてんだよ」
「いいよいいよ。フィンクスは転がってるだけで」
「眠いんだっつーの」
「じゃ眠ってていいからさ」
抵抗がないのをいいことに、ボクはフィンクスのジャージに手を突っ込み下着の上から股間を撫で回す。指の腹で溝をなぞると僅かに湿っているのが分かる。

(ここから赤ちゃんが出てきたのか……)
感慨深いような、気恥ずかしいような、背徳的なような、言葉では表し難い感情が込み上げてくる。
――フィンクスはどんな表情で赤ん坊を産み落としたのだろう。
激痛で泣き喚くさまは想像がつかない。「いてぇなクソ」だのと舌打ちしながら陣痛に耐え、絶叫を噛み殺し脂汗を滲ませながら、必死に息んで赤子を産み落とす姿が目に浮かぶ。
最低なことに、出産中のフィンクスを想像してボクは大いに興奮した。限界まで拡張された膣口から赤子の頭が出たり引っ込んだり。繰り返し襲う陣痛の波に歯を食い縛りながら耐え、汗と涙で顔をぐしゃぐしゃにして……その姿を思い描くだけで、ボクのモノはみるみるうちに硬度と体積を増していった。

「あのさ」
「あ?」
「お産の時、痛かった?辛かった?」
「覚えてねェな。なんか無我夢中で気がついたら終わってた」
「そっか……」
「それがどうした?」
「いや、なんかその……こう、想像してしまいまして」
「なにを」
「……ここから赤ちゃんが出てくる瞬間を」
「バカかテメェは」
フィンクスは呆れた風に吐き捨てると、後ろ手にボクの股間をまさぐって、陰茎を握り込んだ。
「いやんっ」
思わず情けない声を上げるボクを無視して、ズボン越しにぐいぐいと乱暴に揉みしだく。
「マジで勃ってるよ……気色悪ィ」
「うへへ気持ち悪ィだろ?フィンクスがエッチだからこんなんなっちまったよ、どう責任取ってくれんだよおい?なぁ?なぁ?」
フィンクスは黙ったままボクのズボンを下着ごとずり下ろし、剥き出しになった性器に直に触れた。指の腹でぐりぐりと尿道口を擦る。滲み出た先走りの液を絡めて握り込み、上下に扱く。
「この変態野郎」
罵りながらも彼の手は止まらない。やがてボクも我慢できなくなって、彼のお尻を鷲掴み、衣服を剥いで、今度は直に指を這わせた。
「濡れてんじゃん。久々に旦那さまの勃起ちんちん見て疼いちゃったのかなァ?」
「うるせェ」
中指を入り口に宛がい、ずぷずぷと沈み込ませる。内側の壁は温かくぬかるんでいて、きゅうっとボクの指に絡み付いてきた。

本当なら時間をかけて、あんなことやこんなことをゆっくりじっくり楽しみたいところだが、そんな悠長なことはしていられない。
何しろチビが産まれてからずっとご無沙汰。ボクのアソコは爆発寸前だ。現実問題いつチビが目を覚ますとも分からないし……勿体ないが、ここは手短に済ませるしかあるまい。

「挿れるよ」
返事はない。それを肯定と解釈して、腹這いにさせて、張り詰めたペニスを割れ目に擦り付ける。ゆっくりと前後させて愛液で濡らした後、先端を入口に押し当て、体重をかけて一気に貫く。
「ん……ッ」
フィンクスの唇から艶めかしい吐息が漏れる。膣道を押し広げ、めりめりと肉壁を掻き分けながら進入していく感覚。
何度味わっても堪らない……と思いつつ産前との違いを探る。
前より若干きつい気がする。出産を機に緩くなるという話はよくあるけれど、逆に締まる場合もあるのか。
きついと言ってもガチガチに硬いのではなく、肉の弾力が増してグイグイ圧迫してくる感じだ。油断するとすぐイッてしまいそうで、ボクは下腹に力を込めてぐっと堪えた。

「あー……ヤバ……」
搾り取るような襞の動きに思わず声が出る。もとよりさっさと済ませるつもりだったが、早くも限界が見え隠れし始ている。
「動いていい?」
答えはない。が、僅かに腰が揺れていることからして肯定と見なして良さそうだ。
ボクは腰を引いて勢い良く叩きつけた。パンッ!と肉同士のぶつかる音が響く。
「ん゛ぅっ」
フィンクスの口からくぐもった呻き声が漏れる。構わず続ける。初めはゆっくり……徐々にペースを上げて激しく腰を打ち付ける。
子宮口を押し潰すよう亀頭をぐりぐり押し付けると、分厚い体がびくんと跳ねる。気をよくして構わず責め立てる。
彼の弱いところは把握済みだ。お腹側の浅いところにあるざらついた部分。そこにカリ首の段差を引っかけて、引っかけたままぐりぐりと押し潰すように擦り付ける。これを執拗に繰り返す。
「あぁ……んぅ……ふぅ……」
フィンクスの口から切れ切れに漏れる声は艶を帯びている。感じている証拠だ。
「ヘヘッ、エヘヘッ。気持ちいいのかよ?エロいデカケツ突き出しちゃって」
「っせぇ、んあ」
「フィンクスはボクの子産みたかったんだもんね?だから身重の石だなんて胡散臭いアイテム使ってまで孕んで、『お腹にボクの遺伝子注いで下さい』『卵子にぶっかけて下さい』っておねだりしちゃったんだもんね?」
「やめろ。マジ気持ち悪い」
「ハァッハァ……ッ!ああ、ごめんよ、ごめんよフィンクス!ボク嬉しくて嬉しくて!あのイケメンなフィンクスがママになっちゃうなんて!そんなのさぁ、そんなのさぁ……最高に興奮しちゃうじゃんか!」
ピストン運動を続けながらボクはまくし立て、昂る感情に任せてさらに激しく腰を打ち付けた。
「このまま二人目作る?ねぇ?作っちゃう?今度こそじっくり観察したいなぁ、フィンクスが赤ちゃん産むところ隅々まで写真や動画にして永遠に残しておきたいなァ!」
「ふざけろよお前……」
こうなったボクは興奮がおさまるまで止まらないことをフィンクスはよく分かっているらしい。ラグに突っ伏して尻を高く掲げ、されるがままになっている。

ボクの肉棒が出入りを繰り返す度に結合部から愛液が掻き出され下生えに絡みつく。フィンクスの肉厚なお尻に陰嚢が当たりパツパツと音を立てる。
フィンクスは何も言わず、声を押し殺しながら与えられるままに快楽を享受している。膣襞はボクのモノに吸い付いて離そうとせず、子宮口が鈴口にちゅぱちゅぱと吸い付いて精液を欲しがる。
「あぁ〜もうダメ限界……イッちゃいそう……」
「勝手にしろ」
「出すよ?中に出していい?」
「勝手にしろっての」
「ハァッ!イクッ!出るッ!全部飲んでねッ!?」
「んン……っ」
一際深く腰を沈めると、子宮口に押し付けるかの如く射精した。溜めに溜めた子種はすごい勢いで尿道を駆け抜け、鈴口から迸ってフィンクスの子宮頚部を満たす。
「あ〜〜……最ッ高……」
萎えかけたペニスが脈動する度に新たな快楽が脳天を駆け抜け、ボクは頭が真っ白になるような多幸感に酔い痴れていた。
フィンクスはというと、ラグに横顔を押し付けたままじっとしている。「やっと終わったか」と言いたげなような、余韻に浸っているような、なんとも言い難い表情で呼吸を整えていた。

「もう満足かよ」
「はい、そりゃもう」
「なら早くどけ。ナメクジみたいにベタベタひっついてんじゃねーよ」
「もう少しで完全に萎えますので、それまでこのままいさせてもらえないでしょうか」
「やなこった」
ボクをはね飛ばしながら起き上がり、下半身裸のままキッチンへ移動するフィンクス。冷蔵庫を開けて水のペットボトルを二本取り出すと、一本をボクに投げつけ、もう一本を立ったままラッパ飲みする。
ボクは萎みゆくモノをティッシュで拭きながら彼の背中を眺めていた。ジャージを隆起させる僧帽筋の陰影が美しい。鍛えられた大臀筋が動作の度にプリプリ揺れる様はボクの目を楽しませてくれる。
あの尻を好き放題していいのはボクだけなんだ……と感慨に浸りながら、彼が自分の股間から溢れ出た精液をティッシュで拭っている姿を観察していたら、視線に気付かれじろりと睨まれてしまった。
「なに見てんだよ」
「いやぁ、いいケツしてるなと思って」
「アホか死ね」
さっさと下着とジャージを身に付けベビーベッドを覗くフィンクス。ボクもそれに倣う。
ボクらの愛の結晶が寝息を立てている。その顔がまた貫禄たっぷりで笑いが込み上げて……堪えきれずに吹き出してしまう。
「ブッサイクだねぇ、お前」
「遺伝子が遺伝子だからな。仕方ねェ」
自虐しながらフィンクスは赤ん坊の鼻を指先でつつく。
ボクは以前フィンクスがポロッと言っていたことを思い出して尋ねてみた。

「そういや、お友達はどうしたのさ」
「は?」
「あのコも使ったんでしょ?身重の石」
「あー、フェイタンか?流星街来る前に産んだって言ってたな」
身重の石は男石と女石の二種類ある。そのうち、産みたい方の性別の石を一か月間肌身離さず持ち歩くのだ。
フィンクスは男石、フェイタンは女石の使用を決めた。そして各々子を授かったというわけだ。
大した友情だ。ママになるのも二人一緒だなんて。その絆の強さに若干嫉妬してしまう自分がいる。
「写真しか見てねーが、可愛い女の子だったぜ」
「へぇ」
「あっちは親父も美形だからな」
「何が言いたいんだよ、何が」
「いや別に」
彼の言わんとしていることは分かるが、ハッキリ言われてもムカつくだけなのであえて追及はしないことにする。

――将来、ボクらの息子とフェイタンの娘が出会って恋に落ちるかもしれないな。
そうなったらボクはどうするだろう。
二人の仲を取り持たんと恋のキューピッド役を買って出るお節介ジジイになるだろうか。
息子を誑かす女狐を許すまいと、その母親であるフェイタンに食って掛かるだろうか。
それとも、当人たちの意思に任せて高みの見物を決め込むだろうか。
数年後、数十年後の未来のことは分からない。
ただ今は、この幸せを噛み締めることとしよう。

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