足ぶつけちゃったよ

「どうしたフェイ。びっこ引いて」
相方のおかしな歩き方を訝り、ぎょろりとした目を更に見開いて問うフィンクス。
「ちょとね。足痛い」
「なんで?」
「ぶつけた」
「いつ?」
「今朝」
よほど痛いのか、ぐしゃりと眉間を歪めて答えるフェイタン。
彼の言うことにはこうだ。今朝五時頃、目を覚まし、その身にのしかかるフィンクスを引き剥がしてベッドから降りた。
シャワーでも浴びようと思ったのだが、降り立った位置と、歩調に勢いをつけたのがいけなかった。
歩みを進めると同時にベッドの足に左足の薬指を強かにぶつけて、暫し無言でのたうち回った。
まぁ、足の指を強打して悶絶なんてよくある話だ。己の間抜けさを呪いつつも別に大したことはあるまいと放っておいたのだが、ここに来てぶつけた箇所の痛みが増してきたのだという。

「マジか。全然気づかんかった」
「うん。ワタシ痛がてるのにフィンクス気持ちよく寝てたもんね」
「起こせばよかったのに」
「ゼタイいや。『足ぶつけた痛い』なんて言たら笑うに決まてるね」
「アホか、んなことで笑わねーよ。取り敢えず見してみ」
呆れたように言いながらフェイタンを抱え上げ、履き物を脱がせて左足を見るフィンクス。

「成る程。折れちゃいないっぽいな」
「曲げたり圧迫(あぱく)しなければ痛くないよ。靴脱ぐとだいぶ楽」
どれほどの勢いでぶつけたのか、フェイタンの言う箇所は赤くなってパンパンに腫れていた。確かにこれを、あのきつそうなブーツで押さえつけていては痛くて仕方がないだろう。
「氷とってくるか?」
「別に平気」
「あ、それで思い出したんだけどよ」
「?」
「セックスしてる間って頭痛とか歯痛とか、痛いの忘れるらしいんだよな。気休めくらいにはなると思うんだが、試してみねぇか?」
「……」
最低すぎる提案にフェイタンは心底軽蔑したという表情を浮かべるが、当のフィンクスはまるで気にしない様子である。
「ま、嫌なら無理強いしねぇけど」
「…ハァ」
諦めたように溜め息をつくフェイタンだが、内心まんざらでもないといった風情だ。
結局フィンクスの提案を受け入れることにしたようで、ソファの上に仰向けに横になって受け入れる体制を取ってみせた。
「このスケベ。早く終わらせる」
「いや、痛いのごまかすためにするわけだし。早く済ませたら意味ねーだろ」
覆い被さって唇を重ねる。舌先でノックするとすんなり受け入れられたので遠慮なく絡め合わせた。そのまま唾液を交換し合い、相手の口腔を犯し合う。
互いの呼吸が荒くなるにつれてキスも激しさを増していき、やがてどちらからともなく離れた頃には二人ともすっかり興奮しきっていた。

「どうだ。多少マシになったか?」
「何もしなければ痛くないんだてば」
会話をしながらジャージをずらして既に勃ち上がりかけた逸物を取り出すと、それをフェイタンに見せつけるように軽く扱き上げた。
「ハハ、大きい」
フェイタンは苦笑しながらそれに舌を這わせ、やがて口に含んで吸い上げた。
何度経験しても気持ちいい。こうしてフェラチオをしてもらう度に思うことがある。
(コイツ、ホント巧くなったな)
初めてしたときなんかは口に突っ込んで舐めるだけだったのに、今ではもうセクシー女優顔負けのレベルにまで成長している。
フィンクスの弱い所を知り尽くしたうえで執拗に攻めてくるものだから、あっという間に射精感が高まってくる。
このままではいかんと腰を引いたが、その途端に口の中のモノがずるりと抜け出てしまった。
どうやらフェイタンが意図的にそうしたらしく、彼は上目づかいでこちらを見つめたまま、見せつけるようにして口を開けてみせる。そこには唾液と我慢汁が入り混じった液体が糸を引いていた。

「お前、どこでそんなん覚えてきたんだよ」
「ふふ」
質問に答えず再び肉棒を口に含むと今度は喉の奥まで使って愛撫してくる。
尿道口やカリ首を刺激されるだけでも充分気持ちが良かったが、この全体を包み込まれる感覚は何にも代え難いものがある。そろそろ限界が近いと感じてフェイタンの頭を掴んで引き剥がそうとするが、逆に強く吸われて動けなくなってしまった。
「フェイ、ギブ。離せ」
「んー」
聞く耳持たずと言った感じでより一層激しく責め立てられる。
「出ちまうって。ハメなくていいのか?」
「うーん」
渋々といった顔で一旦離れると、次は自分から下着ごとズボンを脱ぎ捨てて、左足を庇いつつ、フィンクスに背を向けて跨る姿勢を取った。
寒いのか縦割れのアナルがきゅっと収縮している。その淫猥さに思わず唾を飲み込む。

「あ、」
唾液で湿らせた右手の中指を差し入れる。中指で腸内を愛撫する一方、他の指でその周囲を撫でる。肛門周りの皮膚と粘膜の中間のようなつるつるした感触が好きだ。フェイタンもそこに触れられると独特の官能が動くらしい。
「ん、」
体内の腹側にあるぷっくりとした膨らみを強く押してみると、小さな体がびくりと震える。
「はぁ、あ、」
甘い吐息が漏れ始めたところで薬指も挿入し、二本同時に動かした。
「だめ、フィンクス……」
駄目と言いつつも悦んでいることは明らかで、腸壁が小刻みに痙攣している。

「フェイ、一回イっとけよ」
「あ…!」
右手で前立腺を刺激する傍ら、左手でフェイタンのものを握り、親指の腹を鈴口に宛がい、ぐりぐりと押し付ける。
「ああ、…」
ビクビクと体を震わせると同時に先端から白濁液が飛び散る。フィンクスはそれを掌に受け止め、ローション代わりにフェイタンのアナルに塗りつけた。
「挿れるからな」
細く引き締まった腰を掴み、一気に突き入れる。
「あ、ああ」
達したばかりの体に捩じ込まれて苦しげに喘ぐフェイタン。それは苦痛によるものでなく快感によるものだ。その証拠に結合部は物欲しげにヒクついて、内壁はきゅうきゅうと締め付けてきている。
一度奥まで到達したところで再び引き抜き、そしてまた深く差し入れていく。
引き抜く際カリ首が括約筋に引っ掛かる感覚が堪らないらしく、その度に切なそうな声を上げる。フィンクスの視点からは伸びきった肛門が引っ張られるさまがよく見える。出口を火山のように変形させた姿はまるで太い大便をひり出しているようで、実に滑稽であり官能的だ。

「ん、んん、」
抽送を繰り返すうちに段々と動きがスムーズになってくる。
「あ、あん、ひいぃ」
最初は控えめだった声も今ではすっかり甘さを含んでいて、気をよくしたフィンクスはさらに速く強くピストンを繰り返した。
抱き上げて駅弁の格好で犯す。自重によって更に深いところまで入り込み、フェイタンの喉から短い悲鳴が上がる。
「イヤ、これ、深すぎ、」
「深いの好きだろお前。落っこちないように掴まってろよ」
「…うん」
不服そうにしつつも両手両足を使ってしがみついてくる。まるでコアラみたいだと内心で笑いながらも突き上げ、S状結腸を責め立てる。
「あう!」
串刺しになった身が強ばる。その瞬間、肉棒が一層きつく絞られて危うく暴発するところだったが何とか堪えた。

「フェイ。ウンコする時みたいに息んでみ」
「…ハ?」
「突然変なことを言うなよ」とでも言いたげな顔で見上げてくるも、すぐにその意図を汲み取ったらしい。少し渋りながらも言われた通りに腹に力を入れてくる。
「…ん」
「そーそ。上手い」
開いた腸に亀頭がめり込む。入ってはいけない所に入ってる。前立腺を擦られ腹の奥深くを犯され、フェイタンは切れ長の目を見開いて、呼吸すらままならないようすで必死にフィンクスにしがみついている。

「かは……ぅぐ、はあ、あぁぁ」
「おー締まる。気持ち良いぜフェイ」
「ダメ、これ無理ね、抜いて」
「やなこった」
射精しそうになるのを堪えて律動を続けると目を白黒させ、半狂乱になりながらも懸命に逸物を締め付ける。そのさまがまたフィンクスの加虐心を煽る。
「ああぁ、もう無理、ダメ、無理、死ぬ」
「いーよ。ほら天国行っちまえ」
「あ、〜〜〜…!!」
一際強く腰を打ち付けた瞬間、フェイタンは背を大きく仰け反らせて絶頂を迎えた。

(こわっ)
一旦動きを止めて落ち着くのを待つ。全身を硬直させ、軽く白目を剥き、ビクンビクンと震える姿は本当に断末魔のようである。
「おい。生きてるか?」
片手でフェイタンの尻を支えながら、片手でペチペチと頬を叩き呼びかける。虚ろな目がフィンクスを捉え、「殺す気か」と言って睨む。
「わりぃ。でも大丈夫そうだな」
再び抽送を開始する。
「大丈夫違うよ、ワタシイ(ッ)たばかり」
「知ってる」
「バカ、止まる。本当に死んじゃう」
「俺はまだいけるんだよ」
「ああ!」
容赦なく攻め立てられて為す術もなく快楽に溺れていく。その姿にフィンクスはいっそう気をよくして、より激しく腰を振り、フェイタンを追い詰めていく。
「あ、あ、あ、」
「あー出る。出すぞフェイ」
「〜〜〜!!」
フェイタンが二度目のドライオーガズムを迎えたあと、フィンクスも限界を迎える。どくんどくんと脈打ちながら大量の子種を流し込んでいく。

「…お前、ほんと最悪ね」
ようやく終わった後、フェイタンは恨みがましそうに唇を尖らせた。
「なんでだよ。良かっただろ?」
「良くないね。すごく疲れたし、お尻ヒリヒリする」
「そりゃ悪かったな。調子こきすぎた」
「…………」
「機嫌治せよ」
頭を撫でると不承不承といった感じで擦り寄ってくる。

(…あれ?)
こういう所が愛おしいと思いながら、はたと気がつくフィンクス。
自分は、彼の足の痛みをごまかすためにセックスをしようと提案した。しかし本人は何もしなければ痛くないと言う。
鎮痛の必要がないとしたら、これはただのセックスと違わないのではないか?

「フィンクス?」
黙っているとフェイタンが顔を覗き込んできた。
「お前、何もしなけりゃ痛くないんだっけ」
「うん」
「何だよ。じゃ無理に乗ってくることねーのに」
「ああ、あれ本気だたか。ワタシてきりエ(ッ)チする口実にあんなこと言い出したのかと思た」
「は?お前、俺がそんな奴に見えるのかよ」
「ごめんね。ワタシ誤解してたかも」
「ま、半分当たってるけどな」
「……やぱり」
「冗談だって」
「その冗談笑えないね」
笑えないと言いつつも破顔しながら、フェイタンは続ける。
「口実なんか作らなくてもさせてあげるのに」
「あそう。そりゃどーも」
…こうやってデレるのは狙ってやっているのか。天然なのか。何にしても、いやいや応じたというわけではなさそうだ。
フィンクスの安堵をよそに首筋に鼻を埋めてスン、と匂いを嗅ぐフェイタン。
「いいにおい」
「なわけあるかよ。汗かいてるし煙草くせーだろ」
「臭くないよ。ワタシフィンクスのにおい好き」

肩口に額を擦り付けて甘える仕草が可愛くて、つい手を伸ばしてしまう。指先で耳たぶを弄んでやると心地良さそうに目を細める。

「今日は一日イチャイチャして過ごすか?」
尋ねるとフェイタンは嬉々として首肯した。

(足をぶつけてイラッときて思いついた話)

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