キンタマ狂想曲

「そうそう。ワタシすごい発見(はけん)したよ」
何かを思い出したらしいフェイタン。よっぽど面白いことなのか、話しながらクックッとを喉の奥で笑っている。
「足揃えて股からこぼれた金玉くすぐると、すごくこそばゆいね」
「はははは!なんだそれ」
「それな、昨夜フェイと遊んでたら気付いたんだわ」
「うん。フィンクスで実験(じけん)した」
爆笑するシャルナーク。話に割って入るフィンクス。つまりフィンクスは昨夜フェイタンに大事なところをくすぐられていたというわけだ。
「アホか。どういう遊びだそりゃあ」
突っ込むノブナガ。全くである。
「いやマジで。初めはくすぐったいが慣れればけっこう気持ちいいぜ。えもいわれぬ爽やかな気分になるっつーか、宇宙が見える」
「きとアレね。股の隙間からはみ出ることで金玉のシワいい感じに伸びて、神経圧迫(あぱく)されて敏感になる」
「なるほどなぁ。確かにこう、座った時とかミュッてなるもんね」
「オメーも納得してんじゃねーよ……」
顎に手を当て「うーん」と唸るシャルナーク。呆れたように呟くフランクリン。そして会話についていけないボノレノフ。
「なんの話だ?」
「金玉くすぐると気持ちいいって話。フェイ超うめーから、ボノもやってもらえよ」
「いや、遠慮しておく」
「じゃオレお願いしようかな」
「いいよ。仰向けで両膝抱えて寝転がるね」
「りょーかい」
「てめーらよぉ……」
ストレッチをするように膝を抱いて寝転ぶシャルナーク。呆れるノブナガ。辞退しつつも興味津々の様子で眺めるボノレノフ。そしてフィンクスとフェイタンは楽しげにニヤついている。
「いくよ」
「お手柔らかに頼むよ」
「うん」
「…あっ」
「どうだ?」
「フェイタン、そこ竿…」
シャルナークの蚊の鳴くような声があまりにも情けなくて笑いを誘う。フィンクスはブッと吹き出し、フェイタンは声を上げて笑っていた。
「あっ、おぅふ…」
「どうだ?」
「……やばい。癖になりそう」
「いいよ。もとやてあげるね」
「あ、ちょっと横向きになっていい?この方がやりやすいと思うんだけど」
「うん」
「あぁっ!アーッ…あっ、あ、ぉぉぉ」
「動きキモッ。塩かけたナメクジみてぇ」
シャルナークの反応がツボに入ったのか、クックッと喉を鳴らしながら胯間を撫でるフェイタン。
死にかけの虫を観察する小学生のごとく、しゃがみ込んでシャルナークを見下ろすフィンクス。
「もうギブアプ?」
「もうちょっとお願い。まだ宇宙とか見えてきてないから」
「いや、宇宙ってのはあくまでも例えだよ。あんま無理すんな」
「大丈夫だって。ほらフェイタン、早く続きして」
「OK」
「あぁっ!ハァハァ……アッ!イイッ!」
股間を撫でられビクンビクンと跳ねるシャルナークの姿は哀れであると同時に滑稽極まりないのだが……当人は至って真剣に、こそばゆさを乗り越えた先にあるものを見ようとしているらしい。
「おいフェイ、電気あんまもやってやれば?」
無理すんなと言いながらとんでもない提案をするフィンクス。それを聞くなり、フェイタンの目がサディスティックな色を孕む。
「それいいね」
「ちょ!?待った!!ねぇ待った!!」
「ダメ。待たない」
「あーっ!それはダメ、ホントにヤバいって!あぁダメッ!死ぬッ!死んじゃう!!潰れちゃう!!」
「ハハハ、大丈夫ね。潰さないよう加減してるから」
「いやいやいやいやいや、そういう問題じゃないでしょ!?」
響くシャルナークの絶叫。それを見て笑う者。呆れる者。
「……」
そのさまを呆然として見つめるカルト。まるで世界の終わりのようなシャルナークの奇声がアジトに響く。
「おいカルト、あんま見んなよ」
「あいつらダメな大人の見本だからね。ああいう風になっちゃいけないよ」
「……」
そう言うノブナガとマチの言葉にカルトは無言のまま小さく首を縦に振った。頼まれてもなるものか。
やがて体力が尽きたらしい。さんざん股間をいたぶられたシャルナークは声も出なくなり、ただ白目を剥いて痙攣するだけの存在となった。
「もうヤメね。そろそろ反応薄くなてきたし」
そう言ってシャルナークを解放し立ち上がるフェイタン。
「シャル、どーだった?宇宙とか見えたか?」
「……」
問いかけるフィンクス。腹を上下させながら無言で天を仰ぐシャルナーク。
「死んだな」
「ね。」
「まだこれからが本番なのにな。風呂入って腰浮かして水面から顔を出した○○○に冷水かけるやつも味わわせてやりたかったのに」
「何だそりゃ」
「いや、フェイと風呂入ってる時ふざけてやってみたんだけど。これがまた効くんだよ」
「『効く』って何だよ『効く』って」
「ていうか、お前ら日頃からそんなことしてんのか」
「興味あるならやてあげるよ」
「バカかお断りだわ」
「はは、残念」
(何なんだこいつら…)
と、改めて思うカルト。
バカすぎるフィンクスとフェイタン。呆れツッコミを入れつつ平然と受け入れる旅団メンバーたち。ゾルディック家では考えられないことだ。やはり彼らは異質であり、理解不能な存在である。
だがわざわざ口を挟む気も起きず、彼は黙って我関せずを決め込むことにした。

「せっかくだしカルトやってもらえば?」
「やだよ」

シズクに話を振られて即答するも、結局この後なし崩し的に彼らに付き合わされることになるとは知る由もなかった。

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