↑さらに続き(カルフェイ)

「お前なに勘違いしてるか。一度寝たくらいで調子乗りすぎね」

昨日の淫奔な表情はすっかり消え失せ、かわりに侮蔑と嫌悪が色濃く刷かれている。
申し出を受けたその人は眉根を寄せてあからさまにいやな顔をした。

いまカルトはフェイタンと二人きりでいる。シズクは今朝流星街を発った。フィンクスとシャルナークはボノレノフを連れて、地元の案内を兼ねて街のようすを見に行った。
フェイタンは怪我を理由に同行しなかった。その遣り取りを見ていたカルトも適当に理由をつけて残ったのである。
こんなチャンスはもうないだろう。そういうつもりでカルトはしつこく食い下がった。

「別にいいじゃん。一度も二度も同じでしょ」
「同じ違うよ。そんなにやりたいなら女でも男でも買たらいいね」
「僕はフェイタンとしたいの」
「ワタシ今したくないよ」
「いまさら勿体ぶることないのに」
「勿体(もたい)ぶてない。したくない言てるね」
フェイタンは頑として首を縦に振らない。カルトはいらいらと焦れながらも、ふと思いついて一計を案じることにした。
我ながら卑怯な手段だとは思うけれど。今はこの人を困らせ捻じ伏せてやりたいという気持ちの方が強い。

「…団長って、除念が済んだら戻ってくるんでしょ?」
「それがどうした」
「どうしようかな。させてくれないなら昨日のこと団長に話すかも」

フェイタンの顔色が僅かに変わる。手応えを感じたカルトはもう少しごねてみることにした。
「団長だけじゃなくてみんなの前で喋っちゃうよ。マチとかフランクリンとかいる所で。フィンクスにも迷惑かかるだろうけど、それでもいいの?」
何か言おうとしたのかフェイタンの口が僅かに開く。けれどもすぐに閉じて、間をおいて大きく嘆息する。
(勝った)
黙りこくるフェイタンの姿を見て内心ほくそ笑む。カルトは勝ち誇った気分で更に言葉を紡いだ。
「僕の部屋行こうよ。みんなが帰ってくるまでには終わらせてあげる」

***

(……やった!まさかこんなにうまくいくなんて!でもこいつ性格悪そうだしな…油断させておいて攻撃してくるつもりじゃないよね?まぁそれはないか。団員同士のマジギレ禁止っていうし。仮にそうなったら手を上げたフェイタンが悪者ってことになるもんね。そうだよ。元はと言えばフェイタンが悪いんだ。こいつのせいで僕も変な気を起こしたわけだし。誘惑してきたのはあっちの方だし。それにしてもちょっと名前出したくらいであんなに態度変えるなんて…団長ってどんな人なんだろう。すごく強くて頭いいとは聞いてるけど……)

カルトの胸中を知ってか知らずか、フェイタンは自由が利く右手だけで黙々と服を脱ぎ捨てていく。
いつもの口元まで覆う黒服姿だと小柄さと童顔具合が強調されて可愛く見えるが…こうやって脱がせてみるとなかなか逞しい印象を受ける。
カルトはフェイタンの裸体を見て、いつか食した獣の剥き身を連想した。

ゾルディック家にいた頃、訓練の一環で敷地内の鳥獣を仕留めて食ったことがある。
皮を剥いた動物は存外細身で筋肉質である。そして世間一般で可愛いとされるものほど生前の姿とのギャップが大きい。特にウサギがいい例だ。ふわふわした愛らしい見かけと、ばきばきに引き締まった骨格筋の落差がたいへん激しく、初めて目にした時はかなり驚いたものだ。
目の前の肉体には調理されるのを待つウサギと似た雰囲気がある。そう。この人は今から自分に食べられてしまうのだ。

「脱ぎ終わったらこっち来て。俯せになってお尻上げてよ」
フェイタンは無言のまま、左腕を庇いながら指示通りの姿勢を取る。
(この穴でエッチしたり、うんちしたりするんだ…)
突き出した尻の真ん中。一度はまぐわった器官を改めて目にして、カルトは胸中に妙な感動が満ちてゆくのを感じた。
指を這わせてみると、まるで磯巾着のようにキュッと収縮する。あんなに大きなフィンクスの逸物を咥えていたくせに綺麗に閉じているものだ。この中はどうなってるんだろう。あれはこの胴体の三分の一くらいは余裕でありそうだったけれども。

「フィンクスのちんちんとフェイタンのうんちって、どっちが太いの?」
ゾルディック家では。なかんずく母の前では口が裂けても言えないような質問を投げかける。
答えはない。眉間を寄せ無言のうちに不快感を呈するその人に向けて、更に返事を促した。

「ねぇ。聞いてる?
「うるさい。『ちんちん』『うんち』て。お前子供か」
「そうだけど」
「じゃヤメね。子供がすること違うよコレ」
「その子供に手を出したの誰さ」

そう言われると返す言葉がないのか、フェイタンは苦い顔をしてまた黙ってしまった。
そういえば三兄はしょっちゅうこんな調子で執事を困らせたり次兄をおちょくったりしていたものだ。
当時はよくあそこまで口が回るもんだと感心するばかりだったけれど…人の揚げ足を取るのがこんなに楽しいとは知らなかった。案外自分も兄と似たところがあるのかもしれない。
なんて考えつつ、指にハンドクリームを馴染ませフェイタンの中に差し入れる。フィンクスの見様見真似で抜き挿しして、二本目を入れバラバラに動かしてみる。
フェイタンの反応はない。枕に頬を押し付け、半開きの目で虚空を見つめる横顔には「ああやだ」「面倒くさい」「とりあえず、こいつの気が済むまでやり過ごそう」と言いたげな色がありありと浮かんでいる。

(ムカつくなぁ。余裕ぶって)
イラつきながら強引に三本目を挿入し、掻き回すように乱暴に動かす。これでも顔色一つ変えない。それどころか目をしょぼしょぼさせて欠伸までする始末だ。

(なんだよ!フィンクスの時はよがってたくせに)
腹が立つ一方、何とかこいつを泣かせてやりたいという嗜虐心がむくむくと頭をもたげてくる。直腸を探っていた指を一旦引き抜く。すかさず勢いよく奥深くに突き入れる。するとフェイタンの体がビクリと震え、「ん」と小さな悲鳴が漏れ出た。

「気持ちいいの?」
「少しも。お前ヘタクソ、激しいのと雑なの違うよ」
此方を見向きもせずに言う。その声には嘲笑も侮蔑もなく、淡々と感想を述べているだけのようである。
刺々しい物言いにカチンとくるものがあったが、カルトはどうにか怒りを抑え込んだ。悔しいけれど自分の腕前が未熟なのは事実である。

「もう挿れていいよ。お前の小さいから充分入るね」
…どうしてこの人は、いちいち人の神経を逆撫でする言葉を選ぶのか。
「その前にしゃぶってよ」
再度怒りを呑み込みつつ要求する。フェイタンはため息を吐くと億劫そうに上体を起こし、左腕を庇いながらカルトの前に屈み込んで、そのまま彼の性器を口に含み、愛撫を始めた。
昨日と同じように唇で包皮を剥いて、亀頭を飴玉のように転がし、尿道口を舌先で刺激する。やはりというべきかその動作は非常に巧みで、瞬く間に幼い男性器から先走りが溢れてくる。
たった一度の経験でもあるとないでは大違いだ。昨日よりは随分と余裕をもってフェイタンの口淫を味わうことができた。
このまま口内射精してやってもいいが、どうせならもっと楽しみたい。カルトはペニスを引き抜くと、ベッドの上に仰向けになり、フェイタンの右腕を掴んで自分の上に跨るよう催促した。

「自分で挿れて」
そう命じるや否やフェイタンが何か小声で呟く。カルトの知らない言語だ。その内容は理解できないまでも、少なくとも好意的な意味でないことだけはよく分かる。
フェイタンは腰を落とし、カルトのものを体内へ受け入れてゆく。その顔は相変わらず無表情だが頬はわずかに紅潮している。根元まで挿入したところで動きを止めて小さく深呼吸をした。

「動いてみて」
「…チッ」
ああしろこうしろと指示したくなるのは操作系の性だろうか?当のカルトはそのことに思い至らない。
フェイタンはひとつ舌打ちし、ゆっくりとしたペースで抽送を始めた。

「もっと早く動けるでしょ?」
「いちいちうるさいね。集中できないよ」
カルトの命令に反抗的な態度で返しつつ、次第にそのペースは上がってゆく。

「ああ、無理しなくていいよ。出したくなたら中で出して構わないね」
一見して寛大な台詞だ。しかしその顔には、早く済ませて解放されたいという魂胆がありありと見て取れる。
冷めた表情で。まるで流れ作業でもこなすかのように、怠そうに腰を打ち付ける。この全くやる気の感じられない抽挿がまた男の悦ぶポイントをよく押さえていて、カルトはつくづく経験の差を思い知らされた。

この体を弄び汚してやったとしても、彼には傷跡ひとつ残せない。きっと今だってマセガキの我儘に付き合ってやっている程度にしか思ってないのだ。
フィンクスにしてもそうだ。こうやってパートナーを盗み食いされた事実を知っても何とも思わないだろう。あの三白眼をきょとんと見開いて、他人事のように「へー」とか「ほー」とか言うさまが目に浮かぶようだ。
こいつらには何をしても敵わないのだ。カルトは己の未熟さに歯噛みした。その一方で、せめてこの肉体を存分に味わってやらねばとも思った。いずれフィンクスらが帰ってくる。約束は約束だ。それまでには解放してやろう。

「ねえ。これだとアソコ見えないよ」
「…ハ?」
「さっきみたいに後ろ向いて。お尻の穴がちゃんと見えるように」
不機嫌そうにしながらもフェイタンは言われた通り四つん這いになる。その顔には諦めの色が色濃く滲んでいた。
カルトの眼前に再度フェイタンの尻が差し出される。その中央で口を開けたアナルがヒクンと収縮を繰り返す。両手の人差し指を挿入して、ぐいと左右に広げてみると、粘膜がめくれてピンク色の肉壁が顔を覗かせる。その光景に思わず感嘆の声を上げる。
「すごい。フェイタンの中、すごくきれいな色してる」
フェイタンは返事の代わりに、枕に突っ伏して「ああ。もうやだ」と独り言ちった。

「挿れるよ」
「勝手(かて)にしろ」
投げ遣りな返事を受けて、今度は自分から挿入する。「ハァ」と、これ聞けよがしのため息が聞こえた。カルトは抗議するように、フェイタンの乳首を思い切りつねってやった。

「何するか。痛いよ」
「フェイタン、態度悪すぎない?」
「当然ね、最初から『したくない』言てるよ。ワタシお前嫌い。しつこい男モテないね」
「いいよ。別にモテたいと思ってないし」
カルトはフェイタンの腰を掴み、激しく揺すりながら言う。その度に結合部からはクチュクチュと卑猥な音が漏れ出てくる。

「中に出していいんだよね?」
「好きにするといいね」
カルトの限界が近づいている。フェイタンは「早く終わらせてくれ」とでも言いたげな、死んだ目をして壁を見つめている。
「じゃあ出すよ」
宣言してから一拍置いて、カルトはフェイタンの中に射精した。フェイタンはわずかに眉根を寄せる他は特に反応らしい反応も示さず、そのままの姿勢でじっとしていた。

「気は済んだか?」
そして、こちらを振り向くことなく訊ねる。
「まだだよ。もう一回やるから仰向けになって」
「お前、最低ね……」
彼は呆れたように呟き、カルトにひっくり返される前に自分から上を向く。股間のものは萎えきっていた。
カルトはフェイタンの両膝の裏に手を差し入れ持ち上げると、そのまま両脚を大きく開かせた。そして再び自分のものを中に埋めてゆく。今度は正常位で犯すつもりらしい。
「これはこれで顔が見えていいね」
カルトが独りごちる。フェイタンの表情には嫌悪感が増している。

(ほんと、獲物をいたぶる癖なんとかしなきゃ…)
己のねちっこさに呆れ返りながら、少年は抽送を開始した。男は虚空を見上げながら「あり得ないね」とか「やぱりフィンクスと出かければよかた」とかぶつぶつ言っているが、もう知ったことではない。
再度体内に注ぎ込み、口淫の末に飲ませ、顔面にかけて刷り込んで。
少年はふぐりがぺしゃんこになるかというほど射精し、ようやく満足したところで、ようやく男を解放した。

(※その一件から流星街を発つまで、カルトを警戒しまくったフェイタンがフィンクスの側を片時も離れなくなったのはまた別の話である)

[ 11/33 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -