きずぐち(フィンフェイ)

「お。いたのかフェイ」

そう呼ばれた人物――フェイタンは、仮宿に帰還した男――フィンクスへ目を向けた。
フィンクスのジャージの裾を捲った左腕には真新しい傷があった。

「お前、血出てるね。見せるよ」
「あ?平気だこんくらい」
「ダメよ感染症危険。傷からバイ菌入て肉が腐るね。そしたらお前、さんざん苦しんで死ぬかもしれないよ。それでいいか?」
「へーへー。そんな脅かすなっての」

雑菌くらいで死ぬほどヤワではないが、そう言われて頑なに断る理由もない。
フィンクスは促されるままフェイタンが座っていた椅子に腰掛けて左腕を差し出した。

「成る程、思たほど深くないね」
「おい」
「消毒。おとなしくするよ」

しげしげと腕を観察したあと、フェイタンは傷口に舌を這わせた。赤い舌が静脈の浮いた太い腕を這う姿は否が応でもフェラチオを連想させる。ちらちらと上目遣いに向けられる視線が、余計フィンクスの劣情を煽った。

「……フェイお前。今すげぇスケベなこと考えてるよな」
「スケベはお前よ」

フェイタンの眼前にあるものはすっかりいきり立って、ジャージの布地を破らんばかりに押し上げている。

「ハハ。テントみたいね」

フェイタンは笑うとマスクを引き下げて、フィンクスの逸物を露出させ口に含む。
小さな唇でふにふにと睾丸を咥え、裏側を舐め上げ亀頭を吸って。ねっとりした愛撫の間に物欲しげにフィンクスを見上げてくる。

「気持ちいいか」
「んー、なぁ。挿れていいよな」
「いいけど。ワタシも準備する必要あるね」

よほど可笑しいのか、くっくっと喉を鳴らしながら服を脱ぎ捨てる。裸になったフェイタンもまた昂っていた。

「笑いすぎだっての。俺のチンポはそんなに可笑しいかよ」
「ふふふ。これ使て慣らすよ」
「ほい」

手当てに使おうとしていたであろう軟膏を手渡され、それを指に取ってフェイタンのアナルに塗り込む。
きつい穴に中指を突き入れてグリグリと擦り込むと、細い喉が苦しげに鳴った。

「ン、ふぅ……」
「痛いか?」
「ちょとだけ、でも大丈夫ね」

中指と人差し指が根本までずっぽりと収まった。中で開いてやると、ぐぱぁっと肉の壁が捲れ上がる。
その淫猥な光景にフィンクスはゴクリと生唾を飲み込んだ。

「もういいよな」
「うん」
(あ。)

コンドームをつけねばと思い至ったが、もう我慢が効きそうもない。
フィンクスはフェイタンを押し倒して、柔らかく解れた場所に挿入を開始した。

ひゅうっ、とフェイタンの喉が鳴る。小柄な彼には不釣り合いな。暴力的なまでの質量を持った逸物が。みちみちと音を立てて呑み込まれていく。

「中、きっつ……」

肉棒を食い千切らんばかりの締め付けにフィンクスが呻く。フェイタンは腸壁を押し広げられる感覚に歯を食い縛り、あるいは息を逃して耐えきった。

「あぁ!あァ!」

奥まで貫かれると激しく喘ぐ。何度目かの突き上げと同時に達し、勢いよく射精して互いの腹を汚した。

「はぁ、はぁ……」
「早くねぇ?」
「うるさいね」
「三擦り半でイッてんじゃねーよ。ちったぁ根性見せろや」

先程のお返しとばかりにからかいながら、フェイタンの尻を突き上げるフィンクス。
絶頂直後で敏感になっている身体を容赦なく攻め立てられ、フェイタンはいっそう深い快楽の海へと沈んでいく。

「はは。エロいなフェイ」
「ん……もと、奥」

フェイタンは更なる快感を得ようと自分からも腰を振り始めた。

「このスケベ野郎が」
「ひ、ぎぃ」

ズン、と腹の底に響く衝撃を受け、フェイタンは堪らず再び精を放った。

「またイクのかよ。ホント早漏だな」

フィンクスの茶々に反応することなく、びく、びく、と震え背を仰け反らせている。射精直後にドライオーガズムに至ったようだ。

「マジかお前。どんだけサカってんだ」
「はぁ……」

虚ろな目のまま、ゆっくりとフィンクスの頬を撫ぜる。

「気持ちいいよ……フィン」
「そりゃようござんした」

甘えるように腰を揺らし口付けをせがむフェイタン。

「ワタシの中に出すよ」
「ん」

応えるように唇を重ねれば、熱い舌が絡みついてきた。

「あ、あーッ……」

結腸をいっそう激しく突き上げられ、呆けた顔で喘ぐフェイタン。

「ははっ、イキすぎだろオメー」
「んうぅ〜……」

フェイタンが果てるのとほぼ同時に、フィンクスも狭い腸内に精子を吐き出した。

―――

あれから数分後。精魂尽き果てたフェイタンは、裸のまま死んだように床に寝転んでいた。

「で。これどうすんの」
「大丈夫ね。もう塞がてる」

フィンクスに興味を失ったのか、ころんと背を向ける。このようすだと手当ての続きをしてくれる気はなさそうだ。

「ったくよ…」

傷口の出血はとうに治まって、うっすらと膜が張っている。
いつ引っ掻かれたのだろう。胸元にはフェイタンの爪痕が付いていた。
フィンクスはがりがりとうなじを掻きながら、フェイタンにかけてやる毛布を取りに歩みを進めた。

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