初めてのXXX

昨日から分厚く垂れ込めた雲は薄まる様子もなく、ざあざあと雨を降らせている。
毎週一日、修行は休みだ。師匠の住処はここから一町ほど離れている。
顔を出せば何かしら教えてくれると思う。
けれど向こうにも都合というものがある。
せっかくの休日に押しかけても迷惑だろう。

久々に一日中彼と二人きりでいられるわけだが、フェイタンはあまり嬉しくなかった。
フィンクスがどうにも倦んだ様子だからだ。
自分といるのはそんなに退屈なのだろうか?
憎らしく思う一方、この雨を何とかしてやれたらいいのにという気持ちもある。

念で天候をコントロールするとしたら、どういう仕組みにすればいいだろう。
自分のオーラを雨雲や太陽に変化させる?具現化する?どちらにしても、それを天空に放つ必要がある。系統図から見るに変化系である自分は放出系の発はあまり得意でないはずだ。
大気を操るという方法もあるかもしれない。しかしそれは操作系の能力になるので、もっと難しい。

あくまでも想像するだけだ。実際にそんな能力を習得するつもりはない。
大規模で複雑な能力はそれだけ制約が厳しくなるし、そもそも身に過ぎた能力は会得することができない。
まぁ、例えば条件つきで自分の近くにミニチュアの太陽を出すとかなら何とかなるかもしれないが……

「フェイ。腹でも痛いのか?」
漫然と考えていると、彼が歩み寄って声をかけてきた。
「別に。どうして?」
「や。何かブスーっとしてるからよ、具合悪いのかと思って」
「どこも悪くないね。雨うとおしいだけ」
「あー。じめじめしてウゼェもんな。ったく、まるでナメクジにでもなった気分だぜ」
彼はベッドに寝転がって天井を見上げた。
彼女は窓の方を向いたまま、視線だけで彼の横顔を眺める。
飛び抜けて端正というわけではないにしろ、なかなか整った顔立ちだと思う。平らな額。高い眉骨。ぎゅっと締まった薄めの唇。全体的に男くさい印象を受けるが、その無骨さを小造りな鼻やすっきりした輪郭がほどよく中和している。

「そち行てもいい?」
返事を待たずに隣へ滑り込んで、彼の体温を感じられるよう身体を寄せる。
彼は少し驚いたようだが拒絶するようすはない。それどころか端に寄って腕枕までしてくれた。
「あんだよ、甘えんぼさんか」
「少し寒いね」
「しょうがねえな」
頭を撫でられる。この温もりが。匂いが。彼女の心を甘く締め付けることに彼は思い至らないらしい。
「フィンクス」
「ん?」
「気持ちいいことしない?」
「なんだそりゃ」
「セ(ッ)クス」
大きな目が更に見開く。小さな瞳孔が更に収縮する。
「バカてめぇ。滅多なこと言うもんじゃねぇぞ」
「何故?」
「オレらにはまだ早ぇって」
「そう?」
「そうだよ。オレもお前もガキじゃねぇか」
「関係ないね。あと二年もしたらワタシたち人殺しになる。そのために勉強や修行してるくせに、まだ子供なんて何の言い訳にもならないよ」
「それとこれとは話が別だっての。こういうのは好きな奴同士ですることだろ」
「ハハ。ロマンちく」
「悪いかよ」
「心配無用ね。ワタシ、フィンクスのこと好きよ」
「……」
「大好き」

彼女は身を乗り出して、ちゅ、と音を立てて頬にキスをした。彼の顔が見る間に赤くなる。
「ワタシのこと嫌い?」
「……なわけあるか」
「なら問題ないね」
躊躇する彼の胯間を、さりげなく膝で探る。既に硬く張り詰めている。これをあそこに捩じ込まれたらどんな気持ちだろう。考えただけで体の奥がジンジンと甘く疼く。
「したくないならハキリ言ていいよ。嫌々抱いてもらても嬉しくないし」
「あー!ったく、誰もいやだとは言ってねぇだろ」
彼女が服を脱ぐのを見て、彼も観念したように上着に手をかけた。上半身裸になった所で、はたと視線を窓辺に移す。どうやらカーテンが開けっ放しであることに思い至ったらしい。
「閉めるからな」
「うん」
外の雨音が遠ざかると同時に部屋が薄闇に包まれた。裸になった二人は改めてベッドの上で向かい合う。
彼は暫しの間もじもじと逡巡していたが、やがて意を決したように彼女に覆い被さった。彼女はそれに応えるよう両腕を伸ばして、彼の項に手首を回す。

二人とも男女の営みがどういうものか知らないわけではない。
以前廃棄場で遊んでいた時アダルトビデオを拾ったことがある。そうとは知らずに持ち帰って再生したら、いきなり大人の男と女が激しく絡み合っていたのだ。
『なんだこれ。気持ち悪っ!』
画面いっぱいに無修正の結合部がクローズアップされたところで、彼が悲鳴を上げて再生機器の電源を切ったのを今でもよく覚えている。
そのビデオはすぐ捨ててしまったし、話題に出すのも気まずくてお互いに触れずにいたのだけれど、彼女は未だにその内容を忘れられずにいる。女優の陶然とした表情が脳に焼き付いて離れず、思い出す度に下腹部が疼いて仕方なかった。
男を股座に受け入れるのはそんなに気持ちいいのか。あれを彼としたら一体どんな感じなのか。彼はどんな表情で自分を抱くだろう。
あの時の妄想が現実になろうとしている。彼女は今まさに、彼とまぐわおうとしているのだ。

「フェイ、マジで……いいんだな?」
「そちこそ。やめるなら今のうちね」
「今更やめれるかっつーの」
どちらからともなく唇を重ねる。緊張と遠慮を大いに孕んで、ちゅっちゅっと子供っぽいキスを何度も繰り返す。
やがて接吻にも飽きてきた頃、彼は彼女のまだ平らな胸をまさぐり始めた。
彼もビデオの内容を覚えていたらしい。男優がしていたように乳首を指先で摘んで捏ねて、くすぐったさに悶える体を押さえつけるよう執拗に攻め続ける。
彼女も女優のマネをしてわざとらしい声を出してみようかと思ったが、やめた。猫なで声で「気持ちいい」だの「ダメェ」だの言いながらクネクネと悶える自分の姿を想像すると気持ちが萎えてしまいそうだ。
「なぁフェイ、どんな感じだ?」
「……さぁ。ヘンな感じ」
「ふーん」
左胸に吸い付い付かれた。舌先が突起に触れる度、えも言われぬ感覚でビクビクと身体が震えてしまう。
これが快感というものだろうか?それにしても必死に乳首を吸う彼のいじらしいことときたら。こそばゆさと相まって腹の奥から笑いが込み上げてくる。
「ハハ、赤ちゃんみたい」
「あ?今何つった?」
「怒ることないね。可愛いてこと…、ン!」
むっとした彼に歯を立てられ思わず息を飲む。チリッとした痛みはすぐに甘い痺れへと変わる。同時に右側の胸をぎゅうと掴まれ、思わず背筋が反り返る。
「あ、あああ……、ヒ、!」
「なんだお前、気持ちいいのか」
「分からない。けど悪くないね」
「へへ」
彼は満足そうに笑うと、彼女の秘部に指を這わせた。つるつるしたそこは既に潤っていて、彼が少し触れただけでぬちゃりと卑猥な音をたてた。
「ここ、なんかヌルヌルしてんぞ」
「言わなくていいよ」
「お前スケベだな。オッパイ噛まれてこんなになってんのかよ」
「言うなて言てるのに」

気をよくしたらしい彼は彼女の両脚を大きく開かせ、その間に顔を埋めた。何をされるか察した彼女は、いやだと言って彼の頭を押し返す。しかし彼は聞く耳を持たず、幼い蕾にむしゃぶりついた。
「!?ひゃあ!ヤダ、あ、ああ!」
熱い粘膜に覆われて、彼女は腰を浮かせて身悶えた。電流のような刺激が脳天まで突き抜ける。
「あ!やだ、フィンクス、だめ」
「危ねーだろ。暴れんな」
「あ、ア!やだやだやだ、それイヤ、アァ!」
彼は執拗に肉芽を舐り続けた。彼女はシーツを握り締め、いやいやと頭を振って喘ぐ。ざらついた温かい粘膜で敏感な箇所を愛撫される。今までに味わったことのない強烈な悦楽だった。強すぎるそれは苦痛にさえ近い。頭がおかしくなりそうだ。けどもっとほしい。彼女は無意識のうちに自ら股を開き、更なる愛撫を求めていた。
「このチンポみたいなやつ固くなってきたけど、大丈夫なのか?」
男と同じように勃起しているのが不思議らしく、くりくりと指先で陰核を転がしながら彼が言う。
「あまり見るのダメ」
「見ねぇでどうやって触んだよ」
「……」
「なんか言えってば」
「もう、ウザイ。黙る」
「おい。自分から誘っといてウザイはねーだろ」
「黙れつてるね」
「ケッ。分かったよ」
「ん!……ふ、んん、」
唇を奪われる。初めの口づけとは違う、舌で口内を蹂躙する濃厚な接吻。自分の性器の味に顔を顰めながらも夢中で舌を絡める。そうしている間にも小さな穴から止めどなく蜜が溢れる。その滑りを纏った彼の中指が、ゆっくりと侵入してきた。
「ぁ、……!」
「……痛ぇのか?」
「ちょとだけ。でも大丈夫」
何だかんだで彼は優しい。どんな感じか。痛くはないか。と都度確認してくれる。
指の出し入れが始まる。最初は異物感しかなかったが、やがてじくじくと疼くような感覚に変わる。
触られてみて初めて知った。膣内は随分凸凹しているらしい。これで男を包み込み、刺激を与えて気持ちよくさせて、種を搾り取るわけだ……生命の神秘というべきか。全くよくできている。
「ここにチンポハメるんだろ。指一本で痛いんじゃ厳しくね?」
「ま、何とかなるね」

何てことはない。大人なら誰でもしていることだ。
世界の何処かでは十歳そこそこで嫁いで母親になる女もあるらしい。出産が元で死ぬこともあると聞く。幸いというべきか彼女はまだ初潮を迎えていないので、まだ孕むおそれはない。
彼女はふと考えた。自分もいつか子供を産む日が来るのだろうか?その相手は?このフィンクスか?それとも別の仲間か?あるいは未だ見ぬ他人だろうか?
そもそも近い将来沢山の人を殺すとして。自分は我が子を抱く資格があるのだろうか?

「フェイ、そろそろいいか?」
「うん」
思考を中断する。考えるのはやめだ。今はただ目の前の男と一つになりたい。
彼の手に握られているものは怒張しきって天を向いている。あれを入れるのか。あんなものが本当に入るのか。不安もあったが好奇心の方が勝った。早く貫かれたい。彼女の視線に気づいた彼が問う。
「何だよ」
「……別に」
はぐらかすように笑って、彼女は手を伸ばしてそれを軽く掴んでみた。温かい。血液が集まってびくん、びくんと脈打つのが分かる。
緊張の面持ちで彼が覆い被さってくる。彼女の両脚を抱え上げ、先端をあてがい、体重をかけて押し入ってきた。

覚悟していたとはいえ、痛い。想像以上の圧迫感に思わず息を飲む。
「……大丈夫か?」
「う、ん……へいき」
「何だろ、すげー狭い。全部入んのかコレ」
「いいから続けて」
「ん」
少しずつ、少しずつ奥へと進んでいく。細い下がり眉をギュッと寄せて激痛に耐える。途中で何か破れたような気がしたけれど気に留めている余裕はない。それよりも彼と繋がったことへの喜びの方が大きい。
「……全部入た?」
「おう……これヤベーな。チンポ千切れそう」
手触りで結合部を確認する。彼女と違い、彼のそこは既に陰毛が生えかけている。まだ産毛のようなそれが無毛の秘部に触れて何ともこそばゆい。
幼い膣口は限界まで拡がりきっている。湿度の高い空気に乗って、愛液とは少し違う鉄臭いようなにおいが鼻を突いた。
「なんか血出てるけど、本当に平気か?」
破瓜の血を見て心配になったようだ。ない眉を寄せて狼狽する彼の顔ときたら、まるでこっちが悪いことをしたような気分になる。
「……ま、多分」
「多分じゃ困んだよ」
「平気ね。初めての時血出るの普通て聞いたことある」
「なぁフェイ、無理すんじゃねーぞ。オレに心配かけたくないから嘘つくとか、そういうの全然嬉しくねぇからな」
「大丈夫だてば。フィンクス心配性ね」
彼女は苦笑し、彼を抱き寄せてキスをした。先ほどと同じように舌を差し込んで絡める。互いの唾液を交換し合う。
「……で。動きゃいいのか?」
「うん」
唇を離すなり、彼は律動を開始した。
最初はゆっくりだった。次第に速度を増していくピストン運動に、ベッドがぎしぎし軋む。
痛い。全身の神経が女性器に集中してしまったかのようだった。肉棒が出入りするたび鈍痛が走る。
正直快楽どころではないのだが、やめてほしいとは微塵も思わない。今この瞬間、彼に抱かれているのだという幸福感が苦痛を和らげてくれる。
「あ、あ、はぁ、あ……!」
「ヤベェ、気持ち良すぎ」
よかった。彼は気持ち良くなっているらしい。
「なぁ。もっと動いてもいいか?」
「うん」
腰の動きが激しくなる。ぱちんぱちんと肌同士がぶつかる音が響く。熱に浮かされながら懸命に彼の背中にしがみつく。
「フェイ、好きだぜ」
耳元で囁かれて胸がきゅっと苦しくなる。
答えのかわりにキスをせがむ。今度はこちらから舌を絡める。同時に下腹部に力を入れてみる。ただでさえ狭い膣に締め付けられて、彼が小さく呻いた。
「バカお前、出たらどーすんだよ」
「別にいいね」
「ダメだって」
「平気。ワタシまだ子供できないし」
「そういう問題じゃねぇだろ」
「いいから」
中に出して。と強請ると、わかったよ。と照れ臭そうに応えてくれた。
抽挿が更に激しくなる。やがて止まる。彼のものが脈打つ感覚を。体内で奔流するものを。密着した胸から伝わる鼓動を感じて、言いようのない充足感に包まれる。
どのくらい抱き合ったままでいただろうか。萎えたものがずるりと抜けて栓を失ったそこから、血液混じりの白濁が零れてシーツに染みを作った。

「……ヤベェ。シーツ汚れちまった」
先に口を開いたのは彼だった。
彼女の上から退くなりその箇所を確認して、「あちゃー」と言わんばかりに額に手を当てる。
「洗濯すればいいね」
「つっても雨降ってるぜ」
「……ああ、確かに」
そういえばそうだ。昨日からずっと雨降りなのだった。もっとも、明日晴れてくれれば何の問題もないのだが。

「とりあえず水に浸けとくか。もし師匠に何か言われたら、おねしょしたとかテキトーこいときゃいいだろ」
「いいけど。漏らしたのフィンクスてことにしてね」
「は?何でだよ」
「『何で』て、言い出したのフィンクスだし」
「ざけんな。元はと言えばテメーが誘ってきたんじゃねぇか」
「自分だて乗り気だたくせに」
「そりゃそーだけど」
彼はまだ何か言いたげだったが、ハァと短く溜息を吐いて頭を掻くと、黙った。
「まぁいいや、言い訳はオレが考えるわ。バレたらお前も一緒に怒られろよな」
そう言って起き上がる。彼女もそれに倣って体を起こした。

「……ていうか、アソコ痛くねぇか?」
「痛くないね」
破瓜の痛みは既に引いている。今はじくじくした異物感と、血と愛液が乾きかけてきた不快感があるだけだ。
立ち上がろうとして腹に力を入れると腟内に残った液体が流れ出した。ぶちゅりと放屁じみた音が鳴ってしまい、慌てて内股を閉じる。
「風呂入るか」
「うん」
「んじゃオレ入れてくるわ」
「うん」
聞こえなかったふりをして風呂場へ向かう彼の後ろ姿を直視できないまま、溢れ出す粘液を手で受け止める。

「ほい」
一旦踵を返し、ちり紙の入った箱を投げて寄越して、彼は今度こそ風呂場へと消えた。
彼女はティッシュペーパーを数枚引き出して薄赤い粘液を拭き取る。

窓の外では相変わらず雨粒が地面を叩く音が聞こえる。遠くの方で雷鳴が轟いた。
この分だと明日も雨降りだろうか。あまり雨続きだと洗濯物が溜まって面倒だ。愛の痕跡の染みたシーツをベッドから剥ぎ取りながら、彼女はぼんやりと思った。

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