↑翌日の話(フィン+カルト×フェイ)

「カルトって精通してんのか?」
フィンクスの問いにどう答えればよいか分からず、カルトは思わず硬直した。
正直に言えば、してる。それは健全な成長の証であり恥ずべきでもないし隠す必要もないのだが、まさかこうも面と向かって訊かれるとは……

「……教える必要ある?」
「フィンクス、お前デリカシーないね。だからみんなにバカ言われるよ」
少し迷った末にせいぜい平静を装って答えるカルト。
溜め息混じりにフィンクスを咎めるフェイタン。
フィンクスはバカ呼ばわりを気にするふうでもなく、更にとんでもないことを口にした。

「でもこいつ昨夜、俺らがやってるの聞いてシコってたし…」
ひどいや、フィンクスのバカ!そんなこと言わなくてもいいのに!!
と、カルトは心の中で叫んだ。昨夜の盗み聞きを許してくれたことについて少しでもいい奴だと思ったのを後悔した。

フィンクスの暴露を聞いたフェイタンは一瞬きょとんと細い目を見開き、次に軽く眉間を歪める。そして軽蔑するような得体の知れぬものを訝るような表情でじっとカルトを睨んで。ややあってニヤリと口角を上げて、こう言った。
「ハハ、とんだマセガキね」
カルトは恥ずかしさのあまり顔から火が出そうになった。
「でもこの反応童貞。したことはおろか、人のセクス見たこともないね。違うか?」
「いや。あったら引くわ」
先ほどフィンクスにデリカシー云々と言ったことを忘れたのか、サディスティックな笑みをもって追い討ちをかけるフェイタン。
天下泰平の面持ちで頬杖をついてフェイタンの発言にツッコミを入れるフィンクス。この「俺関係ねぇし」と言わんばかりの態度がまた憎たらしい。

カルトはだんだん腹が立ってきた。
盗み聞きは褒められたことではないにしても、ここまで侮辱されるいわれはない。
だいたいフェイタンさえ発情しなければ、自分だって変な欲を起こさなかったのである。
何か抗議してやろうと唇を開いた。
が、フェイタンの方が早く言葉を発した。

「お前、ワタシで筆下ろししてみるか?」
「え?」

カルトは自分の耳を疑った。
今なんて言った? 聞き間違いではない。確かに筆下ろしと言った。
フェイタンは変わらず涼しい顔をしている。
フィンクスの方を見ると彼もまた目を丸くしていたが、それも束の間。すぐに不敵な笑顔を浮かべてこう言った。

「いいじゃんカルト。してもらえよ」
(こいつら、人をからかってるのか?)
怒りを通り越して呆れてしまう。
フィンクスもそうだが、フェイタンは更に理解できない。何を考えてるんだろう。何を思ってこんなことを言っているのだろう。
カルトは半ば諦めの境地にいた。そしてふと思う。
本人がああ言ってるんだからいいじゃないかと。

カルトも立派な少年であって、男子がましい好奇心や功名心は持ち合わせている。
自分は幻影旅団の一員となり流星街に滞在している。正直なところ、この事実にかなりの達成感と優越感を抱いている。長兄はどうか知らないが次兄以降はこれ以上の体験をしたことがないだろう。
それに男として一度くらいそういう経験をしてみたいと思っていた。目の前にいるのは同性とはいえなかなか美形だし、見た感じ歳も実力もイルミと同じかそれ以上だ。そんな人がさせてやると言っているのだ。こんなチャンスは滅多にあるまい。

「うん。じゃあお願い」
覚悟を決めたカルトはひと呼吸おいて、フェイタンをまっすぐ見つめながら言った。

***

下着一枚でベッドに転がるカルト。
その股間に自由な方の手を伸ばすフェイタン。
布地の上からゆっくりと触れ、まだ柔らかいそこを揉むように愛撫する。その指先は布越しにも分かるほどひんやりしていた。
他人に触れられる初めての感覚に緊張するカルトだが、それでも快感は徐々に増してくる。
しばらくするとフェイタンは、カルトの下着をずり下ろして直接触れてきた。

「そんなビビることないね。別に取て食うつもりないよ。気持ちよくするだけ」
慈しんでいるのか小馬鹿にしているのかよく分からない顔で笑う。

(フェイタンって意外とよく笑うんだよね。ていうかいつもヘラヘラしてるけど…何が可笑しいんだろう)
そんなことを考えつつ、カルトは居たたまれなくなって視線を逸らす。
言うまでもなくカルトは幼い。とはいえ既に幼児のような明け透けな可愛らしさはなく、伸びゆく若竹のようなしなやかさを全身に秘めている。
フェイタンはまだ黒ずみのない、しかし大人びた陰影を見せ始めているそれを握り、その手を上下に動かし始めた。しごくだけでなく、包皮を剥いて、鈴口に親指を押し当てる。絶妙な力加減によって、それはみるみるうちに質量を増していく。カルトは耐えきれなくなって小さく声を漏らす。そのさまを見てフェイタンは楽しそうに微笑んだ。

「もうフル勃起(ぼき)か。若いていいね」
「若すぎて毛も生えてねぇけどな。まだ皮余ってるし」
(…何でこいつがいるんだよ)
忌々しげな視線をフィンクスに向けるカルト。フィンクスは相変わらずふてぶてしい顔で、こちらの性器をじーっと観察している。

「何でフィンクスがついてくるわけ?関係ないでしょ」
思ったことをストレートにぶつけてみる。
「え、だってヒマだし。いけねーのか?」
「いけなくないけど」
「大丈夫ね。お前がうまくできなかたら、あいつがお手本見せてくれるよ」
事も無げに答えるフェイタンの顔をカルトは直視することができない。

「ていうか…フィンクスはいいの?」
「何が?」
「フェイタンの恋人なんじゃないの?」
「???意味が分からん。何でそうなるんだ?」

フィンクスはカルトの言わんとしていることが本当に理解できないらしかった。
恋人でもないのにあんなことをするのか。しかし肯定されたらされたで困る。そうだとしたら、自分はフィンクスの恋人を寝取ろうとしていることになる。それはあまり気持ちのいいものではない。殺し屋兼盗賊の身分で常識も何もないだろうけれど、それくらいの倫理は持っていたい。
…と思ったところで、カルトは自分も人のことを言えた身ではないと気がついた。自分こそ恋人でも何でもないフェイタンを抱こうとしているのだから。
カルトの胸中を知ってか知らずか、フェイタンはカルトを口に含んだ。唇と舌を使って包皮を剥き丹念に舐め上げると、たちまち先走りが滲み出てくる。その味を楽しむかのように尿道口に吸いつき、そのまま舌先で亀頭を転がす。その快感たるや想像を絶するものがあって、カルトは腰が砕けそうになった。

一方のフィンクスはサイドテーブルの引き出しを開けて何かを漁っている。やがて目当てのものを見つけたらしく、それを取り出してフェイタンに差し出した。
「ん」
「ん」
「ん」
この極端に短いやり取りは
「フェイタン。これ使え」
「いま片手使えないの。フィンクス、お願いしていい?」
「あそっか。分かった」
というのを簡略化したものらしい。ジェスチャーを交えているとはいえ、よく意思の疎通ができるものだと感心してしまう。

フェイタンはカルトを咥えたまま、自らの尻をフィンクスに向けた。その様子を見ているだけでカルトの興奮は高まっていく。フィンクスはというと、いつもと変わらぬ調子で淡々と準備を進める。まずはフェイタンの後ろに回り込んで抱きつくような体勢をとり、衣服を脱がせる。それから軟膏状のものをすくいとると、指先にたっぷりと馴染ませてから、ゆっくりとフェイタンのアナルに挿入していく。

(うわぁ……)
初めて見る光景にカルトは思わず息を飲んだ。フィンクスの指は根元まで差し込まれ、それがゆっくりと抜き挿しされる。その度にフェイタンは小さく痙攣し、艶っぽい吐息を漏らした。
しばらくすると指は二本に増えた。最初は一本でもキツそうだったそこは今ではすっかり解れている。やがて三本目が挿入されると、フェイタンの喘ぎは一段と大きくなった。
(は、早く挿れたい…!)
カルトの下半身は爆発寸前である。それを察したようにフェイタンが言葉を発した。
「焦ることないね。別にワタシ逃げたりしないよ」
カルトのペニスから口を離すなりそう言って、フィンクスに愛撫の終了を合図し、仰向けに転がり、脚をM字に開いて誘う。
いよいよこの時が来た。恐る恐るフェイタンの秘部に自分のものをあてがい、ゆっくりと侵入を試みるカルト。
最初の一突きはなかなか入らない。「もう少し下」「違うよ」「そこ何もないね」と言われながら何度かトライしたところで、ようやくピントが合った。

(すごい……)
そこから先はスムーズにいった。熱く熟れた肉壁に包まれる快感は想像以上で、すぐに果ててしまいそうになるのを必死で堪えてピストンを続ける。
一方、フェイタンはカルトの動きに合わせて小さく声を上げていた。苦痛を感じている様子はない。そのことにカルトは安堵したが、同時に不満を覚えた。
その表情からは快感を得ているかどうか判断できない。フェイタンのペニスは半勃ちの状態で、カルトが腰を打ちつけるたびに力なく揺れている。

(くそ!バカにして…)
カルトはそう思いつつもフェイタンの中を貪るように犯し続ける。程なくして限界を迎えたカルトはフェイタンの中で射精してしまった。

「カルト早漏すぎ。挿れてから二分も経ってねーぞ」
「ま、初めてにしてはいいセン行てたよ。ワタシもけこう気持ちよかたし」
呆れた声で言うフィンクス。
苦笑いでフォローするフェイタン。
生まれて初めての快感に痺れつつ、返す言葉もなく沈黙するカルト。

「フェイ、どうする?」
「そうね。このままだとワタシ不完全燃焼よ」
「しゃーねぇな。んじゃお手本見してやるか」
物欲しげな目でフィンクスを見つめるフェイタン。それに応えるかのように、フィンクスは服を脱いだ。
長身で筋肉質という共通点はあるが、シルバとは全く質感が違う。小麦色の滑らかな肌。適度に脂が乗った瑞々しい身体。その中心には隆々と天を突かんばかりの逸物が聳え立っている。

「よーく見とけよ」
フィンクスは軽々としたようすでフェイタンを抱え上げ、後ろ向きに座らせた。いわゆる背面座位という体位である。カルトの位置からは結合部もフェイタンの表情も丸見えだ。
小柄なフェイタンには不釣り合いに見えるものが、特に手間取るでもなく埋め込まれていく。フェイタンは下がり眉をぎゅっと寄せながらもされるがままになっている。全てを飲み込む頃、フィンクスがフェイタンの耳元に口を寄せて囁く。

「動くぜ」
「うん」
その言葉を合図に、フィンクスはおもむろに腰を動かし始めた。フェイタンは暫く耐えていたが、程なくして甘い響きを孕んだ声で喘ぎ始める。先ほどまでのカルトとのセックスとはまた違う、淫靡な雰囲気が部屋を満たした。

「あ、ああ…フィンクス、激しすぎね」
カルトは快楽に咽ぶフェイタンを見つめながら、自分では彼を満足させられなかった理由が分かった気がした。
逸物の大きさばかりではない。フィンクスはフェイタンが悦ぶポイントを押さえている。つまりフェイタンを知り尽くしている。

(悔しいけど……)
やっぱり自分は未熟なのだ。それに積み上げたものがない。
カルトは、やはり二人が羨ましいと思った。彼らの信頼関係はカルトが生を受ける以前から築いた相互理解の賜物であろう。自分はその堆積に爪も立てられないのだということを、まざまざと思い知らされた。

(あ。)
…でも、兄さんには勝った。

長兄はどうか分からないが、次兄は確実に童貞である。三兄もおそらく同様だ。自分は兄より先に"男"になったのだ。現金なもので、そう思うと俄然自信が湧いてきた。
カルトは快楽に蕩けるフェイタンの前に立ち、再度勃起した股間を突き出した。

「見てたらまた勃ってきちゃった」
フィンクスが何か茶々を入れてくるが、知ったことではない。
「舐めてよ」
フェイタンは少々戸惑いの表情を見せたが、カルトの先端を口に含む。そのまま亀頭全体を舌で包み込むようにして刺激を与えてくる。

(…これ、お掃除フェラってやつじゃない?)
念能力を身につけたばかりの頃、興味本位でミルキの部屋を盗聴したことがある。その時ミルキはアダルトビデオ鑑賞の最中で、その時に出てきたフレーズを思い出した。
やはりフェイタンのテクニックは絶妙だ。射精直後で敏感になっていることもあり、カルトはすぐに達してしまいそうになる。それを堪えて、思い切って喉の奥まで押し込んでから精を放った。
…実際にはそこまで到達できないのだけれども。鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしながらもザーメンを飲み下すフェイタンを見て、少しだけ溜飲を下げた。

「フェイ、そろそろ出そう」
射精が近いらしいフィンクスの問いにフェイタンはこくりと首を縦に振る。
フェイタンの口からカルトのものが引き抜かれるのを見計らって、フィンクスは一気に突き入れた。
パンッと小気味よい音が響く。フェイタンの身体が跳ね上がる。背中が大きく仰け反る。逸物を引き出すたび、結合部からはピンク色の粘膜が見え隠れする。

「ん、ふぁ…、ぁ…」
やがてフェイタンは気の抜けた喘ぎ声を漏らしながら小刻みに痙攣し始めた。ドライオーガズムに達したらしい。

「お。イッちまったか」
フェイタンが絶頂を迎えている最中もフィンクスは構わず抽送を続ける。その動きに合わせてフェイタンは声にならない声で悶える。

「あ……、あ、フィンクスぅ」
「あーハイハイ。もうちょいだからな」
フィンクスも限界が近そうだ。腰の動きが激しくなる。
「フェイ、出すぞ」
フィンクスに揺られるまま小さく頷くフェイタン。一際強く打ち付けた瞬間、フィンクスの動きが止まった。フェイタンの身体がびくんと震え、フィンクスの逸物が脈動する。カルトはそのさまを食い入るように見つめていた。

***

「どうだった?感想は」
フェイタンと繋がったまま、カルトに問いかけるフィンクス。
正直に言えば、よかった。しかしそれを素直に認めるのはのはなんだか悔しい。

「よかたな。見たかたもの見れて」
虚脱しながらもフィンクスに便乗するフェイタン。どれだけ太い神経をしているのか、あれだけの恥態を演じておいて少しも恥じ入るようすがない。

「そうだね。いい経験になった、ありがとう」
あんまり噛みついても仕方あるまい。カルトはいつも通りのポーカーフェイスをもってして、一応礼を述べた。

(わ。すごい量)
フィンクスがフェイタンの中から己を引き抜く。ぽっかり開いたアナルから、どろりとした白濁液が流れ出る。
頭はすっかり冷えている。この精液の何割が自分のだろう。なんて考えながら、カルトはその光景を冷静に観察していた。自分のものよりも遥かに大きいフィンクスの逸物を改めて目にすると、先ほどの自信も萎んでいくような気がした。

「ったく、あっちぃなもう…」
フィンクスは手早く後始末を終えて、 フェイタンを抱え上げてバスルームへと向かった。
フェイタンは照れるでもなくフィンクスに身を預けている。
あのフェイタンがここまで無防備になるなんて。その姿を見ているうちに、何とも言えない感情が湧き上がってきた。
カルトは自分の中に巣食う感情に戸惑っていた。兄たちに抱いた劣等感とは違う。その気持ちの呼び方は知らない。ただ言えることは、三兄の友人を目にした時の、どす黒い感情に近いような感じがする。

「お前もちゃんと風呂入れよ」
「分かってる」

二人が戻ってくるまでの間、カルトはベッドの上で一人悶々としていた。

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