ゲーム日和(フィンフェイ)

「なぁ、フェイ」
「何?」
「しようぜ」
「何を」
「セックス」

うつ伏せに寝転び、肘で上体を起こし、無心にテレビゲームをプレイするフェイタン。今はいつもの服ではなく黒いジャージを身に付けている。
そんなフェイタンを愛の営みに誘うフィンクス。髪を下ろした彼もまた横向きに寝っ転がって、例によってジャージ姿で、フェイタンの小さな尻をペシペシと叩いている。これではムードも何もあったもんではない。

「見て分からないか。ワタシいま忙しいね」

フェイタンは片手でコントローラの操作をしながら、尻を撫で回すフィンクスの手を、まるで虫でも潰すかのようにペシッと払いのける。

「なんだよノリわりーなぁ。ゲームなんかいつでもできんだろうがよ」
「ワタシ今ゲームしたいね。勝手(かて)にマスかいたらいいよ」
「お、そういうこと言うか」
「言(ゆ)たからどうした」
「じゃあ勝手にやらせてもらうわ」
フィンクスはそう言うなり、フェイタンのジャージに手をかけて下着ごとずり下げた。

「チッ。好きにするね」

下半身を露わにされたフェイタンは渋い顔をして、しかしフィンクスの申し入れを受け入れた。

「ったくよぉ……可愛くねーな」

フィンクスは毒づきながらもフェイタンの股の間に割って入った。そして自分のズボンを脱いで勃起しているペニスを取り出し、フェイタンのアヌスにあてがう。

「さすがにいきなりは無理だな」
「馬鹿か。当たり前ね」

しかしながら濡れてもいないそこはピッタリと口を閉ざしており、まるで肉の壁を突いているようであった。

「しゃーねぇ。ちょっと待っとけ」

フィンクスはその辺に転がしてあるローションを手に取ると、ゆっくりと指を挿入していった。

「ん……」

異物感を感じながら、僅かに身を震わせるフェイタン。
そんな彼の反応を見て気をよくするフィンクスだったが、彼はすぐに違和感を覚えた。

(あれ)

いつものような食い千切らんばかりのキツさがないのだ。それどころか、むしろ……。

「お前、まさか自分でヤったのか?」
「……」
「いつ?どこで?なんで?」

他所の男を咥え込んだということはあり得ない。今日は外出もせず、一日中ごろごろしていたのだから。
フェイタンは無言のままテレビ画面を見つめていた。その目は真剣そのもので、コントローラーを握る指にも力が入っているように見える。だがそれはポーズボタン操作のためであって、決してプレイ中のゲームのせいではなかった。

「おい答えろよ。答えないとこのまま突っ込むぞ」
「……」

フェイタンは何も言わない。ただ黙って画面を見つめているだけだ。

「シカトこいてんじゃねぇぞテメー」

だんまりを決め込むフェイタンに、フィンクスはだんだんむかっ腹が立ってきた。

「……あっそ。じゃあいいわ」

そうかと思うといやに冷静になり、半ば自棄気味になりつつ言った。

「あとで泣いても許してやんねーからな」

言い終わる前に、一気に腰を突き入れた。

「ぅぐ!!」

突然の出来事に驚くフェイタン。いきなり拡張された肛門が悲鳴を上げるように痛んだ。
フィンクスはひとつ息をつくと、そのまましばらく動かずにいた。繋がったまま二人は一言も喋らなかった。聞こえるのはテレビからの電子音だけ。
やがて抽挿が始まる。最初は慎重に抜き差しを繰り返していたが、徐々に激しくなっていくピストン運動に合わせて、フェイタンの口から切なげな声が漏れるようになってきた。

「あ……はぁ……」
「なんだよフェイ。気持ちいいのか?」

意地悪な顔で問いかけるフィンクス。フェイタンは相変わらず無言だ。ただ、甘い喘ぎ声がフィンクスの質問を肯定していた。

「へっ、素直じゃねー奴」

そう言いつつもフィンクスの顔には笑みがあった。それから、フェイタンの肩口にがぶりと噛みつく。
切れ長な目が見開かれ、細い喉が「いっ」と鳴った。ぎりぎりと上下の顎を噛み合わせ、口を離すと、生白い肌にくっきりと歯形が残っていた。

「いい加減、何とか言ったらどうだよ」
「あ……」

首筋に吸い付かれるとフェイタンはビクリと背をしならせ、かすかに首を横に振った。

「ま、いいけどよ」

フィンクスはそう言うとフェイタンを抱え上げ、大きく開脚させた状態で揺すり上げる。

「ひぃ!い、ああぁ」

思わず手放したコントローラがゴトリと音を立てて床に落ちる。S状結腸を責められ、フェイタンはたまらず大きな声で喘いだ。

「はっ。やっと口きいたな」
「う、うるさい……!」
「もっといじめてやるぜ」

フェイタンを羽交い締めにするように抱き締めて、フィンクスはさらに激しく動いた。

「や、めぇ、あ、はぁ、はげしい、よぉ!」
「激しいの好きだろ?ほれ、どうだ?」
「ち、ちが、あ、だめ、そんなにしたらいく、いちゃ……う」
「イケよ。イカせてやるから」
「いゃ、いやぁ、は、はなせ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、」
「イク時はちゃんと言えよ」
「い、い、く……ッ!!は、はぁ、は、は、はぁ、は」
「よくできました」

フェイタンが絶頂に至るのを見届けると、優しく頭を撫でるフィンクス。ぐったりとして目を閉じているフェイタン。

「フェイ、まだ終わってないぞ」
「え……」
「オレがまだイッてねーよ」

そう言うなり再び動き出した。

「も、もう無理ね、離すよ」
「言われなくても離してやるよ。俺がイッたらな」
「ふざけんな、あ、やぁ、あ、は、はぁ、あぁん!」
「ははは。鼻水出てんぞお前」
「ぅるさぃ、あ、ぅ」
「お前ってつくづくドMだよな」
「だまれ、このクソ野郎、あ、は、は、ひぃぃ」
「お、締まった。罵られて感じてんのか」
「黙れつてるね……」
「黙んねーよ」

フィンクスはフェイタンを抱き留めながら、ラストスパートをかけた。

「中に出すけどいいよな?ま、ダメっても聞かねーけど」
「……もう、勝手(かて)にしろ」
「じゃ遠慮なく」

そしていっそう腰を密着させ、フェイタンの中にたっぷり種付けした。暫しの間、繋がったまま余韻を味わう。やがて萎えてきた陰茎をずるりと引き抜いて、約束通りフェイタンを解放した。

「はぁ、はぁ……」

息も絶え絶えに床に突っ伏すフェイタン。その尻からどろりとした白濁液が流れ出るのを見て、ニヤリと笑うフィンクス。

「あーあ。こんなドロドロになってカワイソーに」
「……誰のせいと思てるか」
「でも気持ちよかったろ?」
「……」

フェイタンはローテーブルに置いたティッシュペーパーの箱を取り、黙って汚された場所を拭いた。フィンクスは無言でその様子を観察していたが、「ぶちゅ」と音を立てながら精液をひり出す其処に興奮を覚えて、再びフェイタンに覆い被さった。

「何するね」
「もう一回ヤろうぜ」
「殺す気か。それにワタシ、ゲーム途中よ」
「あとで対戦付き合ってやるよ」
「……」

フェイタンは何か言いたげであったが、呆れたようにため息をついてフィンクスのしたいように身を任せる。
スピーカーからは相変わらずゲームBGMが鳴り響いていた。

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